「どうやってお客様を喜ばせ、驚かせようか」——伊...
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「道徳銀行」が描く地域の未来。埼玉りそな銀行・篠藤社長が語る、地域社会の未来を創る“ハブ”としての使命と、AI時代の「人にしかできない価値」
ビジョナリー編集部 2026/09/25
過去の危機が教えた「社会とのつながり」と「多様な視点」
篠藤社長はこれまでのキャリアで幅広い経験を積まれてきたと思います。現在の経営観やリーダーシップの礎となったエピソードについてお聞かせください。
私のキャリアにおいて強烈に記憶に残っているのは、30代の時に経験した2つの大きな出来事です。一つはマーケット部門に在籍していた2001年のアメリカ同時多発テロ(9.11)、もう一つは企画部門で直面した2003年の「りそなショック」です。
9.11の夜、私は職場で飛行機がビルに激突する映像をリアルタイムで見ていました。世界がつながればつながるほど、リスクもまた瞬時に伝播するという現実を目の当たりにし、誰かが守ってくれる安全などなく、自分たちの安全やビジネスの持続性は、自ら守らなければならない と強く認識しました。また、単一の見方や論理では物事を見誤るため、多様性を理解し、異なる立場や背景を踏まえて判断する力が重要になることも痛感しました。
その後の「りそなショック」では、公的資金完済までの12年間、経営企画や財務企画の最前線で返済に向けた業務を中心となって担いました。給与はカット、深夜まで働くことも多かったのですが、辛いと思ったことはありませんでした。それよりも、普通の会社員では経験できない責任ある仕事へのやりがい、 何より、自分の仕事が会社の再生と社会への恩返しにつながっている 実感がありました。自分と会社と社会が一本の線でつながっていると感じられたのです。この経験を通じて、身についたのが、会社の利益だけでなく、お客さまや社会にとっての利益という観点で物事を見る姿勢です。その観点を持ったことが、渋沢栄一翁の「道徳経済合一」の理念への深い共感につながりました。
「道徳銀行」の理念を胸に。埼玉県全体の未来を考える“ハブ”への進化
埼玉の未来を支えるという使命を持つ貴社において、経営者として舵取りを担うお立場になられた際、ご自身の視点がアップデートされたと感じる転換点はありましたか。
そうですね、やはり社長に就任したことは大きな転換点でした。一企業や一業界の枠組みを超え、埼玉県の皆さまとともに地域の未来をどう創っていくのか という視点で物事を考えるようになりました。
現在、地域社会は少子高齢化や人手不足をはじめ、多くの課題を抱えています。そうした中で強く感じているのは、 「地域金融機関の発展は、地域社会の発展があってこそ」 ということです。地域産業の成長や次世代の担い手育成など、地域の持続的な発展を支えることが、私たちの重要な役割だと考えています。
その根底にあるのが、当社のルーツである「道徳銀行」です。渋沢栄一翁が唱えた「道徳経済合一」の理念は当社のアイデンティティそのものであり、社会やお客さまにとって何が正しいのかを考え、その判断を積み重ねることが、結果として銀行の持続的な成長につながると考えています。りそなショックの反省も踏まえ、私たちは銀行の利益を目的にするのではなく、お客さまや地域の持続的な発展に貢献することを使命としています。
当社には、企業だけでなく自治体、学校、医療機関など、地域との幅広いネットワークがあります。このネットワークを生かして人や企業、地域をつなぐ「ハブ」となり、地域課題の解決や新たな価値の創出に取り組んでいます。 地域の発展とともに当社も成長する。その好循環を生み出すことが、私たちの目指す姿です。
答えを決めて提案しない。時代が変わっても変えてはいけない「伴走する姿勢」
地域経済を取り巻く環境が激変する中で、時代に合わせて変革していくべきものと、絶対に変えてはならないものは何だとお考えでしょうか。
変えていくべきものは、「道徳銀行を実践するための手段ややり方」です。渋沢栄一翁がこの理念を唱えた時代と現在では、お客さまのこまりごとも社会課題も、競争環境も全く異なります。だからこそ私たちは「未来志向の道徳銀行」をコンセプトに掲げ、不屈の理念を守りながら、その実践方法は時代に合わせて進化させ続けていかなければならないと考えています。
一方で、絶対に変えてはならないのは、「お客さまや地域社会の利益を第一に正しいことを追求する」という根本の姿勢です。私は従業員によく、 「答えを決めて提案に行くな」 と伝えています。商品を売り込む前に、まずはお客さまに話を聞く。「何に困っていますか?一緒に考えさせてください」この姿勢が従業員の行動の原点です。
変化の激しい今の時代、お客さま毎にこまりごとは異なり、しかも猛烈なスピードで変化します。だからこそ、私たちは答えを決めて提案するのではなく、まずはしっかりと話を聞き、お客さまが本当に求めていることを理解することを大切にしています。期待とのズレがあれば共感は生まれず、共感がなければ信頼にもつながりません。お客さまに寄り添い、解決まで伴走することで信頼を積み重ねていく。 この考え方は、どんなに時代が変わっても決して変わることはありません。
