
「Happy原宿バージョン」~「バズ」動画誕生の...
5/22(木)
2025年
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八木原 保 2025/05/14
きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿カワイイ大使」認証よりさかのぼること数か月前の平成24(2012)年4月、渋谷区観光協会が設立された。これは、当時の桑原敏武区長肝入りのプロジェクトだった。
渋谷を魅力ある街にしたいという思いから、私を含む7人で定期的に有識者会議を開催していたのは前回も述べた通りだ。桑原区長はそこに加えて、魅力的な街とするためには区に観光協会を設立し、他の区がやっていないような事業を次々と打ち出さなければならないと考えていたのだ。
私にも「理事になってくれないか」と話が来て、私のほか5名で渋谷区観光協会の初代理事を務めることになった。この一般財団法人の特長は産官学民の連携にあった。変化し続ける渋谷区にあって新たな観光振興事業を設立し、育成し、さらにそれらをつなげていくことを通じて「国際文化観光都市・渋谷区」の実現を目指すというものだ。 最初は泣かず飛ばずだった。だが、インバウンド需要が高まってきたことに加え、きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿カワイイ大使」認証などでも流れができて、渋谷区観光協会の売り上げが年々倍増するようなペースで増加していった。実は今のインバウンド需要が来る前に訪日外国人の数が減った時期があったのだが、一方で原宿を訪れる外国人の数は秋葉原よりも増えているということがデータで明らかになっていた。私は外国人の関心が家電よりもファッションに移っていると読んだのだが、見事にそのような流れになった。
東京都も一緒になってプロジェクトに取り組む。観光案内関連、インフラ整備などを行っている一方で、デジタル観光戦略など積極的に打ち出している。土産など物販の売上も好調だときく。
現在、事業は長谷部健区長に引き継がれているが、同氏は大手広告代理店の出身者だ。区長になってから、広告代理店の出身者が渋谷区や渋谷区観光協会の要職に就くようになり、プロモーションにもまた拍車がかかっている。忠犬ハチ公という地元のシンボルをうまく活用し、ハチ公の銅像がある渋谷駅周辺の観光情報の発信やハチ公の慰霊祭などのイベントに、また秋田県の大館市観光協会と組んで街づくりなどにも取り組んでいる。こういった場所は、世界を見渡しても渋谷くらいのものだろう。
平成26(2014)年12月には、観光協会と原宿神宮前商店会とで「原宿観光案内所」もオープンさせた。開所式は東郷神社で行った。明治通りに面する案内所の建物の壁面には、アーティストの増田セバスチャンに「世界時計」をテーマにしたモニュメントを作ってもらった。まさにファッションと観光を両輪で推進することができた。それぞれが絡み合って発展の流れが作られてきた。どちらか一方を切り離すことはできない。
なお「原宿観光案内所」は2019(令和元)年に閉鎖したが、ふたたび原宿の観光案内所を作りたいと私は考えている。