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【独自レポ】第45回ベスト・ファーザー賞にみる、令和の「理想の父親像」とは。吉田鋼太郎、ハライチ澤部らが語った家族への想い
『今年の顔』を照らすアワード特集ビジョナリー編集部 2026/06/11
6月の第3日曜日「父の日」を前に、日本を代表する“素敵なお父さん”を称える「第45回 ベスト・ファーザー イエローリボン賞」の発表授賞式が、2026年6月3日(水)に東京會舘で開催された。主催は一般社団法人日本メンズファッション協会(MFU)。
本年は、政治・経済、学術・文化、芸能、スポーツの各界から、現代の父親像を体現する5名と1キャラクターが受賞。台風の接近により一時は開催が危ぶまれたものの、欠席者はなく、会場には多くの報道関係者や参加者が集った。社会の第一線で活躍する彼らが語ったのは、華やかな実績の裏にある、育児への奮闘やパートナーへの深い感謝、そして独自の「父親論」だった。激動の時代において、父親たちがどのように家族と向き合っているのか、その熱いスピーチの模様を詳報する。
八木原理事長挨拶:不透明な時代に「夢と希望」を、MFUが掲げる3つの方針
授賞式は、主催者を代表し、MFUの八木原 保理事長の挨拶で幕を開けた。八木原理事長は、今年からの新たな取り組みとして、MFUが目指す3つの運営方針を力強く宣言した。
社会貢献: 各事業を通して、社会へしっかりと貢献していくこと。
世界平和の啓蒙: 「平和なくして経済は成り立たない」という信念のもと、平和への意識を啓蒙していくこと。
SDGsの理念: 国連が推奨する持続可能な開発目標(SDGs)に従った運営を行うこと。
また、MFUが今後予定している展開として、9月に品川のグランドプリンスホテル高輪で開催される「グッドエイジャー賞」および「マイスター表彰式」、11月初旬に原宿の東郷記念館で開催される「パートナー・オブ・ザ・イヤー」、年末に渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで行われる第55回「ベストドレッサー賞」、そして3月に原宿で開催予定の若手クリエーターを表彰する「ベストデビュタント」を紹介。
八木原理事長は、 「世の中が暗いからこそ、1人でも多くの人たちに夢と勇気、元気と希望、そしてワクワクドキドキするような活動を届け、日本とそれぞれの業界を盛り上げていきたい」 と結び、支援者や報道陣へ深い謝意を述べた。
▲「世の中が暗いからこそ、ワクワクを届けたい」と語る、一般社団法人日本メンズファッション協会(MFU)の八木原 保理事長。
来賓挨拶:有事における日本のエネルギー調達と、ファッション業界への呼びかけ
続いて、経済産業大臣政務官の小森 卓郎(こもり たくお)氏が登壇。会場にみられる黄色いネクタイに触れつつ、「1982年から続くこの賞は、日本人に『父の日』を定着させた素晴らしい文化風物詩」と称賛。自身も家族からネクタイなどを贈られると大変嬉しくなると明かし、ファッション業界と日本経済のさらなる発展に期待を寄せた。
また、小森氏は経済産業省の立場から、昨今多くの国民が懸念している中東・イラン情勢が国内に与える影響について、客観的な事実と政府の対応を説明した。
小森氏「現在、ホルムズ海峡の通行が困難になっておりますが、商社やエネルギー関係企業の尽力により、他ルートから通常の約8割にのぼる原油やナフサ(石油化学製品の原材料)を調達しており、日本全体としての総量は確保されています。その一方で、流通が一部で均等に行き渡らず、不安からくる買い溜めや供給の手控えが起きているのも事実です。経済産業省では通報窓口を設け、問題を上流の元売りへと繋いで個別に解決しているほか、大手卸業者へは前年同月並みの供給を要請しています。ファッション業界の皆様も、包装用品や運送用燃料の面でご不安かと思いますが、抱え込まずに私どもへご一報いただき、通常通りの取引を行っていただけるようご理解をお願いいたします。」
2026年「ベスト・ファーザー」発表! 受賞者たちが語った「父親としてのリアル」
