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2026

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    「2年で1,000億円削る」――リーマンショックの絶望を最高益へ変えた、精緻な分析と攻めのコスト削減

    「2年で1,000億円削る」――リーマンショックの絶望を最高益へ変えた、精緻な分析と攻めのコスト削減

     2008年、世界を襲ったリーマンショックは、東レにも猛烈な直撃を与えました。市場は急速に縮小し、需給バランスは崩れ、営業利益は300億円台にまで一気に落ち込みました。当時、副社長であり経営企画室長として全社の舵取りを任されていた私は、この未曾有の危機を前にして、ある壮大な計画を立ち上げました。

     「2年間で1,000億円のコストを削減する」

     この数字を提言した時、当時の経営トップも文字通り目を見開いて驚かれました。「日覺、そんな途方もない大風呂敷を広げて本当に大丈夫か」と、真剣に心配されたほどです。一般的な組織の感覚で言えば、自ら掲げた目標が未達に終われば自らの進退問題に関わります。周囲の目には、「日覺は自ら左遷の道を突き進んでいる」と映ったかもしれません。

     しかし、私はただの一般論や、景気が悪いから投資を控えるといった、後ろ向きな縮小均衡で物事を考えていたわけではありません。いつもの通り、全社の現状を徹底的に把握し、データを徹底的に分析した結果、「今ある無駄と過剰を削ぎ落とせば、最低でも1,000億円は捻出できる」という明確な事実の裏付けがあったのです。それでも「大丈夫か」と問う上層部に対し、私は「今の東レが生き残るためには、これをやるしかないのです」と宣言し、総力を挙げた「TC(トータルコスト競争力強化)プロジェクト」を始動させました。

     結果はどうだったか。私たちは初年度だけで、目標を大きく超える820億円のコストを削減してみせました。最終的には2年間で1,020億円を削り出したのです。

     ただし、私のコスト削減は、単に「身を削って小さくなる」ためのものではありません。究極の目的は、次なる成長への体力を蓄えることにあります。そのため、時機を見極め、生き残りのための緊急対策である「APS(アクション・プログラム・フォー・サバイバル)」から、成長へと舵を切る「APG(アクション・プログラム・フォー・グロース)」への切り替えを迅速に行いました。

     そして目標以上の固定費削減を達成した翌年の2010年度では、固定費を「増加」させるような予算編成に戻しました。これまでコスト削減で利益を確保してきた実績はありましたが、徹底的なコスト削減によって企業体質が強化され、需要が回復して工場の稼働率が向上する今こそ、次なる爆発的な成長軌道に乗るための投資は必要になります。

     この体質強化をテコにして、私が社長に就任した翌年の2011年から、3カ年の中期経営課題「プロジェクト AP-G 2013」をスタートさせました。私が見据えた攻めの全社プロジェクトは3つ。「グリーンイノベーション事業の拡大(GR)」、「アジア・新興国での事業拡大(AE)」、そして「トータルコスト競争力強化の継続(TC-II)」です。

     当時、それまで世間では「近いうちに化石資源が枯渇する」と騒がれていましたが、シェールガスの発見によってその前提は変わり、主眼は地球温暖化などの環境問題へとシフトしていました。これからの世界が環境配慮型の高機能素材をより一層求めるようになることは、現場のニーズを捉えていれば火を見るよりも明らかです。成長する市場と地域に、貯め込んだエネルギーを集中的に投下したのです。

     コスト削減で極限まで筋肉質になった組織が、一転して成長拡大へと一斉に舵を切った結果、2011年度、東レは営業利益1,077億円という「過去最高益」を叩き出しました。あの絶望的なリーマンショックから、わずか3年足らずでのV字回復です。

     業績変動をはじめ、世の中のあらゆる物事には必ず明確な「原因」があります。危機に直面して「大変だ」と右往左往するだけの空理空論には何の価値もありません。「答えはすべて現場にある」の精神で原因究明を徹底し、本質的な原因さえつかめば、解決策は自動的に決まります。あとはその解決策を、強い意志を持って信じて実行するだけです。ピンチの裏側には、常に劇的な進化を遂げるためのチャンスが隠されているのです。

    #東レ#東レ会長#現場主義#答えはすべて現場にある#企業共創#素材で社会を変える#日覺塾

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