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「株価最高」の日本で、なぜ半数超が「生活苦」なのか?表と裏から読み解く“実感なき好景気”の真相
ビジョナリー編集部 2026/07/23
日経平均株価が史上最高値圏を推移し、国の税収も過去最高を更新し続ける日本経済。数字の上では「かつてない好景気」が演出されていますが、私たちの暮らしの実感はそれとは真逆の場所にあります。厚生労働省が発表した「2025年国民生活基礎調査」で、実に55.4%もの世帯が生活を「苦しい」と回答しました。
「2025年国民生活基礎調査」から見えた“生活苦”のリアル
まずは、最新の調査データが示す日本の実像を紐解いていきます。
厚生労働省が2026年7月に発表した「2025年国民生活基礎調査」。およそ33万世帯を対象にしたこの調査は、世帯の所得や生活意識を捉える、日本でもっとも信頼性の高い統計の一つです。
この調査で「生活が大変苦しい」「やや苦しい」と感じている世帯の割合は、なんと55.4%に達しました。前回の51.3%からさらに増え、ほぼ2世帯に1世帯が日々の暮らしに息苦しさを感じていることがわかります。
統計上の平均所得は575.2万円と、前年から7.3%も増加。数字だけ見れば「豊かになった」と思いがちですが、実はこの“平均”を下回る世帯が全体の61.5%も存在しています。
特に厳しい状況に置かれているのは、子育て世帯と母子家庭です。子どもがいる世帯では61.5%、母子世帯では82.1%が「生活が苦しい」と回答。社会的な弱者や中間層が、より深刻な困難に直面していることが明らかです。
また、単独世帯や高齢者世帯の割合も増加。子どものいる世帯が全体の16.7%にまで減少する一方で、単身世帯は35.4%、65歳以上の高齢者世帯が31.9%と、過去最高を記録しています。
家計を直撃する「3つの要因」——なぜ実感が伴わないのか
①「名目賃金」と「実質賃金」の深い乖離
ベースアップや最低賃金の引き上げが話題になる一方で、実際には食料品やエネルギー、日用品など暮らしに欠かせない品目の値上がりが想像以上に急激です。
2025年の実質賃金指数は、前年比マイナス1.3%。これで4年連続のマイナスとなり、名目上の昇給幅を物価上昇が完全に打ち消している状況です。現金給与総額自体は前年比2.3%伸びているものの、生活コストの増加の前には焼け石に水です。
②「実質増税」と“見えない負担増”
年収がわずかでも上がることで、所得税の税率区分が自動的に上がる(これを「ブラケット・クリープ現象」と呼びます)、さらに社会保険料の負担も増えるため、手取り収入は思ったほど増えません。
③ 急速に進む社会構造の変化
高齢単身世帯やひとり親世帯が増加し続けています。高齢者世帯では、年金額が物価上昇についていけず、生活がますます厳しくなっています。ひとり親世帯、特に母子家庭は、非正規雇用やパートタイム労働に頼らざるを得ない場合が多く、所得の増加が生活改善に直結しない実情もあります。
“株価最高・税収最多”と家計苦とのギャップ——二つの世界が同時進行する理由
ここで多くの人が疑問を抱くはずです。「ニュースでは株価が史上最高、税収も右肩上がりなのに、なぜ自分の財布は苦しいのか?」と。この“ミスマッチ”には日本経済の構造的な問題が潜んでいます。
まず、株価の高騰は必ずしも一般家庭の豊かさに直結しません。今の株高は、円安による大企業の輸出利益の拡大や、インフレによる名目売上の増加が主な要因です。物価が上昇すると企業の収益も膨らみますが、それが株価を押し上げる一方で、家計の負担も同時に増しているのです。
しかも、日本株の売買の約7割は海外投資家によるもの。株式市場で発生する利益が、国内の家計や消費者へダイレクトに還元される経路は非常に限定的です。このため、株価がいくら上がっても、それを実感できる一般家庭はごく一部に限られます。
税収の増加についても同様です。2025年度の国の一般会計税収は84.2兆円と、6年連続で過去最高を更新しました。しかし、これは「国民の負担増」が税収増加の原動力である側面もあります。
進む「K字回復」——恩恵を受ける人、取り残される人
では、すべての日本人が同じように苦しんでいるのでしょうか。ここに「K字回復」という言葉がヒントを与えてくれます。K字回復とは、景気回復局面で格差が拡大し、一部の層が豊かさを享受する一方で、多くの層が取り残される現象を指します。
新しいNISAや投資信託など、資産運用に回せる余裕資金がある人々は、株高の恩恵を享受しています。大企業勤務の正社員は春闘での大幅な賃上げから利益を得やすく、生活の余裕も生まれやすい状況です。
非正規雇用や中小企業の従業員、年金生活者は、物価高と社会保険料の上昇、そして実質賃金の伸び悩みに直面しています。特に日々の生活費を削る必要がある家庭や、投資に回せる資産がない世帯では、「貯蓄から投資へ」という政策の流れ自体が遠い世界の話に感じられるのが現実です。
格差社会を生き抜くために——私たちが今すぐできる「3つの自衛策」
1. 手取りを増やす「税制のハック(活用)」
実質増税に対抗するには、使える控除をフル活用することです。
- ふるさと納税:生活必需品(米、ティッシュ、おむつなど)を返礼品で賄い、実質的な生活費を下げる。
- 医療費控除やセルフメディケーション税制:年間の医療費や対象の市販薬購入費を記録し、所得税・住民税を取り戻す。
- iDeCo(個人型確定拠出年金):掛け金が「全額所得控除」になるため、将来の備えをしながら現在の所得税・住民税を直接減らす最強の節税策です。
2. 「月5,000円」から始めるインフレヘッジ(物価高対策)
インフレ局面において、現金を銀行に預けっぱなしにすることは「お金の価値が目減りする」ことを意味します。投資余力がないと感じる人ほど、まずは月数千円の少額から「新NISA」を活用し、世界経済の成長(インフレ)の波に乗る仕組みを作りましょう。
3. ポータブルスキルの習得と「複業」による収入源の多角化
本業一本に依存することは、実質賃金マイナス時代のリスクです。今の仕事以外でも通用する「ポータブルスキル(個人の掛け算となる専門性)」を磨き、副業・複業によって「会社の給与以外から月3万〜5万円を作る」ルートを確保しましょう。この小さな副収入があるだけで、物価高の波を軽々と乗り越えられるようになります。
まとめ:この「断絶」を生き抜く主役はあなた自身
「数字の景気」と「生活の実感」の間に横たわる深い溝。これを埋めるための減税や少子化対策、社会保障改革といったマクロな処方箋は、国に対して声を上げ続け、注視していく必要があります。
しかし、同時に大切なのは「国や会社は守ってくれない」という前提に立ち、自分自身の足元を強くすることです。
マクロな構造の裏表を理解した今、次に行うべきは「嘆くこと」ではなく「自衛の行動を起こすこと」に他なりません。資産を賢く守り、稼ぐ力を多角化する。その小さな第一歩こそが、あなたと大切な家族の未来を切り拓く確かな盾となるはずです。


