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TIME誌が選んだ「AI時代の設計者たち」――8人の決断が社会を変えた
ビジョナリー編集部 2026/01/16
2025年、米TIME誌が「Person of the Year」に選んだのは、AI革命の最前線で、技術と社会の境界を塗り替えた「設計者たち」(AIの方向性・構造・条件を決めてきた人)でした。その顔ぶれは、まさに新時代の象徴と言えるでしょう。
Metaのマーク・ザッカーバーグ氏、AMDのリサ・スー氏、xAIを率いるイーロン・マスク氏、NVIDIAのジェンスン・フアン氏、OpenAIのサム・アルトマン氏、Google DeepMindのデミス・ハサビス氏、Anthropicのダリオ・アモデイ氏、そしてスタンフォード大学教授でWorld Labs創業者のフェイフェイ・リー氏。彼ら8人が並ぶTIME誌の表紙は、AIがテクノロジーの話題を超え、現代社会の「基盤」となったことを物語っています。
彼らはどのような人物で、どのような軌跡をたどってきたのでしょうか。本稿では、AI時代を象徴する8人の設計者たちの人物像と、その歩みをたどります。
転換点となった2025年
まず押さえておきたいのは、2025年がAIにとってどのような年だったのかという点です。医療、科学、エンターテインメント、教育、そして日常生活。AIはありとあらゆる場面に浸透し、もはや「使うか使わないか」を選ぶ余地がなくなりつつあります。
たとえば、医療研究ではAIが新薬候補の発見や画像診断を加速させ、ソフトウェア開発やクリエイティブ分野でも「AIによる自動生成」が日常になりました。多くの企業が業務効率化やビジネスモデルの変革にAIを導入しなければ、競争に取り残されてしまう――そんな「全産業AI時代」への転換点が、まさに2025年だったのです。
その裏で、AIを支える巨大なデータセンターが続々と建設され、エネルギー消費や雇用構造の変化、誤情報・サイバーリスクへの懸念も現実味を帯びています。「技術」だけでなく、「経済」や「政治」までも巻き込むAIの波。その中心にいるのが、今回TIME誌に選ばれた8人です。
1. マーク・ザッカーバーグ氏(Meta CEO)
あなたが毎日使うSNS。その裏側で、AIがどれほど活躍しているかご存じでしょうか? Metaのマーク・ザッカーバーグ氏は、Facebook、Instagram、WhatsAppといったサービスにAIを深く融合させ、チャットボットや画像・動画生成ツールを一般ユーザーに解放しました。
2025年には「Meta Superintelligence Labs」を立ち上げ、AI研究への巨額投資を敢行。AI人材獲得競争では、時にプロスポーツ選手を凌ぐ待遇でエンジニアを引き寄せていると言われています。その結果、Metaはスマホアプリにとどまらず、メタバースやVR、生成AI分野でも存在感を高め、「AIの民主化」を体現する企業へと進化しました。
ザッカーバーグ氏の特徴は、技術トレンドをいち早く見抜き、果敢に経営を舵取りする決断力です。AIを単なる研究開発にとどめず、「誰もが使える日常の道具」にした功績は、2025年のAIブームを語る上で欠かせません。
2. リサ・スー氏(AMD CEO)
最先端のAIは、膨大な計算資源なくして成立しません。ここで重要な役割を果たすのが、AMD(アメリカを代表する半導体メーカー)のリサ・スー氏です。AI向け半導体――特に高性能CPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理装置)――の開発を先導し、NVIDIA(アメリカに本社を置く半導体メーカーで、特にAI(人工知能)を動かすための計算装置を提供している企業)と並ぶ「AIインフラの双璧」として業界を牽引してきました。
