好奇心と素直な心が未来を拓く——ロングタームで舵...
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#27共生の入場券「ペットパスポート」と、地球を守る「ワンヘルス」の最前線
越村 義雄 2026/07/27
欧米と日本の間には、人と動物の共生に対するスタンスや社会インフラにおいて、未だに小さくない開きがあります。例えばドイツでは、列車の中にペットが当然のように同乗し、誰もそれを拒むことはありません。スタンスの根底にあるのは、ペットを「家族のひとり」として、人と共に社会を生きる対等な仲間として迎える責任感です。だからこそ、ドイツの愛犬家たちは「ペット税」の納税義務も当然のこととして受け入れています。また、ペットショップは規制され、動物はブリーダーから直接迎えるか、ティアハイムと呼ばれる高度なシェルターから譲り受ける仕組みが定着しています。
これに対して日本では、商業施設や交通機関への同伴は未だ高い壁に阻まれています。今年、インターペット大阪の開催に合わせ、JR東海がワンちゃんと一緒に旅ができる臨時専用列車「わんわんエクスプレス」を運行し、共生社会への大きな一歩を踏み出しました。しかし一方で、過去にJALやANAが企画した機内同伴ツアーの際には、ペットアレルギーの方や動物が苦手な顧客から「その機体には絶対に乗らない。機体番号を教えろ!」といった猛烈な抗議の電話が殺到したという現実もあります。
衣類に付着したペットの毛をまとった飼い主は、日常的に公共交通機関を利用しているため、実質的なリスクは変わらないという側面もありますが、感情的な拒絶を乗り越えるのは容易ではありません。この現状に対して私たちはもう少し寛容であるべきです。同時に、周囲へのマナーとルールを担保し、双方の安心を守る仕組みも不可欠です。
そこで私が会長を務める「人とペットの幸せ創造協会」では、社会への入場券となる「ペットパスポート」の商標を活用し、ヘルスケア協会と共に新しいプロジェクトを始動させました。自治体(港区)での実証実験を通じて、まずはレストランや一般の店舗に誰もが安心してペットと同伴できるルールを作り上げ、民間から真の共生社会を実現していきたいと考えています。
こうした人と動物の健全な結びつきを考える上で、現在、世界中で極めて重要視されているのが「ワンヘルス(One Health)」の理念です。これは、人の健康、動物の健康、そして地球環境の保全はすべて繋がっており、三者を一体として守るべきだという包括的な考え方です。近年、私たちは新型コロナウイルスの世界的なパンデミックを経験しましたが、地球温暖化によって北極や南極の氷が溶け出し、数万年にわたり閉じ込められていた未知のウイルスが解き放たれようとしています。今後は100年を待たずして、より短いスパンで新たなパンデミックが起こる可能性が極めて高いのです。
日本も温暖化によって亜熱帯化が進み、将来的にマラリアなどの熱帯感染症が国内で蔓延するリスクすら指摘されています。こうした脅威から命を守るためには、狂犬病や鳥インフルエンザ、新型コロナに代表される動物由来感染症(ズーノーシス)の予防に努めるだけでなく、感染症の温床となる自然破壊や気候変動そのものを食い止めなければなりません。昨今、人里にクマが出没して大きな被害をもたらしている問題も、森林伐採や環境破壊によって彼らの主食であるドングリの森が失われたことが一因です。結局のところ、環境の健全性を保たなければ、人と動物の健康も維持できないのです。
私たちはこのワンヘルスの概念を、他人事ではなく「自分ごと」として捉えていく必要があります。学校教育の現場ではSDGsが盛んに教えられていますが、具体的な達成プロセスや個人の行動へ落とし込まれていないケースが散見されます。一方で、人と動物、環境の繋がりを教えるワンヘルスの教育は、子どもたちに最も身近な命の授業となり得ます。省庁間の縦割り行政を打破し、教育現場や地域社会が一丸となってこの理念を広めていくことが必要です。人と動物、そして豊かな環境が一本の「赤い糸」で結ばれた、世界に誇れるワンヘルス先進国を目指し、私たちはこれからも具体的なインフラづくりに挑み続けます。