授賞式のハイライトである受賞者の発表では、各界を代表するお父さんたちが登壇。トロフィーと“サンリッチひまわり”の花束を手に、それぞれの家族のストーリーを語った。
【政治・経済部門】山口 祥義氏(佐賀県知事)「20年前のワンオペ育休が原点、県全体で目指す『子育てし大県』」
政治・経済部門で受賞したのは、佐賀県知事の山口 祥義氏。「大変嬉しく光栄です。この受賞を家族と佐賀県民に捧げたいです」と満面の笑みを見せた。山口氏にとって子育ての原点は、20年前、鳥取県庁の部長職を務めていた時代に取得した育児休暇にある。当時、妻が入院したため、上の子供2人を1人で育てる「ワンオペ育児」を経験。
当時は「仕事をしに来たのではないのか」と周囲から心ない言葉をかけられたが、議会を休んで子供と向き合った大変な時間が、強烈な財産となった。その時の子供がちょうど二十歳を迎え、成人式を行ったタイミングでの受賞に、感慨もひとしおの様子であった。
2015年から佐賀県知事を務める山口氏は、ある母親からの「子育てが楽しいと思える県にしてほしい」という言葉をきっかけに、「子育てし大県“さが”」プロジェクトを推進。自身が妊婦の体験をする動画は世界中で3,570万回以上も再生され、海外からも大きな反響を呼んだ。
また、お腹の中にいる時から夫婦でセミナー等に参加する「マイナス1歳からのイクカジ事業」を展開し、父親の共感力を育むことで夫婦円満に繋げている。現在、佐賀県庁内では男性の育休取得率が「ほぼ全員」に達しており、取得しない場合に理由を上司に報告するシステムを構築するなど、社会の仕組みづくりを牽引している。
▲自身の「ワンオペ育児」体験を胸に、「子育てし大県“さが”」プロジェクトを推進する山口 祥義佐賀県知事。
【学術・文化部門】神田 伯山氏(講談師)「師匠という最高の父親像、そして『比べない』弟子への愛情」
学術・文化部門で受賞した講談師の神田 伯山氏は、「本業の講談やラジオでは一切賞をくれないのでずっと拗ねていたが、ようやくベスト・ファーザーが来てこれ以上ない喜び」とユーモアを交えて会場を沸かせた。スピーチの冒頭では、「公私共に支えてくれるカミさんの尽力がなければ間違いなく取れなかった」と最優先で妻への感謝を述べた。
年間600席もの高座をこなす多忙な日々を送る伯山氏だが、自身が理想とする父親像として、師匠であり人間国宝の神田 松鯉氏の存在を挙げた。「技量も抜群で本物の人格者。私にとってのベスト・ファーザーであり、師匠の背中があったからこそこの賞をいただけた」と敬意を表した。
また、小学生の実子の父親であると同時に、4人の弟子を預かる身でもある伯山氏。「芸界の上では私が親。これからビッグダディのようになっていくかもしれないが、一人一人に愛情を持って接したい」と語る。
弟子や子供を育てる上で最も大切にしているのは「決して他者と比べないこと」。「師匠にできることは、その子の良いところを見つけて褒めることだけ。ダメなところはしっかり怒る。この繰り返しで、個性を伸ばしていきたい」と、指導者としての深い愛情を滲ませた。さらに、明日6月4日に43歳の誕生日を迎えるにあたり、自身の父親が42歳で急逝したという過去を明かした。
神田氏「自分が10歳の時に父が42歳で亡くなり、親類からも『お父さんより長生きしてね』と言われてきました。自分も同じ年齢になり、子供が小さい中で逝った父の無念を強く感じています。自分も42歳で死んでしまうのではないかという思いがどこかにありましたが、この記念すべき賞をいただき、明日、父の年齢を1つ超えて43歳になれる。これほどの幸せはありません。大変な励みになりました。」
▲弟子も育児も「決して他者と比べないこと」を大切にしていると語る、講談師の神田 伯山氏。
【芸能部門】吉田 鋼太郎氏(俳優)「紫綬褒章に続く栄誉、10日間のワンオペで知った『母親の偉大さ』」