近年、NVIDIAが圧倒的な優位性を持つといわれたAIチップ市場に、AMDが強力な新製品を投入。これにより、データセンターやクラウドサービスが多様化し、AI研究の裾野が一気に広がりました。スー氏のリーダーシップは、単なる製品開発にとどまらず、「AI時代の基盤を誰もが利用できる環境」作りに大きく貢献しています。
2025年は、AMDのAI向けチップが企業や研究機関で急速に採用され、AIの社会実装を加速させた年でもありました。スー氏の着実かつ革新的な経営手腕が、AI産業の“裏方”として世界を支えているのです。
3. イーロン・マスク氏(xAI創業者)
イーロン・マスク氏の名前を聞いて、「電気自動車」「宇宙開発」「SNS買収」などを思い浮かべる方も多いでしょう。実はAI分野でも、彼の存在感は圧倒的です。
AI企業「xAI」を創業し、独自のAIモデルや巨大データセンター構築を進める一方で、AIの潜在的リスクにも言及。自ら「AI規制」や「安全性」の議論を牽引し、技術推進と社会的責任のバランスを問う発言で常に注目を集めています。
2025年には、xAIの新モデルが業界の話題をさらい、他社との競争を激化させました。その一方で、AIの倫理やガバナンスを巡る議論でも、世論や政策形成に影響を及ぼしています。マスク氏の存在は、AIの「光」と「影」両方を浮き彫りにする、まさに現代の異端児といえるでしょう。
4. ジェンスン・フアン氏(NVIDIA CEO)
AIブームの最大の功労者は誰か。そう問われれば、多くの専門家がNVIDIAのジェンスン・フアン氏の名前を挙げるはずです。彼の率いるNVIDIAは、AI向けGPUで世界を席巻し、2025年には時価総額5兆ドルを突破するなど、企業価値でも歴史的な快挙を達成しました。
元々はゲーム向けグラフィックスチップの会社だったNVIDIAを、「AI計算基盤の標準」へと変貌させたのがフアン氏のビジョンとリーダーシップです。AIモデルの学習・推論にはNVIDIAのチップが不可欠となり、同社の製品は「現代の産業インフラ」とも言える存在に。
フアン氏は「AIはあらゆる産業を変える最もインパクトのある技術」と語り、その言葉通り、NVIDIAを“AI時代の中枢”に押し上げました。アメリカ政府や各国との交渉、地政学リスクへの対応など、単なる技術企業の枠を超えた存在感を放っています。
5. サム・アルトマン氏(OpenAI CEO)
「ChatGPT」という言葉が、世界中で日常語になった背景には、OpenAIを率いるサム・アルトマン氏の存在があります。彼は、生成AIの象徴的サービスを世に送り出し、AIの言語理解・生成能力を社会の隅々にまで浸透させました。
OpenAIは2019年、投資家のリターンには上限を設ける制度を導入しましたが、2025年に資本戦略を大胆に見直しました。投資家への利益制限を撤廃したことにより、さらなる巨額投資を呼び込み、AI研究と社会実装の加速に道を開きました。アルトマン氏の経営手腕は、単なる「テック系スタートアップの成功」にとどまらず、AIを「社会インフラ」にまで押し上げた点で画期的です。
一方で、AIの社会的リスクや倫理課題にも真摯に向き合い、「責任あるAI開発」の重要性を強調。AIがもたらす恩恵とリスクのバランスを常に問い続ける姿勢が、多くの支持を集めています。
6. デミス・ハサビス氏(Google DeepMind CEO)
囲碁AI「AlphaGo」で世界に衝撃を与えたGoogle DeepMind。その創業者でありCEOのデミス・ハサビス氏は、AIの基礎理論と応用研究の両面で常に時代をリードしてきました。
強化学習や推論アルゴリズム、汎用人工知能(AGI)への挑戦――ハサビス氏が率いるチームは、AIが単なる「道具」から「知能」へと進化する道筋を描いています。2025年には、Google検索や各種サービスにAIを深く統合し、日常生活の中で「AIが考え、提案する」体験を実現しました。
