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2025

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    お母さんたちが育ててくれた「花まる学習会」新人社長時代

    #18お母さんたちが育ててくれた「花まる学習会」新人社長時代

    原石からダイヤへ

    幼児期の教育は、人間の土台を作る上で最も大切です。しかし、当時の日本には、子どもたちの「思考力を育てる」だったり、「社会で生きていける大人に」といった、土台を育むことを目的とした塾は、ありませんでした。幼児を対象とした塾さえ、公文式くらいしか見当たりませんでした。「幼児期の体験」そのものに注目する場所が、世の中にはない。この問題意識から、私は一つの企画書を書き上げました。

    他にも温めていた企画はありましたが、この「幼児教育の塾」こそが、私が世に問うべき最初の企画だと信じていました。そして、その企画書を携え、ある塾の門を叩いたのです。

    その塾の社長は非常に個性的で、面白い人物でした。32歳にして初めての就職活動だった私は、面接でこう切り出しました。 「この歳で初めての就職ですが、私には実力があります。もしよろしければ、お土産に企画書を持ってきました。御社は小学4年生からの塾ですが、この企画で1、2、3年生向けの部門を立ち上げれば、絶対に面白くなりますよ」

    そう言って「花まる」の企画書を見せると、社長はじっと目を通し、「うーん、なるほど」と一言だけ漏らしました。そして、こう続けたのです。 「じゃあ、君がうちに来て、子会社で社長をやってくれるなら、この企画をやってもいいよ」

    こうして私は、就職活動をしたその日に社長になることが決まりました。親会社が9割の株を持ち、私は100万円ほどを出資して、雇われ社長として「花まる学習会」をスタートさせたのです。今から約32年前のことでした。

    しかし、経営の知識など何もない新人社長です。当然、最初は失敗ばかりでした。ただ一つ幸運だったのは、そんな私を、そして「花まる」という生まれたばかりの塾を、お母さんたちが育ててくれたことです。おそらく、未熟で力がないけれど必死で真剣で、母たちから見て「可愛げ」があったのかもなあ、と思います。

    創業1期生のお母さんたちとの関係は、今も続いています。驚くことに、自分の子どもがもう40歳を超えているというのに、私と社員のために、月曜日にお茶の水教室まで来てお昼ご飯を作ってくれるのです。「高濱くんを応援しなきゃ」という、創業当時の想いが続いているかのようです。最近では「私たちは若い社員に会うのが楽しみでやってるのよ」などと言われますが、そこには変わらぬ無償の愛を感じます。

    創業当初、私が講演会などで熱心に語っていると、そんなお母さんたちが声をかけてくれました。「あんた、いけると思うよ」と、完全に上から目線で(笑)。「でもね、スーツは格好いいけど、そのスーツに白い靴下はないわよ」と服装の基本を教えてくれたり、「講演会やるのにね、前日に電話入れなくてどうすんの。あんたなんか、まだ無名なんだから営業しないと。わかってないでしょ、あんた。ひと言リマインドで電話かけたら来るんだよ」と、営業のイロハまで指導してくれました。

    生徒集めも、ほとんどお母さんたちが担ってくれました。一人の熱心なお母さんが、口コミで100人もの生徒を集めてきてくれたこともあります。ある時、教室開設を熱望するお母さんから「何人集めたら教室を開いてくれますか?」と問われ、深く考えず「100人ですかね」と答えたところ、1週間後に「先生、100人集めましたよ」と連絡が来たのです。

    今でも、お母さんたちが生徒を集め、教室の場所まで探してくれる、ということがずっと続いています。そんな形で、私は応援され、育てていただきました。広告の出し方すら知らなかった私がここまで存続して来られたのは、ひとえにそんなご縁のあったお母様方のおかげです。私は特別な経営手腕を発揮したわけではなく、ただ幸運に恵まれ、人に助けられてきた経営者なのです。

    では、なぜそれほどまでに応援していただけたのか。今振り返ると、高校時代の彼女から指導してもらった「女性の話を、ちゃんと頷きながら聞くこと」などを、無意識のうちに実践していたからかもしれません。当時は何の価値もないと思っていましたが、そういった日々の姿勢が、多くの方々の温かい応援を引き寄せてくれたのだと今になって気づかされました。

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