捨て猫たちが教えてくれた長寿の命と、「インターペ...
SHARE
#14ペットフード協会会長への就任——業界の未来を変えた「3つの資格制度」
越村 義雄 2026/07/14
2009年に一般社団法人ペットフード協会の会長という重責を引き受けて以来、私の視座は大きく変わりました。それまではあくまで「一企業の売上と利益」を追求する目線だったのが、「日本のペット業界全体の底上げ」が使命となったのです。日本のペット市場をより健全で豊かなものにするため、私は改革を起こす決意を固めました。
まず着手したのは、日本のペット産業の存在感を広く世界にアピールするため、メッセ・フランクフルトと共同で国際見本市「インターペット」を立ち上げることでした。そしてもう一つ、私が以前から温めていた念願の構想を実行に移しました。それが、業界のバリューチェーン全体を網羅する「3つの資格制度」の創設です。
私が企画したのは、ターゲットが全く異なる3つの資格でした。1つ目は一般の飼い主様を対象とした「ペットフード・ペットマナー検定」、2つ目はホームセンターや専門店、GMSなどの店頭で販売に携わる人たちのための「ペットフード販売士」。そして3つ目はメーカーの製造現場を守るための「ペットフード安全管理者」です。
この構想を理事会に諮った際、メンバーからは「確かにどれもあった方が良いが、リソースにも限りがある。まずは一つずつ、ゆっくりと進めていったらどうか」という慎重な意見が大半を占めました。しかし、私は「これらはアプローチする対象が完全に異なるからこそ、足並みを揃えて同時にスタートさせるべきだ」と強い信念を持って周囲を説得しました。ありがたいことに、最終的には理事の皆様が私の熱意に賛同してくださり、プロジェクトが動き出したのです。
教材の作成や全体の取りまとめにあたっては、各委員会の委員長始め、委員の皆様ならびに、ヒルズに所属していた優秀な獣医師たちも快く委員会に参画してくれて、総力を挙げてカリキュラムを作り上げました。最初に「安全管理者」からスタートし、続いて「販売士」と「ペットフード・ペットマナー検定」は、ほぼ同時期に世に紹介し、3つの制度を確立することができたのです。
この資格制度を作った原動力には、強烈な危機感がありました。それは、当時ペットフードの安全に関する新しい法律が整備される中、フードを作る側、売る側、そして与える側のすべての知識レベルを等しく引き上げなければ、本当の意味での理解や安心は得られないというものです。プロの販売員が的確なアドバイスを行えるようになり、一般の飼い主様が正しい知識とマナーを身につけ、メーカーが厳格な安全管理を徹底する。知識を持つ人々を一人でも多く輩出することは、私たちメーカーにとっても良いプレッシャーとなり、結果として日本全体のペットフードの品質向上、そしてお互いが切磋琢磨する理想的な関係性へとつながるのだと確信していました。
あれから年月が経ち、これらの試験は毎年多くの受験者が集まる重要な制度へと成長しました。昨年、インターペットの事業とこの3つの資格制度を合わせた収入は、協会に加盟する会員企業様からいただく会費の総合計を大きく上回る金額になりました。自ら生み出した新しい仕組みが、後任および現会長、委員会の皆様のご尽力もあり、今や協会の強固な財政基盤となり、様々な市場調査やより充実した飼育率調査の費用等へと充てられています。あの時、妥協せずに3つの資格を立ち上げて本当に良かったと、今改めて深く実感しています。