「AIのリスクは依然として無視できない」と冷静に語るハサビス氏。その一方で、「AIが人類にもたらす恩恵は計り知れない」との信念を持ち、創造的かつ責任ある研究開発を続けています。AIが未知の領域へ踏み出すとき、ハサビス氏のような「知性の設計者」の視点が不可欠です。
7. ダリオ・アモデイ氏(Anthropic CEO)
2025年、AIの社会実装が急速に進む一方で、「AIは本当に安全なのか?」という不安も高まりました。こうした中、Anthropicのダリオ・アモデイ氏は「AIの安全設計」に徹底的にこだわる姿勢で業界をリードしています。
アモデイ氏は、AIモデルの暴走や誤作動、社会的悪影響を最小限に抑えるためのガイドライン策定や倫理基準づくりに注力。Anthropicのエンジニアは、AI自身にプログラムを生成させる「自己進化型AI」開発にも取り組み、モデルの透明性や説明性を高めています。
AIによる雇用の変化や、情報の拡散リスクについても積極的に発信し、「AIが社会に与えるインパクト」をリアルに伝え続けています。アモデイ氏の存在は、「技術の暴走を防ぐ防波堤」として、今後ますます重要になるはずです。
8. フェイフェイ・リー氏(スタンフォード大学教授/World Labs CEO)
AIの進化は、学術研究と産業界の両輪で成り立っています。スタンフォード大学教授であり、World Labsを創業したフェイフェイ・リー氏は、長年コンピュータビジョン分野での先駆的業績を挙げてきた研究者です。
彼女が主導した「ImageNetプロジェクト」(AIが「画像を見て理解する」ための基礎を築いた、世界的に重要な研究プロジェクト)は、現代AIの基礎となる大規模画像データセットを構築し、ディープラーニングが“理論や実験段階”から“実用技術”へ一気に飛躍する決定的な環境を整えました。2025年には、自身のスタートアップを通じて「空間知能(Spatial Intelligence)」の実用化にも挑戦。ロボティクスや自律移動分野でのAI活用を推進し、産業界と学術界をつなぐ橋渡し役を果たしています。
また、女性・マイノリティの活躍推進や、AI教育の普及活動にも尽力し、多様性と包摂性を重視する姿勢は、多くの若手研究者や学生に刺激を与えています。
AI設計者たちが示した「選択」の重み
TIME誌が8人を「横一列」に並べて表紙に描いたのは、「AIの進化が一人の天才や一社の成果ではなく、複数の層にわたる設計判断と意思決定の積み重ねで生まれている」ことを象徴しています。
AIモデルの開発、計算インフラの構築、基礎理論の研究、倫理・安全性の設計、そして社会実装――それぞれの領域で彼らが下してきた「選択」の積み重ねが、今のAI時代を形作っているのです。
たとえば、巨大データセンターの建設ラッシュが経済を下支えする一方で、電力消費や環境負荷への懸念も拡大。AIによる雇用の変化や、誤情報・心理的影響といった社会課題も無視できません。2025年は、AIが「実験段階」を超え、「社会インフラ」として機能し始めた年――その中心にいたのが、彼ら「設計者」たちだったのです。
AIの未来は「人間の選択」に委ねられている
今回TIME誌が「The Architects of AI」を今年の顔に選出した背景には、「AI時代の行方を左右するのは、技術そのものではなく、それを設計し、運用し、社会に組み込む人間である」という強いメッセージがあります。
AIは、もはや一部の専門家だけの話題ではありません。私たち一人ひとりの暮らし、働き方、学び方、さらには社会のルールや価値観までも変えつつあります。その時、リーダーたちがどんな「選択」を下し、どんな「責任」を果たすのか――それが未来を大きく左右するのです。
私たちは今、どのようなAIを社会に組み込み、どこまでAIに委ねるのか。その問いに正面から向き合うべき時代に突入しました。TIME誌の表紙に並んだ8人の設計者たちは、その「選択」の最前線にいるのです。


