スマートフォンやパソコンを日常的に使う現代社会。朝から夜まで画面を見つめ、「目が重い」「肩がこる」「頭が痛い」――そんな症状を感じたことはありませんか?
「ちょっと目が疲れているだけだろう」と軽く考えてしまいがちですが、実はその症状、眼精疲労のサインかもしれません。
では、眼精疲労とは何なのか?その正体を知り、放置するリスクや、すぐに実践できる対策を知っておくことで、目の健康を守ることができます。
そもそも眼精疲労とは?
一言で「目が疲れた」といっても、眼精疲労は通常の“疲れ目”とは異なります。
眼精疲労とは、目を使いすぎることで目だけでなく全身にも症状が及び、休息や睡眠をとっても十分に回復しない状態を指します。
たとえば、以下のような症状が続く場合は要注意です。
- 目が重い、痛い、かすむ、まぶしい
- 目が乾く、充血する
- まぶたのピクつき、まばたきの増加
- 頭痛、肩こり、首の痛み
- 吐き気や倦怠感、集中力低下
「ただの疲れ目だから」と放置してしまうと、思わぬ健康被害につながることも。
では、なぜ現代人は眼精疲労を起こしやすいのか、その原因を紐解いていきます。
眼精疲労の主な原因
1. スマートフォン・パソコンの長時間使用
最も身近な原因が、スマホやパソコン、タブレットなどの画面の見すぎです。現代の生活ではスマートフォンの普及率は8割を超え、仕事もプライベートも“画面”を見続けています。
- 至近距離で画面を見る
スマホの画面は顔から20~30cmという近さ。目のピント調節を担う毛様体筋が長時間緊張し、まるで筋トレをずっと続けているような状態になります。
- 姿勢の悪化・首や肩への負担
小さな画面を覗き込むことで首が前に出たり背中が丸くなったりします。筋肉のこわばりが目の不調をさらに増幅します。
- ブルーライトの影響
強いブルーライトは目の表面にダメージを与え、乾燥や痛みの原因になります。
2. 合わないメガネ・コンタクトレンズ
「昔作ったメガネをそのまま使っている」「コンタクトの度数が合っていない」――これも見逃しがちな原因です。
- ピント調節の負担増
度数が合っていないと、毛様体筋が常に頑張り続け、疲労が蓄積します。
- 老眼の進行
40代以降はピント調節力が低下しやすく、気づかないうちに無理をしているケースも少なくありません。
3. ドライアイ(乾き目)
ドライアイは、現代人の眼精疲労の大きな要因の一つです。
- 涙の量や質の低下
まばたきが減ったり、エアコンの風が当たったりすると涙が蒸発しやすくなり、目の表面が乾燥します。
- 目の表面のダメージ
乾燥が進むと、目の表面に傷がつきやすくなり、かすみや痛み、まぶしさを感じやすくなります。
4. 作業環境の問題
- 照明のちらつきや画面の映り込み
- エアコンの風・室内の乾燥
- 紫外線の直接照射
- 同じ姿勢での長時間作業
これらの要素が重なると、目の負担は一気に増加します。
5. 全身の病気や精神的ストレス
- 糖尿病、高血圧、風邪、インフルエンザ
- 虫歯や歯周病、鼻や耳の疾患
- 精神的ストレスや自律神経の乱れ
目そのものに問題がなくても、全身の不調やストレスが目に現れることもあります。
ストレスが交感神経を優位にし、涙の分泌量が減ってドライアイを悪化させるケースも多いです。
6. 目の病気が隠れている場合も
- 白内障、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症
- 眼瞼下垂などのまぶたのトラブル
「ゆがんで見える」「視野が欠ける」などの症状がある場合、眼精疲労の裏に重大な病気が隠れている場合もあります。
眼精疲労を放置すると何が起こるのか?──見逃せないリスク
全身の不調に波及
「目が疲れているだけ」と思いきや、眼精疲労が進行すると全身症状が現れます。
- 頭痛や首、肩のこり
目の不調が自律神経を乱し、首や肩の筋肉に負担をかけます。
- 吐き気やめまい、倦怠感
長引く眼精疲労は、体全体のだるさや集中力低下、イライラ、睡眠障害にもつながります。
病気の見逃し・進行
- 重大な目の病気が進行する恐れ
緑内障や白内障、加齢黄斑変性などは、初期症状が軽いため「眼精疲労かな?」と見過ごされがちです。放置すると、視力の低下や最悪の場合失明に至るケースも報告されています。
- 全身疾患のサインを見逃す
糖尿病や高血圧などの全身疾患が眼精疲労の形で現れることも。原因不明の眼精疲労が続く場合は、健康診断や眼科受診をおすすめします。
いますぐできる!眼精疲労の具体的な対策
1. 目をしっかり休めましょう
- 60分に一度は2~3分、遠くをぼんやり見つめる
近くばかり見ていると毛様体筋が疲労します。窓の外や部屋の遠くを「ぼんやり」見ることで目をリセットできます。
- 画面作業は1時間ごとに10~15分休憩
厚生労働省のガイドラインでも推奨されています。
- まばたきを意識的に増やす
画面を見ているときはまばたきが減りがち。意識してまばたきを増やすことでドライアイ予防になります。
2. 目を温める/冷やす
- 蒸しタオルやホットアイマスクで目を温める
目の周りの血流が良くなり、緊張した筋肉が緩みます。
- 充血や痛みがある場合は冷やす
炎症の疑いがある場合は冷やしたタオルで目を冷やし、悪化を防ぎましょう。
3. 環境を整える
- 画面と目の距離を40cm以上に保つ
- ディスプレイの高さは目線よりやや下に設置
- 照明のちらつきや映り込みを避ける
- エアコンの風を直接目に当てない
- 加湿器を活用し、室内を乾燥させない
4. メガネ・コンタクトレンズの見直し
- 度数が合っているか定期的にチェック
- パソコン用、読書用など用途に応じて使い分ける
- ブルーライトカットやUVカットのレンズも活用
5. 生活習慣と食事の見直し
- 規則正しい生活、十分な睡眠を心がける
- ストレスを溜め込まない工夫をする
- 軽い運動やストレッチを取り入れ、全身の血流を良くする
- 目に良い栄養素をバランスよく摂取
ビタミンA(ほうれん草、ニンジン、レバー)
ビタミンB群(納豆、豚肉)
ビタミンC(ピーマン、イチゴ)
ビタミンE(ナッツ、豆類)
アントシアニン(ブルーベリー)
ルテイン(小松菜、モロヘイヤ)
アスタキサンチン(エビ、カニ)
DHA・EPA(青魚)
眼精疲労のサインを見逃さないために──こんな時はすぐ受診を
- 「目の疲れ」が数日続いても改善しない
- 目がかすむ、視野が欠ける、ゆがんで見える
- 強い痛みや充血、まぶたの腫れなどがある
- 全身症状(頭痛・吐き気など)も併発している
「まだ大丈夫」と思っているうちに症状が進行してしまうことも少なくありません。
特に40代以降は、定期的な眼科検診を受けることが大切です。
まとめ
私たちは日々、膨大な情報を「目」から受け取っています。しかし、目はとても繊細で、酷使すれば全身にも思わぬ影響が広がります。
- 「ちょっとした違和感」でも油断しない
- 眼精疲労は生活習慣や環境の工夫で予防・改善が可能
- 重篤な疾患を見逃さないためにも、定期的なチェックが重要
もし今、何気ない目の不調を感じていたら、今日からできる小さな対策を始めてみてください。それが、これからの快適な毎日と、健康な未来への第一歩になるはずです。