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2026

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    多様な命が織りなす癒やしの力——動物がもたらす心身の再生と健やかな未来

    #25多様な命が織りなす癒やしの力——動物がもたらす心身の再生と健やかな未来

    原石からダイヤへ

     現代の日本において、人とペットの関係性は「1匹、2匹」から「1人、2人」と呼び方が変わるほど、家族同様のかけがえのない存在へと様変わりしています。ペットフード協会の調査でも、猫の飼育者が「生活に最も喜びを与えるもの」の1位に家族を押さえてペットを挙げるなど、その精神的な支えとしての大きさはデータにも顕著に現れています。こうした人と動物の絆は、単なる癒やしを超えて、傷ついた子どもの心を救う医療や教育の現場、さらには私たちの身体的な免疫力を高める医学的な領域にまで、驚くべき効果をもたらしています。

     数年前、私は日本獣医師会の藏内勇夫会長らとともに、アメリカのニューヨーク郊外にある児童養護施設「グリーンチムニーズ」を視察しました。約67万5,000坪という広大な敷地を持つこの施設では、発達障害や虐待によるトラウマを抱えた5〜18歳の子どもたちのケアを、動物や植物との触れ合いを通じて行っています。驚くべきは、そこで活躍する動物たちの多様さです。犬や猫だけでなく、ウサギ、馬、さらにはリャマやラクダまで、約200種類の動物が子どもたちの自立を支援しています。

     この施設が大切にしているのは「子どもは好きなことをすれば伸びる」という教育方針です。動物が好きな子はケアを通じて愛情やコミュニケーションを学び、もし動物が苦手な子がいても、オーガニックガーデンでの野菜栽培に参加することができます。種を蒔(ま)き、水をやり、収穫を待つ数週間から数カ月の時間が、子どもたちに「待つ」という忍耐力を自然と育んでいくのです。施設には精神科医や獣医師など約600人もの専門スタッフが在籍し、世界最高峰の動物介在療法や教育を実践しています。ここでプログラムマネージャーとして活躍されている日本人の木下美也子さんにも大変お世話になりましたが、このような「心に寄り添う施設」が日本にも整備されることを、私は強く願ってやみません。

     アニマルセラピーにおいて、人と心を通わせることができる伝統的な伴侶動物といえば、犬、猫、ウサギ、そして「馬」の4種類が挙げられます。特に馬を介在させた「ホースセラピー」は、心身のリハビリテーションや自尊心の回復に劇的な効果を上げています。

    馬の体温は人間より少し高いため、触れるだけで大きな温もりと安心感が伝わります。また、自分より大きな体躯の馬を操ることで自然と自信が生まれ、普段使わない筋肉を動かす有酸素運動としての効果も高いのです。馬は人の心に寄り添う繊細な生き物ですが、日本ではいまだ天寿を全うできる馬が極めて少ないのが実情です。犬や猫と同様に、優しい心を持つ馬という存在への向き合い方も、見直していく必要があるでしょう。

     一方で、最も身近な存在である犬と猫にも、それぞれ独自の素晴らしい効用があります。散歩を通じてシニアの健康寿命を延ばす最高のパートナーが犬であるならば、猫はつかず離れずの距離感で私たちを魅了します。

    最近の研究では、人はペットに触れると幸せホルモンである「オキシトシン」が分泌されることが分かっていますが、特に猫の柔らかい被毛を撫でる“モフモフ感”は、より多くのオキシトシンを分泌させる傾向があるとも言われています。散歩の手間がかからない猫は、高齢化が進む日本において、シニアが無理なく迎えられる理想的なパートナーでもあります。さらに観賞魚の存在も、シニアの食欲を増進させ、体重の増加につながるなど、生き物の種類に応じた多様な癒やしの形が科学的に証明されつつあります。

     そして、ペットが人間に与える最大の恩恵の一つが、驚くべき「免疫力の向上」です。近年、過度な除菌文化が広まっていますが、人間の体にはもともと500兆~1,000兆個もの常在菌が存在しており、菌と共生することこそが健康の鍵となります。アメリカの小児科専門誌に掲載されたフィンランドの研究によると、赤ちゃんの頃から犬や猫などの動物と日常的に触れ合っている家庭の子どもは、そうでない子どもに比べて、せきや鼻炎などの感染性呼吸器疾患にかかる確率が約30%も低く、耳の感染症にいたっては発症率が約半分にまで激減することが判明しました。

     現代の日本では、半数近くの子どもたちが花粉症などのアレルギー疾患に悩まされ、勉強に集中できないことが問題視されています。しかし、幼少期からペットにほっぺを舐められるくらいの距離感で育つことこそが、子どもの免疫系を正しく発達させ、感染症やアレルギーに強い体を作るのです。もちろん、動物から人へ感染する「人獣共通感染症」には細心の注意が必要であり、人間の4倍以上のスピードで歳を重ねるペットだからこそ、年に数回の定期健診を動物病院で受けることが前提となります。

     人と動物、そして私たちが暮らす環境の衛生を一体として守っていく「ワンヘルス(One Health)」の理念は、今や世界的な潮流です。私たちの健康とペットの健康は、切っても切り離せない一本の赤い糸で結ばれています。命の温もりに守られながら、子どもからシニアまでが健やかに、そして豊かに生きられる共生社会の実現へ向けて、私はこれからも発信を続けてまいります。

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