子どもの未来を育む小さき家族——情操教育における...
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#23人生100年時代を支えるパートナー——超高齢化社会におけるペット飼育の社会的意義
越村 義雄 2026/07/23
現代の日本は人生100年時代を迎え、100歳以上の高齢者がついに9万人を超える時代となりました。今の18歳の若い世代が平均寿命を迎える頃には、このまま推移すればその多くが100歳まで生きるようになるとも言われています。まさに未曾有の超高齢社会に突入しているわけですが、こうした時代において、ペットは単なる愛玩動物という枠を超え、私たちの「生きがい」であり、健康寿命を支えてくれる不可欠なパートナーとしての存在意義を高めています。朝起きる合図を送ってくれたり、「散歩に行こうよ」と無邪気にリクエストをしてくれたりする。ペットは私たちに、誰かを愛する純粋な喜びを日々与えてくれる存在なのです。
そして同時に、ペットが果たしてくれる役割は、日本の国家的な課題でもある「医療費の削減」にも直結しています。海外に目を向けると、オーストラリアではペット飼育によって国家の医療費の約8〜10%が削減されているというデータがあります。これを日本の医療費に当てはめて考えると、約4兆円もの医療費を削減できるのではないかと私は思っています。さらに、日本国内では今年、認知症の患者数が700万人に達すると言われていますが、谷口先生らの調査によれば「ワンちゃんと暮らして散歩をしている人は、認知症のリスクが4割減る」という驚くべき効果も発表されています。
シニア世代にとって、健康を保つために歩くことは非常に重要です。しかし、1人で淡々と歩くよりも、ワンちゃんと一緒であれば格段に楽しく歩くことができますし、「この子のケアをしなくては」という責任感も生まれます。散歩の途中で犬仲間との出会いがあり、自然と会話が弾むことは、脳にとってこの上ない好刺激となります。また、現代の医療現場に目を向ければ、がん探知犬が血液検査と同じくらいの高い確率でがん患者を見分けるなど、お医者様を助ける存在としても活躍し始めています。このように、人間が動物を一方的に助けているのではなく、動物たちが人間を助け、健康寿命の延伸に多大な貢献をしてくれているのです。だからこそ、人の健康、動物の健康、そして環境の保全を一体として捉える「ワンヘルス」の考え方が、今後さらに重要になってくると私は確信しています。
しかし、こうした恩恵を享受するためには、一人暮らしの高齢者が増え続ける日本において、シニアが安心してペットと暮らせる環境の整備が急務です。その理想的なモデルが、私がこれまでに3回ほど視察に訪れたアメリカの高齢者住宅「タイガープレイス」です。ここは、高齢者が一生ペットとともに暮らせる施設であり、人とペットのどちらが先に逝ったとしても、施設が最期まで完全に面倒を見てくれます。タイガープレイスのように、高齢者がペットと一緒に住める施設が増えれば、人とペットのQOL(生活の質)は劇的に高まります。北海道から沖縄まで、こうした施設が日本全国に広がり、より豊かな共生社会が実現していくことを私は強く願っています。現在、日本でも似たような施設が作られつつありますが、まだタイガープレイスのように設備も含めて完全な仕組みを持った場所はありません。まずは一つ、素晴らしい日本版のモデルができれば、それが社会全体へ良い影響をもたらしていくはずです。
このタイガープレイスの計画や企画に携わっていらっしゃったのが、レベッカ・ジョンソン先生です。レベッカ先生には日本でも何度か講演を行っていただきました。コロナ禍の際にはアメリカからのZoomによるオンライン講演となり、私が九州の会場で座長を務めながら画面越しにやり取りをさせていただいたのですが、残念ながらそれが先生の日本向けの最後のセミナーとなってしまいました。実はその時、レベッカ先生はすでにがんを患っておられたのです。それにもかかわらず、画面越しの先生は非常に明るく、力強い声で私たちに語りかけてくださいました。私は、レベッカ・ジョンソン先生が遺されたあの大いなる遺志をしっかりと受け継ぎたいと考えています。ズバリそのものではなくても、それに最も近い日本版の「タイガープレイス」をどこかで必ず創り上げる。それこそが、私の次なる使命だと思っています。