AI時代だからこそ高まる、人にしか生み出せない「寄り添う付加価値」
生成AIなどのテクノロジー活用が進む中、現場で生まれるお客さまへの提案や接点のあり方はどう変わっていくとお考えですか。
AIが進化すればするほど、「人にしかできない価値」はむしろ高まっていく と考えています。情報処理や分析、事務などの領域はAIで効率化し、従業員がより深くお客さまのこまりごとに向き合える時間を確保します。
AIを活用して情報を集約し、最適な選択肢を素早く提示することで、提案のスピードと質は確実に向上していくでしょう。しかし、その選択肢の中からお客さまにとって本当に最適な答えを見出すためには、お客さまの背景や価値観を理解し、お客さま自身も気づいていない潜在的なこまりごとまで理解し言語化する 必要があります。そこは人にしかできない領域です。
また、お客さまに寄り添いながら信頼関係を築き、ともに課題解決に取り組んでいくこともAIには代替できません。商品や情報ではなく、お客さまを深く理解し、信頼関係を築きながら課題解決に伴走する。それが私たちの付加価値であり、AI時代だからこそ、その重要性はさらに高まっていくと考えています。
地域のこまりごとを解決するためのエコシステムづくり
貴社は資金支援にとどまらず、事業承継やDX支援、環境問題、次世代支援など多岐にわたる活動を牽引されています。どのような思いでこうした取り組みを進めているのでしょうか。
金融の相談というのは、お金を貸すことだけで終わるものではありません。法人であれば事業全般、個人であれば暮らし全般の話につながります。例えば、埼玉県の中堅・中小企業は高い技術力を持つ一方、人材不足や事業承継など、次の成長に向けた課題を抱えています。企業がその壁を越えるためには、資金だけでなく、改革を担う人材や事業者同士の連携、支援機関の協力など、多角的な後押しが必要です。
私たちは単に金融サービスを提供する銀行ではなく、地域やお客さまの未来に責任を持つ存在でありたいと考えています。地域企業の成長支援や空き家問題への対応、次世代を担う子どもたちへの支援など、これまで進めてきた取り組みは地域の持続性を高める基盤づくりそのものです。
地域には企業、自治体、学校、医療機関など、多様な担い手がいます。私たちはそれらを結びつけ、地域全体で課題解決や価値創造に取り組む環境をつくっていきたい。そのために、銀行という枠を超え、地域のエコシステムを支える存在でありたいと考えています。
失敗を恐れず、やり切る。次世代の地域金融を担う「主体的なリーダー」の育て方
組織を率いる上で、次世代の地域金融を担うリーダーを育てるために意識的に取り組まれていることはありますか。
私が今、一番大きな課題だと感じているのは、環境変化を前にして、 「従業員一人ひとりが自分で考え、自分で決め、自分で行動できる組織になれているかどうか」 です。お客さまの期待も社会課題も常に変わり続けています。受け身や指示待ちの姿勢では、多様で変化するこまりごとに応えることはできません。自らお客さまのこまりごとを聞き、仮説を立てて行動し、違っていたら修正する。画一的な正解がない時代には、こうした「主体性と挑戦」が不可欠です。
私は、人は機会によって育つものだと考えています。役割を持ち、自ら判断し、責任を持ってやり切る、その経験の積み重ねが、人を成長させます。だからこそ、次世代のリーダーには、答えのない課題に向き合い、自ら考え、挑戦する機会を積極的に与えていかなければなりません。
一方で、今のリーダー層はデフレ時代に育ったこともあり、失敗を避けることを重視しがちな面があります。しかし、これからは変化を前提に未来へ投資し、挑戦していく時代です。上司に求められるのは、失敗をさせないことではなく、挑戦を後押しすることです。もちろん致命傷にならないよう支える必要はありますが、挑戦なくして成長はありません。失敗は成功の反対ではなく、成功に至るまでのプロセスの一つに過ぎないのです。
地域のこまりごとに真っ先に相談される、選ばれ続ける銀行へ
最後に、5年後、10年後の埼玉りそな銀行の姿と、これから地域で挑戦を続ける若い世代やビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。
私が就任時に従業員に伝えたのは、 「地域から最も必要とされ、選ばれ続ける道徳銀行」 になろうということです。その姿は、単に預金や貸出だけを扱う銀行ではなく、事業承継から人材不足まで、困ったときに「まずは埼玉りそなに相談してみよう」と思っていただける存在でありたいと思っています。
若い世代の皆さまには、 「自分の可能性を自分で決めないでほしい」 と伝えたいです。正解のない時代だからこそ、自分で考え、判断し、行動することが大切です。挑戦とは特別なことではなく、昨日よりもう一歩踏み込んで行動することだと思います。
挑戦した経験は必ず自分の財産になります。私は、挑戦しないことの方が大きな損失だと思っています。一人ひとりの主体的な挑戦が、会社を変え、地域を変え、未来を変えていく。私はそう信じています。


