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8/1(金)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/07/29
1965年、原宿の地で産声を上げたニットメーカーのgim。半世紀以上にわたり、「大きく成長すること」よりも「小さくてもキラリと光り続ける存在であり続けること」を企業理念に掲げてきた。その根底には、創業者・八木原 保会長の「規模よりも独自性を大切に」という想いが脈々と受け継がれている。
近年、その精神を次世代へと橋渡しするべく、gimは本社1階の出荷場スペースを大胆にリノベーションし、新たな直営店を開設。「I CAN’T GIVE YOU ANYTHING BUT KNIT by gim(あなたに編み物しかあげられない)」というユニークな店名は、ジャズのスタンダードナンバー「I Can’t Give You Anything But Love(愛しか与えられない)」に由来。ニットに真摯に向き合ってきた同社ならではのネーミングだ。社内からは「名前が長すぎる!」との声も上がったが、今やそれすらもgimらしいエピソードの一つとして親しまれているという。
この直営店の設計にも、細かなこだわりが垣間見える。通りから店内へ入る前に、あえて高い塀と“庭”のようなアプローチを設け、「ちょっと勇気を出してのぞいてみたくなる」——そんな緊張感と期待感を演出。原宿という多様な人々が行き交う街で、“ビビッ”とくる感性の持ち主と出会いたい、という願いが形になっている。扉を開ければ、スタッフたちが温かく迎え入れ、「緊張」と「緩和」の絶妙なバランスが訪れた人の心をほどく。
デジタルシフトが進み、オンラインで何でも手に入る時代。だからこそ、gimはリアルな場でしか体験できない空気感や、ブランドの世界観や、作り手の想いに触れる“場所”の価値を信じている。ただモノを売るだけでなく、ものづくりの背景や世界観ごと体感できる空間。これが、今後の買い物の新たな価値になるのではないか——そんな問いかけを、このお店は投げかけている。
店内で展開されるのは、個性の異なる3ブランド。
まずは、ニットでMA-1ジャケットやM-51の軍パンといった“常識破り”のデザインに挑戦する「gim context」。
次に、シルクやカシミヤ、上質なコットンといった素材を使い、ベーシックの極みを目指す「GIM」。
そして、海外クリエーターたちと協業し、“クラフトと現代性”を融合させたレディースブランド「A PRACTICED HAND」。
昨年の秋冬には、自社で直接モンゴルから調達したオリジナルのカシミヤを使い、しっかりと目を詰めたパーカーも登場。4月には、セントマーチン出身のクリエーターとの合同POP UPイベントも開催され、ニットの「お店」を超えて、多様な感性が交錯し、新たな発信が生まれる“震源地”となりつつある。
今後は、この空間をさらに広げ、ファッションやものづくりへの熱量を持つ人々がふらりと立ち寄れるような、しかしどこか“特別な場所”でもある——そんな裏原宿の交差点的存在を目指すという。
「ニットが好きな人、ニットの可能性にワクワクする人は、ぜひ訪れてほしい。『ニットって、こんなことができるんだ!』ときっと楽しんでもらえるはず」。そんな自信と期待を、gimはこの空間に託しているようだ。