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2025

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    ビームス“顧客データの価値”――B to B事業へのアイデア

    #23ビームス“顧客データの価値”――B to B事業へのアイデア

    原石からダイヤへ

     僕が電通に入社したのは、時代を動かすようなクリエーションをしたいと思っていたからです。またビームスを創った時も、屋号「ビームス」の前に、「アメリカンライフショップ」と付けていました。それは、「洋服を売る店」ではなく、「新たなライフスタイル・新たなスタンダード」を創っていきたい、という想いを形にした屋号でした。そのため、先にも述べたように「日本の若者の風俗・文化を変えるぞ!」という想いから、ビームスはスタートしています。

     僕は、ファッションはもちろん大好きですが、それ以上に、時代が変わる瞬間の現場に立ち会うことをしたかったのです。それはファッションだけではなく、もののデザイン、カルチャーにも関わってきます。そのため、次々とファッションやアート、ファーニチャー、音楽、…といったものを、ビームスのスタッフたちと手掛け、それを世界の人たちに提案してきました。

     1980年代、ビームスでその後のB to Bビジネスを始めるきっかけとなるような依頼がありました。とある外資IT企業からのオファーでした。その企業から、「当社の新製品を扱ったカタログを、ビームスのショッパー(買い物をした時に商品を入れる紙袋)に入れてくれませんか?」と打診がきたのです。かなりの高額をいただけるという話でした。「新しいもの好きで、新しいデザインに共感する客はどこにいるだろうか?」という話があがったときに、ビームスに白羽の矢が立ち、ビームスの顧客にアプローチすれば、効果的なプロモーションが展開できる、という期待が先方にあったのだと思います。当時はテレビCMや雑誌、新聞など、効果的なマス媒体がたくさんあったにもかかわらず、「“濃い客”がビームスにはいるのではないか」、と。非常に高額なオファーで、とても有り難い話ではあったのですが、丁重にお断りしました。

     僕はここで、「これは、新しいビジネスになるかもしれない」と感じました。ビームスには新しいものに敏感な人、新しい製品が大好きという人たちが、日々店に集まっているということが、ビームスの価値だと考えたのです。

     他にも、家電などの新製品をビームスの店舗に置いてもらえないか、といったオファーも多数いただきました。ただし、車はスペースの関係で置くことができません。そこで、車をデザインする話をいただきました。はじめは、「相手はプロなのに、なぜうちのような素人にデザインを頼むのだろう?」と率直に不思議に思いました。当社には素晴らしいインダストリアルデザイナーがいるわけではありません。

     しかし、よくよく当時のことを振り返ってみると、彼らが着目していたのは、ビームスがもっている顧客なのかもしれない、と気づいたのです。多くの企業では、例えば電通のホールなどに300人ほど集めて新製品のアンケートを取ることがありますが、ビームスでは、毎日商品を顧客に見せ、反応を見たり意見を聞いたりして、顧客からの良し悪しの声を聞いています。

     つまり、生活者の頂点に、ビームスはいるのです。だからこそ、プロが気がつかないことに気がつくのではないかと思います。これは、ビームスが培った生活者としての最前線の地位であり、どれだけ日々アンケートを取っているか、特に流行に敏感なお客さまの声をキャッチしているか、ということの証明です。どれだけ優良顧客を持っているか――これが、企業としての新たな力になると思ったのです。

     現在、2002年からスタートしたビームスの会員システム「BEAMS CLUB」には、ビームスのことを好きでいてくれるお客様のデータが集まっています。動き出すのが早い人とは、どういう思考の持ち主なのか、どういうものに反応するかが見て取れます。

     もちろん通販会社やカード会社、銀行なども、膨大な数の会員がいて、さまざまなデータを持っていると思います。健康食品に反応する人、アウトドアに反応する人、お金を使う人、使わない人、…あらゆるデータを多数所持しています。しかし、お金のあるなしにかかわらず、『流行に早く反応する人のデータ』は持っていないのではないかと思います。

     それであれば、ビームスが保持しているデータは、いずれ自分たちにとっての“索引”になると思ったのです。そして、2つの価値を生み出してくれると思いました。一つは、「旬」に敏感な人のデータを活用した新たなビジネスを生み出すということ。もう一つは、当社にはさまざまな異なる嗜好をもった人間が多数いるため、彼らが、通常のビームスの枠組みを超えたプロジェクトのタネを見つけて、そこに参加できるようになること。そして、これらに対するスタッフの喜びは非常に大きいのではないか、ということです。こうした効果も見越して始動したのが、B to B事業です。

    写真引用元:
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