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2025

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    何より楽しく、面白く、最高なのはやはり「教育」!

    #26何より楽しく、面白く、最高なのはやはり「教育」!

    原石からダイヤへ

    世の中には、芸術のように普遍的な価値を持つものがたくさんあります。それぞれに大きな意義がありますが、その中でも「教育」こそが、次の時代に最も大きな影響を与えるものだと私は考えています。

    その典型例が松下村塾です。誰が、どのように下の世代と濃密に関わるかによって、未来はまったく違う様相を呈するのです。その営みの善し悪しは歴史が判断しますが、人と人が共に生きる上で、最も意味のある活動の究極が教育ではないでしょうか。そして何より、教育は面白いのです。

    そもそも、人は何のために生きるのでしょうか。この歳になると、人間は必ず死ぬという事実を強く実感します。世代が移り変わっていく様を見ていると、時間の流れがいかに速いかを痛感せずにはいられません。その限られた時間の中で、生き生きとした大人がすべきこと。それは、どう命のバトンを、いい形で次の世代に渡していくか、ということに他なりません。

    彼らがより良い生き方ができるように、そして世の中がより良くなるように、その才能を開花させる手助けをする。これこそが教育の本質であり、面白さと意義深さに満ちています。自分の子か他人の子かにかかわらず、次の世代に本気で関わり、少しでも良い影響を与えようとすること。それは、この上なく楽しい営みです。教育を本業として選んだ私たちは、その最も研ぎ澄まされた形に携わっているのですから、面白くないはずがありません。また、教育は、やっていて日々楽しいと言えることも、やり手としての喜びです。

    先日行った山梨でのサマースクールでも、そう感じた出来事がありました。会場には、私たちの活動を支えてくれる高校生リーダーたちが大勢集まっていました。そのうちの7人が、私を見つけるなり「相談があるんです」と駆け寄ってきたのです。

    彼らの相談内容は、日常の些細な悩みから、起業するときの注意点、AI時代に必要なスキル、費用のかかる海外大学進学の戦略まで、驚くほど真剣で多岐にわたります。この大自然の中で、彼らと膝を突き合わせて語り合う。この時間そのものが、「最高のひとときだな」と感じられるのです。人生の価値が、死ぬまでにこうした時間をいくつ持てるかで決まるのだとしたら、私は毎日「今日も最高だぜ」と思いながらやっています。

    教育は、人間社会にとって最も普遍的で、決してなくならない仕事です。そして、携わる者にとっては、尽きることのないやりがいと楽しさに満ちています。

    例えば、堀江貴文さんやドワンゴの川上量生さんのように、ビジネスで大きな成功を収めた方々が、『やはり教育が重要だ』とばかりに、教育分野に進出したり学校を創設したりというケースは少なくありません。事業で成功し、富を築いた先にある「次なる価値」を求めたとき、その答えが教育にあるのでしょう。私たちはその価値を信じてずっと取り組んできたのだ、という自負もあります。

    現在、学校現場は過酷な労働環境や旧態依然としたシステムが問題視され、教員不足という深刻な課題に直面しています。しかし、社会全体が改めてその本質的な価値に気づき、「やはり教育こそが未来の礎(いしずえ)だ」という認識に大きく揺り戻される時が、必ず来ると私は信じています。

    私が教育現場に立ち、人の本質や可能性を見抜く上で大切にしているのは「直感」です。

    かつて俳優のロバート・デ・ニーロが、「言語化して分析できる要素で人を選ぶのが一般的だが、最も信頼できるのは会った瞬間の直感だ」という趣旨のことを言っているインタビュー記事を読みました。私も全く同感で、理屈では説明できない「ピンとくる」感覚を何よりも重視しています。その感覚が何なのかを後から分析してみると、目の輝きであったり、奥に秘めた芯の強さからくる自信の匂いのようなものであったりするのかもしれません。

    つい先日も、ある企業の女性から食事に誘われたことがありました。最初は少し億劫に感じたものの、私の直感が「食事に行くべきだ」と告げたのです。すると、彼女は素晴らしいアイデアの持ち主でした。最終的には、「それは絶対にやった方がいい」と、私がその起業家を支援する形でその話はまとまりましたが、いつもこのような直感に導かれます。それは、「何かを成し遂げたい」「よく生きよう」という強い意志を持つ人が放つ独特の匂いと、その人が持つ才能のきらめきを嗅ぎ取っているのだと思います。こうした感覚はデータ化できないからこそ、面接というアナログな手法がなくならないのでしょう。

    子どもと接する時も同じです。先日の、サマースクールの年長コースでの出来事です。みんなで外に遊びに行こうとした際、一人の5歳の男の子が「嫌だ、行きたくない」とその場に座り込んでしまいました。彼は大人に対してもしっかりと言い返せる子で、私はその瞬間に「この子にはエネルギーと芯の強さがあるな」と直感しました。

    しかし、リーダー役の若いスタッフたちは、私が来ている手前、「これでは、いいところを見せられない」という焦りがあり、それが子どもに伝わってますます子どもが反発してしまっているように見えました。

    こういう時こそ、私の出番です。躊躇なくその子の前に進み出て、「誰?」という訝(いぶか)しげな視線を受け止めた瞬間に、「こんにちは!」と、気迫を込めてじっと目を見つめます。まるで動物同士がエネルギーで挨拶を交わすような感覚です。「校長先生だよ」と名乗ってから話を聞くと、周りの子から嫌なことをされたのが原因で、ボロボロ泣き始めました。

    「そうか、嫌な気持ちになったんだな」と背中をさすって共感を示すと、男の子はまたウッと泣き出しました。しかし、その10分後には、もうみんなとキャッキャッと笑い合っていたのです。その場の空気から、彼が今何を必要としているのかを瞬時に感じ取る。これこそが教育の醍醐味です。

    論理や理を優先する人は、まず「どの教育メソッドが最適か」を考えるかもしれません。しかし、私が大切にしているのは、そうした方法論よりも、経験に裏打ちされた一瞬の「直感」です。これは当てずっぽうの勘とは全く違います。これまでの膨大な経験の蓄積が、瞬時に的確な判断をさせてくれるのです。

    それはまるで障害物競走のようです。何もない平坦なコースを走るよりも、乗り越えるべき障害が次々と現れるからこそ、面白い。子どもたちとの日々も全く同じです。困難を乗り越えた後には、心からの笑顔が待っています。「本当にいい子だな」と、愛おしさが込み上げてくる。そうした瞬間の一つひとつが、この仕事の面白さなのだと、私は日々実感しているのです。

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