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共同生活で人を磨く。早稲田大学 国際学生寮WISHが挑む「寮生活」という教育の形
ビジョナリー編集部 2026/01/28
「住まい」から「成長の場」へ。早稲田大学の国際学生寮「WISH」が仕掛ける、次世代リーダー育成の全貌
かつて日本の大学寮といえば、遠方の学生に安価で安全な住居を提供する「福利厚生」としての側面が強かった。しかし昨今、その役割が劇的に変化しているという。正課教育だけでは補完しきれない「非認知能力」や「グローバルな視点」を養う場として、寮の教育機能が注目を集めているのだ。
こうした潮流の中、早稲田大学は2014年、グローバルリーダー育成の拠点として早稲田大学国際学生寮「Waseda International Student House(WISH)」を東京都中野区に開設した。定員872名を誇り、寮生は日本人と留学生が混在する原則4人1組のユニットで生活を送る。大学が直営し、学部1年次から2年間の入寮を原則とするこの仕組みには、教育への強いこだわりがうかがえる。
※WISHで活躍する学生リーダー(RA)ら
他大学でも同様の理念を掲げる寮が増える中、なぜWISHは際立った存在感を放っているのか。その背景には、大きく3つの柱があるようだ。
①生活そのものを「学び」に変える空間設計
WISHの最大の特徴は、偶発的な交流が生まれやすい空間設計にあるという。 まず目を引くのが、ユニット制の導入だ。日本人学生と留学生が混在し、個室を持ちながらもリビングを共用する。このリビングの廊下側の壁が全面ガラス張りになっている点がユニークだ。誰かの誕生日を祝っていれば廊下からすぐに気づいて参加でき、勉強している姿に触発されて仲間が集まる。こうした「気配」を感じる設計が、自然な交流を誘発している。
また、各フロアに一つ設けられた大型のコミュニティキッチンも、重要なコミュニケーションの拠点となっている。各国の料理を披露し合ったり、故郷の味を共有したりと、食を通じた異文化理解が日々繰り広げられているのだ。
※キッチンでの交流の様子
こうした日常には、単なる親睦以上の学びがある。例えば、ユニット内での騒音トラブルが発生した際、言語や文化の壁が問題を複雑にすることもある。自分の「当たり前」が通用しない環境で、どう円滑に対話を進めるか。寮生たちは日々、こうした実社会に通じる課題に直面しているのだ。
語学学習においても、教科書にはない「生きた学び」があるという。日本人学生が第二外国語をネイティブの留学生と練習し、逆に留学生が日本人学生から最新のスラングを教わる。笑顔の絶えない相互学習こそが、WISHの日常的な風景となっている。
②寮生の成長を支える伴走者「Resident Assistant」
寮内のコミュニティと学びを支えるエンジンとなっているのが、Resident Assistant(RA)と呼ばれる学生リーダーの存在だ。米国などでは長い歴史を持つこの仕組みだが、WISHでは「寮生の”まなび”に貢献する」というミッションを掲げ、現在32名(2026年1月時点)が活動している。
RAは寮生と同じ目線で生活する学生であり、大学職員や外部関係者と連携しながら、入寮初日の案内からイベント企画、広報まで幅広く担っているという。
特筆すべきは、交流機会の創出に対する熱量だ。入寮直後のウェルカムイベントや生活セミナー、さらには200名規模のBBQや、ハロウィン、クリスマスといった季節イベントをRAが主体となって企画している。
※ハロウィンイベントの様子
さらに、新入寮生への1対1の面談も実施。大学生活のコツからホームシックの悩みまで、精神面での支えとなっている。WISHにおける学びの基盤は、こうしたRAによるきめ細やかなサポートによって維持されていると言えるだろう。
③実践的な知性を養う「Social Intelligenceプログラム」
WISHが「教育寮」たる所以を象徴するのが、独自の教育カリキュラム「Social Intelligenceプログラム(SIプログラム)」だ。授業期間中の平日夜、週3〜4回開催されるこの講座は、多様な社会的文脈に対応できる能力(Social Intelligence)の育成を目的としている。
※SIプログラムの様子
講座の内容は、有名企業の重役によるキャリアセミナーから、専門講師による実践的なコミュニケーションスキルまで多岐にわたる。大学側が主導するだけでなく、RAや寮生自身が企画するプログラムも多いという。文化の違いを学ぶ講座や模擬国連体験など、学生が主体となって発信する姿勢は、WISHの大きな特徴だ。
さらに、長期休暇中にはハイレベルな「実地研修」も用意されている。大学側が渡航費等を負担して実施するこの制度は、SIプログラムでの取り組み姿勢を評価して希望者の中から選抜された寮生が参加する。
過去には、福島県での震災復興研修や、韓国での歴史認識をテーマとした研修が実施された。参加した寮生は、その経験を寮全体へ還元する発表の場が与えられる。
※韓国における実地研修の様子
これらの研修を通じて、大学での専攻を決定したり、特定の地域との継続的な繋がりを持ったりする寮生も多い。通常の学生生活では得難い、持続的で深い学びがここにはある。
多文化が交差する共同生活、学生リーダー(RA)による伴走、そして社会に直結したSIプログラム。早稲田大学のWISHは、寮生活そのものを「人を成長させるシステム」へと昇華させている。次世代のグローバルリーダーがここからどのように羽ばたいていくのか、今後の展開が楽しみだ。