芸能部門で受賞した俳優の吉田 鋼太郎氏は、2026年春の紫綬褒章に続くダブルの受章となった。「内定をいただいた時期がほぼ同じで、自分の耳を疑った。僕でいいんですかという気持ち」と恐縮しながらも、喜びを語った。現在は舞台『リア王』の主演・演出を務め、膨大なセリフとエネルギッシュな応酬に「毎日ヘトヘト」になりながらも充実した日々を送っている。
現在65歳の吉田氏は、今回の受賞者の中で最年長。一方で、子供は5歳と1歳の娘であり、「ベスト・ファーザーではなくベスト・グランドファーザー賞なのでは」と自虐を交えつつも、家事と名の付くものはほぼすべて自ら行うほどの徹底した子育てぶりを披露した。
かつて上の娘が夜寝る時にママを選んだ悔しさから、1歳の次女には同じ轍を踏むまいと猛アプローチを決意。生後6〜7カ月の頃に、母親の元を離れて別荘で10日間のワンオペ育児に挑戦した。吉田氏は当時の経験を「地獄のようで、ノイローゼになりそうだった。母親の大変さが身に染みて分かった」と客観的に振り返る。しかしその甲斐あって、現在は次女が一緒に寝てくれるようになり、「非常にやりがいがあった」と目尻を下げた。
最後に、自身が演じる『リア王』の「父親の家長的な価値観が招く悲劇」を引用し、これからの父親像を語った。「父親が一番偉いという時代はもう終わった。歳をとると頑なになりがちだが、そうならずに、子供たちの言葉にしっかりと耳を傾け、ずっとコミュニケーションを続けていける柔軟な父親でありたい」と結んだ。
▲別荘での凄絶な10日間の「ワンオペ育児」体験を吐露した、俳優の吉田 鋼太郎氏。
【芸能部門】澤部 佑氏(芸人)「相方の言葉で人間に戻った。番組の理解が生んだ『入学式遅刻出席』の裏側」
同じく芸能部門で受賞したハライチの澤部 佑氏は、かつて昼の帯番組『ぽかぽか』で「ベスト・ファーザー賞への道」という企画を立ち上げるも、バラエティ的には盛り上がらず4回で打ち切られた過去を告白。「今回の受賞にはあんまり関係なかった」と自虐し、会場の笑いを誘った。
かつてはテレビやラジオで「好感度が欲しい、賞をよこせ」と貪欲に叫び、一時期は「人間の目をしていなかった」と振り返る澤部氏。しかし、相方の岩井 勇気氏から「子供にベスト・ファーザーと思われていれば、賞なんて貰わなくてもいいだろ」と諭されたことでハッと人間に戻り、結果として今回の受賞に繋がったという。
専業主婦として3人の子供を支える妻への感謝を熱弁する澤部氏は、自身の「純愛」な家庭生活についても明かした。
澤部氏「結婚して子供が生まれても、妻に対する感覚が全く変わらないんです。小・中学生の頃に好きな子と喋って『今日何秒目が合った』と興奮して家に帰っていた、あのテンションのまま。今でも家に帰ると『あのお気に入りの好きな人が待っているんだ』とドキドキしながら帰っています。」
また、子供の入学式に出席するため、レギュラーの生放送番組側に相談したところ、スタッフから快諾を得て出席が実現。入学式を見届けた後、スーツ姿のまま生放送へ遅刻して飛び込んだエピソードを語り、「テレビ界は古いと思われがちだが、時代は変わってきている。その変化の一端を担えれば」と真摯に語った。なお、受賞については「恥ずかしさと、大したことやってないだろと言われる恐怖」から、家族にはまだ伝えておらず、これからトロフィーをサブリミナル的に横に置いて少しずつ気づかせていきたいと語り、会場を和ませた。
▲レギュラー番組を休んで子供の入学式へ出席した体験を「テレビも変わってきた」と語る芸人・ハライチの澤部 佑氏。
【スポーツ部門】福澤 達哉氏(バレーボール元日本代表)「引退後に消えたありがたみ。娘に自分の道を切り開かせる背中の支え方」
スポーツ部門で受賞したのは、4人の娘を持つバレーボール元日本代表の福澤 達哉氏。2011年に長女が誕生して以来、父親として報道や記事を意識してきた福澤氏は、「自分がふさわしいのか見つめ直したが、まだまだ勉強不足。この賞は『しっかり子供と向き合っていきなさい』と背中を押してもらったもの」と語った。
アスリート時代の福澤氏は、日本代表活動や遠征、さらに2度の海外挑戦(ブラジル・フランス)などで、年間を通じて家族と過ごせる時間は3カ月ほどしかなかった。当時は帰宅すると「パパフィーバー」が起き、一緒に寝るための取り合いになっていたという。しかし、5年前に現役を引退し、在宅ワークが増えて常に家にいるようになると、娘たちからの「ありがたみ」が消滅。今や目もくれずベッドへ直行される日常に寂しさを感じており、「この賞でパパの威厳を取り戻したい」と言う。
