
コロナ禍、静寂の日本が教えてくれたもの
7/27(日)
2025年
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楠本 修二郎 2025/07/20
人材育成について考えるとき、話はつい若い世代のことに偏りがちです。しかし最近、私は強く思うのです。本当に「学び直し」が必要なのは、凝り固まった私たち年長者の方ではないだろうか、と。若い世代は、私たちが思う以上に本質を理解しており、適切なフィールドさえあれば「学ぶ」よりも先に「やってみよう」と、軽やかに実践できる力を持っています。
だからこそ、これからの人材育成は「逆三角形」であるべきです。つまり、年齢を重ねた人間こそが謙虚に学び続け、若い世代は理屈よりも実践に重きを置く。極端に言えば、小学生が起業したっていい。私は本気でそう考えています。
一般的に、IT業界は起業しやすいと言われています。理由は、大学生でも起業できるからです。ただ逆に言うと、少なくとも小学生では、ITでの起業は相当に難しいでしょう。しかし、食ならばできます。経験値は大事です。それでも、起業することはできます。だから、「まずやってみよう」ということが大切なのです。
先日、私の勉強会に「小学生社長」が参加してくれました。驚いたことに、彼のご両親は、かつて私がカフェ・カンパニーを作る前に営んでいた飲食店で働いてくれていた、学生アルバイトの二人だったのです。時を経て、彼らの子供が起業家として私の前に現れた。これほど嬉しいことはありませんでした。
AIが進化し、暗記の価値が相対的に下がるこれからの時代、教育のあり方も変わらなければなりません。初等教育はどうなるかと言ったら、暗記は必要なくなると思います。もちろん、暗記に意味がないわけではなく、暗記によって脳を鍛えられるということはありますが、九九を覚えるよりも、もっと大切なことがあります。それは、実際に何かを体験するということです。
私は石垣島の観光アドバイザーをやっているのですが、そのご縁で、石垣島など八重山諸島に足を運ぶことがあります。そこには、東京にはない「生きた教材」が溢れています。
広大な畑で土に触れ、海で漁をし、森の木をチェーンソーで切り出して家を建てる。その中で、土を観察して窒素・リン酸・カリウムを学ぶ。そんな実践の中でこそ、サバイバル能力や変化を察知する力、他者との関係を築く力といった、予測不能な時代を生き抜くための本質的な力が育まれるのではないでしょうか。
これまでの社会は、年長者が経験に基づいて若者を導くのが当たり前でした。しかし、これからは逆です。変化の激しい時代についていけず、凝り固まった発想に陥りがちな年長者こそが、自らの価値観を一度「溶解」させるために学び直さなければならない。なぜなら、良くも悪くも社会的な影響力を持っているのは、私たち年長者だからです。
私たちが学ぶ姿勢を見せれば、若者たちはもっと自由に、大胆に未来を切り拓いていけるはずです。もちろん、筋の通らない生意気さには、愛情をもって厳しく接することもありますが、基本は彼らを信じて任せる。そのために、まずは私たち自身が変わらなければならないのです。