
一次産業を復活させる革命的技術・「食のレコーディ...
7/27(日)
2025年
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楠本 修二郎 2025/07/24
ZEROCOのプロジェクトとは少し視点を変えて、私が現在注力しているもう一つの取り組みについてお話しします。それは、農業生産法人「株式会社JAPAN FARM PARTNER」の運営です。この法人は、20年以上にわたり有機農法をはじめとする「心と体に良い農業」を実践してきたチームから事業を引き継いだもので、現在は私が代表を務めています。
例えば石垣島では、20万坪もの広大な牧場で、海洋性ミネラルを豊富に含んだ牧草(グラスフェッド)を与えて黒牛を育てています。ジャージー牛もオーガニックな環境で飼育しており、アニマルウェルフェア(動物福祉)の認証も取得しました。
昨今、農業の担い手不足が深刻な問題となっていますが、私たちはその受け皿となるべく、石垣島の他にも長野、静岡、九州、四国など全国各地で農場や食品工場を積極的に引き受けています。現在、契約中の案件を含めると、20以上の農業生産法人が私たちのグループに加わる見込みです。
私たちがなぜこれほど農業に力を注ぐのか。それは、理想を語るだけでなく、自ら実践者でありたいからです。
私が課題と考えるのは、多くの外食産業やアパレルなど、生活者接点の高い業界では当たり前に培ってきた知恵やデザイン力、ブランディング、マーケティングといったノウハウが、日本の農業や一次産業、一次加工業にほとんど活かされていないという現実です。
地方創生の文脈で言えば、例えば「自然×リゾート」をテーマにした素晴らしい取り組みは増えています。世界的に有名なアマンリゾーツや、日本の星野リゾートなどがその代表例で、「自然を愛でる」というコンセプトは多様な広がりを見せています。しかし、多くの観光業や不動産業が参入する一方で、その中心にあるはずの「食」にまで踏み込めているプレイヤーは、ほとんど存在しないのです。
最近になって、ようやく一部の先進的な不動産デベロッパーなどの間で、農業へ参入しようという機運が高まってきました。私たちはその流れをさらに加速させるべく、農業分野にも展開をはじめました。農業に付加価値をつけ、一般の方々に農地に遊びに来てもらうファームリトリートプロジェクトを企画することで、農業をサービス産業化させていくことを目指しています。
それに加えて、生産拠点にZEROCOを導入し、高品質な食品加工も行います。石垣島ではチーズやハム、ソーセージといったシャルキュトリーを製造し、6次産業化を推進しています。さらに、カフェ・カンパニーで培った経験を活かしてブランディングを強化し、確かな出口戦略を描いています。生産物をただスーパーマーケットに卸すだけでなく、魅力的な食体験として飲食店でお客様に届ける。その一連の流れをプロデュースしていこうと動いています。
この取り組みのモデルケースとして、来る9月、高輪ゲートウェイに新しいレストランをオープンする計画です。そこでは、私たちの農場で愛情を込めて作られ、ZEROCOの技術で鮮度を保った最高の食材を、存分に味わっていただくことができます。
私たちの挑戦は、国内にとどまりません。アブダビやモロッコなど海外への出店も決まっており、そこでもZEROCOを活用します。日本の素晴らしい一次生産者たちが作る食材を「メイド・イン・ジャパン」として輸出し、現地のキッチンレスのレストランで提供していく予定です。