
世界でオンリーワンな街・原宿の魅力
5/22(木)
2025年
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八木原 保 2025/05/15
きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿カワイイ大使」認証に、渋谷区観光協会設立。2010年代の初頭には、ファッションと観光を融合させ街づくりへとつなげる、いくつかの重要なムーブメントに関わることができた。その時期にはもう一つ、日本のみならず世界中の関心を集めたパフォーマンスに関わることができた。それがあの「Happy」の動画 だ。ファレル・ウィリアムスの曲「Happy」に合わせて人々が踊る動画の原宿版だが、これもやはりこれまでのエピソードと同じような経緯で実現したものだった。
発案者は松嶋啓介さんだ。20歳でフランスに渡って修業を重ねたのち、25歳でニースに自分のレストランをオープンするや、外国人としては最年少でミシュラン一つ星を獲得した優秀なオーナーシェフである。ニースに3店舗を構えるまでになった彼は、東京進出を試み東郷神社にある東郷の杜の一角に「レストラン アイ」(現・KEISUKE MATSUSHIMA)を平成21(2009)年に開店させていた。そこにはファッション関係の人たちが集まり、ちょっとした交流の場となっていた。
そしてある日の朝、その松嶋さんが私のところに来て話をした。
「今、世界で『Happy』という楽曲が最高に流行っているんです。これの原宿バージョンを作ったら、絶対に話題になるんじゃないでしょうか」と。一方で彼は、桑原区長と東急の野本弘文会長、そしてこの私の3人のうちだれか一人でも難色を示したらやらない、とも言っていた。そこで私のもとに朝、最初に直談判をしに来たということだった。
私自身話がよくわからず、もちろんその歌を聴いたこともなかった。しかし松嶋さんの話を聞いてみると、これもまた面白そうだと思った。そこで私は桑原区長と野本会長に話した。もちろん皆最初はよくわからなかったのだが、「原宿を盛り上げるためであれば協力しようじゃないか」という思いで結束し、話は進んだ。そして、原宿に縁のある100人が出演する動画のプロジェクトが結実した。
この動画には、キャットストリートや竹下通り、明治神宮、東郷神社といった原宿を代表する街並みが出てくる。そしてビームス社長の設楽洋さんやSHIMAの奈良裕也さんをはじめとしたファッション業界の若手たち、またプロレスラーの蝶野正洋さんや桑原区長、野本会長など、幅広い分野の著名人が登場した。そうして制作した動画の再生数は100万回を超え、世界に向けた原宿のアピールに大いに貢献してくれたと思う。
動画に登場するのは若者だけではなかったし、もちろん老人だけでもなかった。民間だけではなく行政も一体になって、原宿の魅力を発信することができた。まさに官民一体となって街の文化を創出できたことに、私は大きな意義があると思っている。