
「自分は赴任の前、すでに一命は国家に捧げているの...
10/7(火)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/10/07
「国勢調査の封筒がポストに入っていたけど、どうして私の家に?」「これって選ばれた人だけ?」――そんな疑問を抱いたことがある方もいるかもしれません。しかし、実は国勢調査は“全員が対象”の一大プロジェクト。5年に一度、日本に住むすべての人に調査票が配られます。
全数調査という日本最大級の統計調査、その仕組みや意義をひもとくと、意外な事実や私たちの暮らしにつながる理由が見えてきます。
国勢調査は1920年(大正9年)に第1回が実施されて以来、100年以上の歴史をもちます。その目的は、日本に暮らすすべての人と世帯の「ありのままの実態」を把握することです。
明治時代、日本も世界各国と同じように近代国家への転換期を迎えていました。国際社会から要請が高まり、法整備のもと「国勢調査」が誕生しました。
第1回調査の際には、「国勢調査は文明国の鏡」「申告は一に正直二に正確」といった標語が全国に掲げられ、町中を練り歩く宣伝隊まで登場したほど。今よりも識字率が低く、テレビもない時代。調査の意義を広めるため、政府も国を挙げて取り組みました。
国勢調査の最大の特徴は、“抽出調査”ではなく“全数調査”であることです。
抽出調査(例えば労働力調査や家計調査)は、無作為に選ばれた一部の家庭だけが対象ですが、国勢調査は国内に居住するすべての世帯・住民が原則対象になります。
もし調査票が届かなければ、市区町村の担当窓口やコールセンターに連絡すれば、再配布や手続きの案内が受けられます。不安な場合は公式の問い合わせ先を利用しましょう。
調査員は必ず顔写真付きの証明書を持っています。個人情報を直接聞き出すことはありませんし、怪しい場合はその場で断る・役所に確認することが推奨されています。
調査員を装った詐欺も発生しています。身分証の確認や、怪しい連絡には注意しましょう。
時代とともに、国勢調査の回答方法も進化しています。近年は以下の方法で回答が可能です。
60代以上の世帯でも「分かりやすい」「便利」と高評価で、前回の調査では、インターネット回答を使った世帯のほとんどが「次回も使いたい」と答えています。
外国人世帯向けには35言語の説明が用意され、ネット回答も言語切り替えが可能です。
都市部や共働き世帯ではインターネット回答が主流ですが、地方や高齢世帯では紙面回答も根強く利用されています。
国勢調査のデータは社会のあらゆる場面で活用されています。
例えば、学術研究者が「義務教育未修了者マップ」をつくり、教育政策改善に活用した実例もあります。
「全員調査」ゆえ、地域ごとの人口移動や世帯構成、職業や産業、昼夜の人口変動まで精密に把握可能。一部だけを調べる抽出調査では見えない、社会の“本当の姿”が明らかになります。
国勢調査は統計法に基づき、全員に「回答義務」が課されています。
「プライバシーが心配」「忙しくて忘れた」という理由で未回答のままだと、法律上最大5万円の過料が科される場合があります。実際には罰則の適用はごくわずかですが、社会全体の正確なデータづくりのため、協力が強く求められています。
また、調査員や自治体職員は「守秘義務」を厳守。違反すれば厳しい罰則が科されますので、個人情報が不正に使われる心配はありません。
プライバシー意識の高まりや外国人世帯の増加などで、回収が難しくなっている現状もあります。2020年の調査では未回収率が16%に上昇し、調査員や自治体の工夫が続いています。コールセンターやチャットボット、多言語サポートの強化で、誰もが参加しやすい環境づくりが進んでいます。
ここまで、国勢調査の仕組みや意義を見てきました。調査票に書く内容は一見地味でも、その一つ一つが社会の未来を左右する根拠となっています。
人口減少・高齢化が進む今、どの地域にどんな人が住み、どんな課題があるのか。正確なデータがなければ、よりよい施策も、地域づくりも進みません。あなたの回答が、子どもたちの教育環境や、災害時の支援、街の便利さをつくる一歩になります。
5年に一度の貴重な機会。ぜひ、国勢調査に協力してみてください。あなたの参加が、日本の未来をよりよくする力になります。