ペットフード協会会長への就任——業界の未来を変え...
SHARE
#13ディズニーでの大きなチャンスと、外資系組織が抱える経営の壁
ビジョナリー編集部 2026/07/13
年間売上高の約10%という広告宣伝費を動かしていた時代、私の個人的な人間関係から、思いがけない大きなビジネスチャンスが舞い込んできたことがあります。
私の高校時代のクラスメートが、たまたまディズニーのリゾートラインの社長を務めており、ある時彼から「ディズニーランドとディズニーシーに設置されているペット預かり所(ペットクラブ)のスポンサーにならないか」という提案を受けたのです。
当時の年間協賛費は、両パーク合わせて2億5,000万円。金額だけを見れば決して小さくありませんが、当時のヒルズは非常に高い利益を上げており、広告予算から考えれば、十分に戦略的投資と言える範囲でした。私は即座に引き受ける決断を下し、米国の了解も得た上で、スポンサー契約を結びました。パークのペット預かり所に愛犬や愛猫を連れてこられた飼い主様へ、私たちの「サイエンス・ダイエット」をサンプルとしてプレゼントするプロモーションは、ディズニーランド・ディズニーシーへのお客様のご招待キャンペーンも含めて、認知度と信頼性を高める上で非常に大きな効果を発揮しました。
しかし、この成功の先に、さらに大きな可能性が隠されていました。ディズニー側から「ディズニーブランドのペットフードを一緒に作って展開しても良い」という、非常に前向きな打診をいただいたのです。
もし「ディズニー公式のペットフード」をOEMとして私たちが製造販売できれば、それは途方もない市場の拡大を意味します。日本国内はもちろんのこと、「私たちはあのディズニーに製品を提供している」という実績そのものが、アジア全域、世界へ向けた最大のブランドアピールになる。私はこれ以上ない千載一遇のチャンスだと確信し、興奮気味にアメリカ本社の社長へ提案しました。
ところが、アメリカのトップの反応は私の期待とは全く異なるものでした。「我々はあくまで『サイエンス・ダイエット』という自社ブランドの普及で行きたい」と、一歩も譲らなかったのです。そこには、アメリカ人と日本人が捉えるディズニーの価値や市場へのインパクトの大きさに、どうしても埋められない認識のズレがありました。どんなに言葉を尽くして説得を試みても、本社の頑なな姿勢を変えることはできず、結局のところ、この歴史的なチャンスは見送らざるを得なくなりました。
今振り返っても、本当にもったいない機会を逃してしまったと非常に残念に思います。しかし、これが外資系企業のリアルな側面でもありました。2009年、私がペットフード協会の会長就任を要請された際、その旨を本社に伝えると、「そちらの活動も忙しくなるだろうから、社長の座はアメリカから送る後任に引き継いでくれ」と言われ、私は日本の社長を退任し、会長へと退くことになりました。
アメリカから赴任してきた後任の社長は、「自分のアイデアで新しいことをやりたい」という思いが強すぎたのか、私たちが長年かけて現場と築いてきた成功プログラムを次々と止めてしまい、ブランドの歯車が少しずつ狂い始めることになります。トップの交代がもたらす組織の変容を、私は複雑な思いで見つめていました。


