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子どもの頭の怪我にどう備える? サッカー界の「新しい常識」を作るアンブロの挑戦
ビジョナリー編集部 2025/12/16
サッカー界に広がる「頭部保護」の波。開発期間4年、デサントジャパンが投じる一石とは
サッカーにおいて、ボールの競り合いによる衝突や転倒で頭を強く打つ事例は、子どもはもちろんプロ選手でも珍しくない。昨今、欧米では子どものヘディングを規制する動きが出るなど、プレー時の頭や脳への衝撃に対して慎重な姿勢が見られるようになってきた。
こうした流れがあるとはいえ、闇雲に衝突やヘディングを恐れるのではなく、頭部外傷や対処法への正しい知識を持ち、衝撃を緩和する予防策をとることが重要だ。その対策の一つとして注目を集めているのが、デサントジャパン株式会社が展開するフットボールブランド『アンブロ』の「プロテクトヘッドバンド」である。

形状や素材の試行錯誤を経て、4年がかりでサッカーに相応しいプロテクターを開発
同製品は、子どもでも着脱が簡単なヘアバンド形状に衝撃吸収素材を内蔵したシンプルなつくりだ。しかし、開発の道のりは平坦ではなかったという。
頭部の衝撃吸収力だけでなく、それとは相反する要素である「ヘディング時のボールの反発力」や「頭へのフィット感」が発揮されるよう、素材の選定や最適な厚みを繰り返し検証。商品化には実に4年もの歳月を要したそうだ。

プロテクトヘッドバンドの特徴
開発品の効果検証は、自動車の衝突事故などの検証を行う第三者機関、一般財団法人日本自動車研究所(JARI)にて行われたという。その結果から見える実力を見ていこう。
①頭部の衝撃を43%低減/頭部傷害(中等症)発生リスク 45%低減
頭部への衝撃を計測する方法を、デサントの研究開発拠点「DISC(DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX)OSAKA」にて独自に開発。それに基づき、JARIにて衝撃製品テストが実施された。
ヘッドバンド未着用の状態と比べ、頭部への衝撃を43%低減
試験の様子はこちら
衝撃製品テスト(振動子試験)
- 試験は下図のように、球体のインパクタでダミー前頭部を打撃する方法
- 頭部加速度がヘディング時のボールと同じ程度となるインパクタを設定し、試験を行った

結果を見ると、衝撃が43%低減し、衝撃の受け方も緩やかになっていることが分かる。
プレイ中の転倒及び頭部同士の衝突において、頭部傷害(中等症)の発生リスクを45%低減

HIC:衝撃によって頭部(脳)に損傷を与える衝撃の程度を表す指標
条件:頭部インパクタを375mmの高さから剛体面(コンクリート)に落下させた際に生じる加速度を基に衝撃吸収効果を検証
- 衝突速度:時速 10km/h 相当
- 本試験は、実際の競技では頭部同士が衝突する状況にほぼ等しいと考えられる
テスト協力:一般財団法人日本自動車研究所(JARI)
転倒や衝突を想定し、頭部インパクタを地面に落下させる試験を実施し、ヘッドバンド着用効果(衝撃吸収性能)を検証
- 衝撃の強さ 芝生への転倒<土の地面への転倒<コンクリート面への転倒≒頭部同士の衝突

- 転倒状態を単純化し、頭部を模したインパクタを落下させ後頭部を地面に衝突させる方法で実施
- 衝突面は転倒時を想定した土や、頭部同士の衝突を想定した剛体面(コンクリート)で実施
- 落下の高さは、JARIが頭部傷害(中等症)の最高値HIC1,000までを計測する際の落下距離の最大値である375 mmとする
- 375 mmからの落下による衝突速度は時速 10km/h 相当となり、実際の競技では頭部同士が衝突する状況にほぼ等しいと考えられる
②ヘディングに必要な反発力やコントロール性
ラグビーなどでもヘッドプロテクターを着用するが、サッカーならではの特徴として「ヘディングプレー」がある。従来のプロテクターでは、ヘディング時にボールを跳ね返せなかったり、衝撃でプロテクターがずれてしまったりする懸念があった。
これに対し「プロテクトヘッドバンド」は、複数の素材や厚み、形状などを組み合わせることで、衝撃吸収性と反発性のバランスを確保。さらに、ズレにくいよう頭にフィットするしなやかさや、ボールを打つときに滑りにくい表面感などを追求しているという。ヘディング時の感覚やボールの方向性に対しても着用の違和感が少なく、ヘディング時の痛みの緩和にも繋がっているようだ。
③装着が簡単なヘッドバンド形状
頭に巻いて面ファスナーで留めるだけのシンプルな形状のため、低学年の子どもでも簡単に着脱ができるという。周囲の長さ57cm(M)、61cm(L)の2サイズで展開されており、アジャスターでサイズの微調整も可能。子どもから大人まで幅広く対応する仕様となっている。
④汗をかいた後に家庭での手洗いも可能
スポーツにおいて汗はつきものだ。ヘッドバンドの内側はメッシュ素材になっており、内蔵の衝撃吸収素材を含めて洗うことができる点も、ユーザーにとって嬉しいポイントだろう。
キッズデザイン協議会会長賞を受賞
この「アンブロ プロテクトヘッドバンド」は、外部機関からも高い評価を受けている。「第19回キッズデザイン賞」を受賞したほか、受賞作品の中から特に優秀な作品に与えられる奨励賞「キッズデザイン協議会会長賞」も受賞した。
評価のポイントは以下の通りだ。
「国際的なサッカーの世界のルールでもプレー中の脳震とう対策やその後の練習プログラムが定められている。海外では子どものヘディング禁止の傾向も顕著であり、人気スポーツであるがゆえの子どもの安全性確保の点で有効な提案であり、課題の社会発信の面でも効果的だ」
スポーツシーンでの子どもの安全・安心への注目度の高さがうかがえる。
2023年3月の発売以来、個人での利用に加え、チーム単位での導入も進んでいる。滋賀県の小学生サッカーチーム「A.Z.R(アッズーロ)」や、関西圏でスクールを展開する「DAY FOOTBALL SCHOOL(デイフットボールスクール)」などで着用実績が広がっているという。また、大阪府枚方市の光善寺保育園では、保育活動で行っているサッカーやタグラグビー等で着用されるなど、サッカーに限らず様々なスポーツシーンで活用されているようだ。

その波は、子どもだけでなく大人やプロ選手にも広がりを見せている。明治安田J3リーグにおいて、SC相模原のDF山内 琳太郎選手とDF加藤 大育選手がプロテクトヘッドバンドを着用して出場。プロ選手の試合においても、その実用性が証明された形だ。

©️S.C.SAGAMIHARA
スポーツをより安全に、そして心から楽しむために。数年後には、サッカーシーンでも頭にプロテクターをつけて練習や試合をする光景が、当たり前のものになっているかもしれない。