多忙を極めた現役時代、ブラジル遠征の際には妻がサプライズで「長女の描いた絵をプリントしたTシャツ」を持たせてくれた。福澤氏は「日本では恥ずかしいが、ブラジルなので毎日着て練り歩いた」と振り返る。また、四女が生まれた年にフランスへ渡った際も、妻が4人の子供をワンオペで育てながらオリンピックへの挑戦を支えてくれた。伯山氏や澤部氏同様、「妻の支えがあってこその賞」と感謝を繰り返した。
子どもの未来に対しては、「親が先回りして道を作るのではなく、自分で道を決めて切り開く覚悟と責任を持ってほしい。それがチャレンジの質を高めることを、私は実体験で知っている。親はそのそばにいて、何かあった時に背中を支える存在でありたい」と、アスリートならではの自立心を重視する教育論を語った。
▲「妻の支えがあってこその賞」と語る、バレーボール元日本代表の福澤 達哉氏。
特別賞・スマイルひまわり賞:世界的人気キャラクターの登壇と、澤部氏のW受賞
【特別賞】黄色い帽子のおじさん(『おさるのジョージ』)
特別賞には、今年で絵本出版85周年、NHK Eテレのアニメ放送19年目を迎える『おさるのジョージ』より、ジョージの保護者であり一番の友だちでもある「黄色い帽子のおじさん」が選出された。会場には、おじさんの設定身長である192センチの長身のモデルがおじさんの衣装を身にまとって登場。お祝いに駆けつけたおさるのジョージと共に壇上へ上がった。
作中のおじさんは、寝る時も車もすべてが黄色。ジョージに負けない好奇心で絵画やスポーツ、歌に挑戦し、ジョージが起こす数々のトラブルにも決して怒らず、対話を通じて見守る姿勢が「理想の父親像」として近年、子育て世代からカリスマ的な注目を集めている。
声優を務める原 康義氏からも、「ジョージの好奇心を見守って育む姿勢を評価していただき感謝します。ぜひテレビやYouTubeでたくさんのエピソードをご覧いただければ」と祝福のボイスメッセージが寄せられた。
▲ジョージを温かく見守る姿勢が評価された、「おさるのジョージ」の黄色いおじさん。
【スマイルひまわり賞】澤部 佑氏がダブル受賞
授賞式の終盤には、太陽のように明るく元気に咲くひまわりの姿を象徴し、輝く笑顔を持つお父さんに贈られる「スマイルひまわり賞」の発表が行われた。プレゼンターであるタキイ種苗株式会社の代表取締役社長・川瀬 貴晴氏より名前を呼ばれたのは、本日二度目の登壇となるハライチの澤部 佑氏。
驚きのダブル受賞となった澤部氏は、「こんなに嬉しい賞はない。笑顔の絶えない家庭は常に心掛けている。どんなにつらい仕事の時も、テレビで無理やり笑ってきた甲斐があった。全てが報われた気がします!」とユーモアたっぷりに叫び、会場は大きな拍手に包まれた。
▲尽きることのないユーモアで会場を沸かせた、W受賞のハライチ・澤部 佑氏。
おわりに
式の最後には、江崎グリコ株式会社の乳幼児事業部マーケティング部よりグループ長の若生 みず穂氏とサントリー株式会社の執行役員でマーケティング本部 副本部長の塚原 大輔氏が登壇。副賞として、家族全員で楽しめる人気商品の詰め合わせ「セレクション・ザ・グリコ」「ザ・プレミアム・モルツ父の日ごほうびセット」が受賞者全員に贈呈された。
2026年のベスト・ファーザー賞は、ワンオペ育児への深い理解、夫婦を「チーム」として捉える視点、そして子供の個性を尊重して「比べない」姿勢など、父親たちの意識がより現代的に、そしてパートナーへのリスペクトに満ちたものへ変化していることを強く印象付けるものとなった。家族の在り方が多様化する現代だからこそ、彼らの言葉は多くのビジネスパーソンにとっても、ワークライフバランスや人間関係を築く上での深いヒントになるはずだ。
ベスト・ファーザー イエローリボン賞を主催するMFU理事長 八木原 保氏の半生を綴った連載記事「原石からダイヤへ」はこちら


