
任天堂の進化に学ぶ、時代を超えるビジネスの極意
7/23(水)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/07/22
「任天堂法務部は最強である」
このフレーズはゲーム業界に限らず、度々話題に上ります。なぜ「最強」と称されるのでしょうか。その背景には、数々の裁判事例と、徹底した準備・戦略が隠されています。
本記事では、任天堂の法務の実績を紐解きながら、そこからビジネスマンが学ぶべき「守る力」と「攻める知恵」について一緒に考えていきたいと思います。
「任天堂」と聞けば、マリオやポケモン、ゼルダの伝説…。世界中の誰もが知る、数々の名作を生み出してきた企業です。しかし、その輝かしい実績を「陰で支えている存在」があります。
それが、知的財産戦略を担う法務です。同社の法的リスク管理を担う専門チームは、世界レベルの訴訟を、次々と制してきました。
1980年代初頭、アメリカの大手映画会社ユニバーサル・シティ・スタジオが、「ドンキーコング」が自社の「キングコング」の権利を侵害していると主張し、任天堂を提訴しました。ところが、任天堂は徹底した調査と準備で、
などを証明し、見事に勝訴。むしろユニバーサル側が多額の賠償金を支払う事態となりました。この一件が、「任天堂法務部最強伝説」の幕開けとなります。
違法コピーを可能にする装置「マジコン」の業者を相手取り、任天堂は日本国内での販売差し止めと損害賠償を勝ち取りました。
「違法行為は絶対に見逃さない」という強い姿勢が、ゲーム業界の健全化にも大きく貢献しています。
公道カートで任天堂のキャラクターコスチュームを貸し出す事業者に対し、任天堂は不正競争防止法違反などで訴訟。結果、営業差し止めと5,000万円の損害賠償を認めさせました。
ブランドの世界観を損なう行為には、徹底抗戦。イメージ維持へのこだわりが際立つ事例です。
任天堂が、「白猫プロジェクト」を販売するコロプラに対して、画面操作などの特許を侵害しているとして提訴しました。裁判の前から、任天堂はコロプラに対して特許侵害の指摘をしていましたが、コロプラに受け入れられず裁判に踏み切ったようです。
任天堂は提訴する1ヶ月前に、権利に穴が無いように、特許の内容を訂正して臨んでいました。結果として、コロプラが任天堂に33億円の和解金を支払うという事で決着となりました。
2024年には、ポケットペア社の大ヒットゲーム『パルワールド』が「ポケモン」と酷似していると話題に。任天堂・ポケモン側は、発売後に特許を早期取得し、特許権侵害で訴訟に踏み切りました。ここで注目すべきは、
という、「守り」と「攻め」を同時に実現する高度な知財戦略です。
裁判資料を紐解くと、「用意周到」という言葉が相応しい、徹底した調査や準備をする体制が見て取れます。
たとえば、コロプラ裁判では「相手製品を徹底分析し、特許の権利範囲を事前に補正し、想定されるあらゆる"抜け道"を封じることで、勝てる状況を作ってから訴訟に臨む」ことで姿勢勝利しています。
訴訟だけでなく、和解や損害賠償請求額の設定も、相手の経営状況や業界の動きを見極めて決定。「払えるギリギリのライン」を狙い、相手に現実的かつ大きなプレッシャーをかける巧みさも光ります。
日本国内だけでなく、アメリカをはじめとする海外の裁判でも、臆することなく一歩も引かずに戦っています。世界レベルの知財・法務戦略が、グローバル企業としての信頼と地位を築き上げているのです。
どんなに小さな侵害でも見逃さず、例外を作らない姿勢。
「一度でも妥協したら、次から次へと権利侵害が起きる」
その危機感が、社内に徹底されていることが伺えます。
任天堂の事例から、ビジネスパーソンとしてどんな教訓を得られるでしょうか?
任天堂の法務部が「最強」と呼ばれる真の理由は、**「圧倒的な準備」「徹底した分析」「どこまでもブレない意志」**にあります。
これは法務部門の話だけではなく、どのような業界・職種にも通じるビジネスの本質です。
この3つを意識するだけで、あなたのビジネスも「最強」に近づくはずです。