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熊出没の裏で活動する猟友会──その仕組みと課題
ビジョナリー編集部 2025/11/13
近年の野生動物による被害の急増などから、「猟友会」の存在が徐々に注目を集めています。
この記事では、「猟友会とはどんな組織なのか?」にお答えしながら、その組織構造、活動内容、社会的意義までをわかりやすく解説します。
※ この記事の情報は2025年11月時点のものです。
猟友会とは
猟友会は、狩猟免許を持つ人が主体となった、全国規模の公益的な団体です。
最上位には「大日本猟友会」という全国組織があり、その下に各都道府県猟友会、さらに各市町村単位の支部猟友会が組織されています。
昭和4年(1929年)に「大日本連合猟友会」が設立され、昭和14年に社団法人化したものが、現在の「大日本猟友会」です。設立の背景には、当時全国で統一の狩猟団体がなく、狩猟行政の執行に支障をきたしていたことがありました。※1
危険を伴う狩猟を安全に行うために、鳥獣保護管理法・銃刀法・火取法・鳥獣被害防止特措法・外来生物法・地方税法などの法令の元、活動をしています。※2
また、猟友会に入会し活動するためには、大日本猟友会や地方ごとの都道府県猟友会や支部に会費を払う必要があります。都道府県猟友会や支部の会費は地域ごとに異なりますが、参考に北海道札幌支部の例をあげます。※3,※4
【大日本猟友会】
- 第一種銃猟:4,800円(共済掛金額の1,500円を含む)
- 第二種銃猟:3,300円(共済掛金額の750円を含む)
- わな猟:2,300円(共済掛金額の750円を含む)
- 網猟:2,300円(共済掛金額の750円を含む)
【北海道猟友会】
- 第一種銃猟:4,000円
- 第二種銃猟:4,000円
- わな猟:2,000円
- 網猟:2,000円
【札幌支部】
- 第一種銃猟:12,000円
- 第二種銃猟:12,000円
- わな猟:12,000円
- 網猟:12,000円
たとえば北海道で狩猟を始めたい場合は、まず札幌市などの地域支部に所属し、そこから都道府県猟友会、そして大日本猟友会へと自動的に会員資格が連なります。
猟友会の大きな目的は、「鳥獣保護と狩猟の適正化、生活環境の保全、農林水産業の発展への貢献」にあります。
つまり、単に獲物を獲るだけでなく、
- 狩猟道徳の向上
- 環境保全活動
- 社会貢献
といった幅広い社会的役割を担っています。
猟友会の組織図
猟友会は、全国で約10万人の会員が所属する大規模なネットワーク組織です。支部の数は日本全国に散らばっており、地域ごとに活動の特色や課題も異なります。例えば、広大な北海道ではエリアごとの特性に合わせて活動を最適化しています。
どんな人が加入しているのか?
基本的には狩猟免許を持っていれば誰でも加入可能です。
免許には第一種・第二種銃猟、網猟、わな猟などの種類があり、自分が持つ免許の種類で会員区分が決まります。
世代や性別の幅も広がっており、近年では女性ハンターや、若手を中心とした青年部の設置が各地で進んでいます。
猟友会の主な活動内容
猟友会の活動は多岐にわたりますが、主に以下の三つがあります。
有害鳥獣駆除──地域を守る最前線
近年、イノシシやシカ、クマといった野生動物による農作物被害や人身被害が深刻化しています。
こうした状況で、猟友会は自治体からの要請を受けて有害鳥獣の駆除活動を担っています。
2024年には全国で約9,100頭のクマ、さらにシカやイノシシでは100万頭を超える駆除実績が報告されています。こうした活動は、農林水産業の健全な発展や地域社会の安全にとって不可欠です。
現場ではどんなことが起きている?
現場のハンターからは「会社をクビになるほど忙しい」と言われるほどに、要請が相次いでいます。特にクマや大型イノシシの駆除は、数人がかりで協力しなければならない危険な作業です。
現場では、銃刀法や安全基準を厳守しつつも、時にはトラブルに巻き込まれることもあります。
例えば、北海道のある町では、行政側とのコミュニケーション不全から出動拒否に至ったケースもありました。現場の安全確保や役割分担の難しさが浮き彫りになっています。
狩猟技術・安全意識の継承
猟友会では、
- 狩猟事故や違反防止のための安全啓発
- ベテランによる新人指導
- 狩猟技術の講習会
- 射撃大会の開催
などを積極的に行っています。
これは、狩猟が危険を伴う活動であるため、安全意識と正しい知識の伝承が欠かせないからです。
また、自治体や国の最新の法令・情報をタイムリーに共有し、会員の法令遵守を徹底しています。
会員向けサポート体制
猟友会には、
- 狩猟事故共済保険(対人補償最大4,000万円)
- 登録手続きの代行
- 狩猟用具の割安提供
- 会報や勉強会による情報提供
- 仲間との交流・懇親会
など、安心して狩猟を続けられる体制が整っています。
これによって、初心者もベテランも安心して活動でき、狩猟コミュニティが円滑に運営されています。
猟友会に加入するメリット
強力な指導体制とコミュニティ
猟友会に入れば、経験豊富な先輩ハンターと出会い、現場のノウハウを直接学ぶことができます。「師と仰げる達人」との出会いは、独学では得られない貴重な体験となるでしょう。
また、狩猟は趣味の枠を超えた“地域社会とのつながり”を実感できる活動でもあります。
地域貢献というやりがい
有害鳥獣駆除を通じて、地域農業や人々の安全に直接貢献できます。
自治体によっては、駆除1頭あたり数千円〜数万円程度の報酬や、日当・弾薬代が支給される場合もあります。
しかし、多くのハンターが「報酬ではなく、地域のため」という動機で活動しているのが実情です。
安全・法令遵守の徹底サポート
猟友会は、最新の法改正や安全対策の情報を共有し、事故防止や法令違反のリスクを最小限に抑えています。また、狩猟事故共済保険により、万が一の事態にも備えられます。
猟友会が直面する新たな課題
クマ・イノシシ出没の増加と社会的要請
ここ数年、クマやイノシシの出没が全国的に増加し、「クマ対策」「有害鳥獣駆除」のニーズはますます高まっています。
一方で、
- メガソーラー開発や里山の環境変化
- 森林伐採による餌不足
- 空き家増加による野生動物の生活圏拡大
など、複雑な社会背景が絡み合い、現場では予想外の事態も多発しています。
ハンター不足と現場の負担増
現場のハンターには大きな負担がかかっています。ボランティアに近い形で出動するハンターも多く、時には行政との認識のズレやトラブルも生じています。
まとめ
猟友会は、
- 狩猟技術・道徳の継承
- 地域社会への貢献
- 安全で合法的な狩猟活動の推進
を軸に、時代の変化に対応しながら進化を続けています。
今後は、
- 若手・女性のさらなる参加促進
- 行政や地域との連携強化
- 安全管理の見直し
- 持続可能な野生動物管理政策への貢献
といった新たな課題に応えつつ、「狩猟を通じて地域と自然を守るプロフェッショナル集団」としての役割が一層重要になっていくことでしょう。
地域社会・自然環境・未来世代をつなぐ架け橋として、これからの猟友会の活動にも、ぜひ注目してみましょう。
参考文献
※1:https://yezodeer.org/library/akasaka/yomoyamabanashi/003/003.html
※2:http://j-hunters.com/info/houritsu.php
※3:http://j-hunters.com/about/member.php
※4:https://hokkaido-hunters-sapporo.jimdofree.com/%E5%85%A5%E4%BC%9A%E6%A1%88%E5%86%85/


