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2025

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    ビームスの目指す形・「コミュニティブランド」

    #28ビームスの目指す形・「コミュニティブランド」

    原石からダイヤへ

     80年代から90年代までは、『モノ』にこだわる流れがありました。我われも、『モノ作り』や『モノの歴史』にこだわってやってきました。そして、時代が先へ進むと、今度は『モノ』から『コト』へという流れに変わってきました。それぞれの時代で、『モノ』を使って起こる現象のようなもの――例えばスポーツ、エンターテインメントといった『コト』。それを作っていこうという流れです。さらに、2000年代を超えて2010年に近づくごとに、モノからコトへ、コトからヒトへ、という流れができていきました。この流れを受けて、最終的にビームスは、社是を「ハッピー・ライフ・ソリューション・カンパニー」から、「ハッピー・ライフ・ソリューション・コミュニティーズ」へと変更しました。

     ハッピーというのは、モノへのこだわりや、コトを実行に移すことからも生まれますが、最終的には、自分の家族や友人、同好の士といった人たちとの繋がりによって生まれるものだと思います。

     ある日僕は、社内でこう言いました。
     「ビームスは、従来の、スーパーブランドでもなければ、ファストファッションでもない。では、何と呼べばいいのか。ビームスは、『コミュニティブランド』になるんだ」。つまり、ビームスというのは会社名でも、ブランド名でも、店名でもなく、この集団の名前なのだ、と。明るく楽しい社会現象を起こす「集団名」こそが、ビームスなのであり、そうしたブランドになりたい、と思ったのです。

     単なるファッションブランドやカルチャーブランドを超えて、人のつながりやハッピーなコミュニティを作っていく。これは、まずは社員、そして協力いただけるお取引先、ブレーン、最終的にはお客さまなど、縁ある方たちとハッピーなコミュニティを形成する、ということです。「ビームスと一緒に何かやりたい」「ビームスの仲間になりたい」と言われるようなブランド、それが僕の目指すコミュニティブランドです。

     そういった集団にしたいという想いから、ビームスでは“人施策”というものを進めてきました。人施策とはどういうことかというと、ひとつの例として、ビームスはよく「動物園のような会社だ」と言われています。哺乳類もいれば、両生類もいれば、爬虫類もいて、個性ある多様なキャラクターがいます。そして僕は、動物園の園長ですが、それぞれの動物にはそれぞれのファンがついている、という状態です。これが、セレクトショップの最初の一歩だとも考えています。ビームスは、洋服を多種多様に揃える前に、多種多様な人材を揃えるところから、セレクトショップをつくっているということです。

     小さなセレクトショップというのは、一人のオーナーが自分の好きな世界観、自分の好きな文化みたいなものを選んで、それを並べて、「これ好きな人、この指止まれ!」というのが、基本の姿だと思うのです。ビームスはある程度大きくなり、「100人いれば100のビームスがある」という形態に変わってきました。「これ好きな人、集まれ!」とそれぞれの人間が言うと、コアな人間には10人ぐらいが止まり、ブームを捉えている人間には100人ぐらいが止まる――そんな集団によってビームスというものを形成していきたいと思い、“人施策”を行ってきました。

     これは言葉で伝えるだけではなく、本の出版もしています。これまでに7冊刊行されている『BEAMS AT HOME』などは、目次がスタッフの名前になっています。個性豊かなスタッフが、自分のライフスタイルを見せることによって、そこにファンがついていく。そうした個々の成長が、ビームスの成長につながっています。

     我われはもちろんビジネスをやっていますから、そこにお金というものは介在します。しかしそれ以前に、「ビームスとだったら一緒に何かやりたいよね」と思ってもらえるつながりをものすごく大事にしたいと常に思っています。それが、これからのビームスの“人施策”へとつながる、重要な根幹です。

     今後はどんどんデジタル化が加速し、これまでできなかったさまざまなことが実現可能になってくると思います。しかし逆に言えば、デジタルが進めば進むほど、人とのつながりや温もりといったものが、同じくらい重要になってくる時代になると思います。だからこそ、僕たちはそれをなにより大事にしたい、というふうに思っています。

    #ビームス#BEAMS#設楽洋#タラちゃん#経営#ファッション業界
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