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「老後2,000万円問題」は本当か?実際に必要な老後資金とその対策
ビジョナリー編集部 2025/11/04
2019年、金融庁の報告書をきっかけに社会を揺るがせた“老後2,000万円問題”。しかし、「本当に2,000万円が必要なのか?」と尋ねられると、はっきり答えられない方がほとんどかもしれません。
この記事では、“老後2,000万円問題”の背景や本質、そして今考えるべき老後資金のリアルを具体例を交えつつ解説していきます。
老後2,000万円問題とは
2019年、金融庁の「市場ワーキング・グループ報告書」が発表され「老後に2,000万円が不足する」というニュースが駆け巡りました。
ですが、実際の報告書に「国民全員が2,000万円足りなくなる」と書かれていたわけではありません。
- 報告書は「高齢夫婦無職世帯」の平均値に基づいたモデルケースでのシミュレーション結果
- 夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦が30年間無職で過ごした場合、毎月約5.5万円の赤字が生じ、合計で約2,000万円不足するという計算
あくまでもシミュレーションの結果の1つであり、実際にいくら必要なのかは世帯ごとに大きく変わります。
なぜ大きな話題になったのか
日本人の長寿化
かつては「人生80年」と言われましたが、今や「人生100年時代」と言われています。
厚生労働省のデータによると、令和3年時点で男性の平均寿命は81.47歳、女性は87.57歳です。退職後の生活が20年、30年と続くことは珍しくなくなりました。
その分「老後に必要なお金」も増え、不安が広がりました。
退職金の減少
たとえば、大卒・定年退職の場合の退職金の平均は2002年で2,512万円だったのが、2021年には2,243万円に減少。さらに、そもそも退職金制度を持たない企業も増えています。
「自分の退職金は減るのでは?」と不安になるのも無理はありません。
年金制度への不安
少子高齢化の影響で、年金の支給額や受給開始年齢への不安が高まっています。 実際、年金の支給額は物価や人口構成の変動で見直しが続いており、将来もらえる年金に不安を持つ方も多いでしょう。
働き方の多様化
終身雇用が当たり前だった時代から、転職やフリーランス、自営業といった多様な働き方へシフトしています。会社勤めでない人は、退職金や厚生年金がない場合も多く、自分で老後資金を準備する必要があります。
本当に“2,000万円”で足りるのか?
「2,000万円が必要かどうか」は、人それぞれ全く異なります。
たとえば──
- 住宅ローンが完済済みか、賃貸か
- 地方在住か都市部か
- 趣味やレジャーにどれだけお金をかけるか
- 健康状態や介護の必要性
こうした状況で、必要な老後資金は大きく変わります。
住居費の違い
金融庁報告書の試算では「住居費は毎月約1.6万円」とされていますが、これは持ち家の場合です。賃貸暮らしで家賃が月8万円なら、30年間での不足額は一気に増えます。
「ゆとりある老後」を目指すなら?
生命保険文化センターの調査では、「ゆとりある老後生活費」として毎月36万円が平均値とされています。このようなゆとりのある生活を目指す場合には、年金や退職金だけでは厳しいという現実も見えてきます。
インフレ時代の“お金の価値”にも注意
2019年と現在では、経済環境も大きく変わっています。最大の変化は「インフレ社会に突入したこと」です。
持っているだけではお金の価値が減っていくことも予想され、「とりあえず貯金しておけば安心」という時代から変わりつつあります。
老後資金が“足りなくなる人”とは?
どんな人が「老後のお金が足りなくなる」リスクが高いのでしょうか。
- 支出が多い人(生活費やレジャー費が多い、住居費が高いなど)
- 退職金が少ない、またはもらえない人
- 年金受給額が少ない人(自営業やフリーランスなど)
- 短期間で大きな支出が必要なライフイベントを控えている人
こうした特徴に当てはまる場合、早めの対策が不可欠です。
今からできる“対策”とは?
自分の老後を具体的にイメージする
まずは「自分の場合、老後に毎月いくら必要か」「年金や退職金でいくらまかなえるか」を、できるだけ具体的に計算してみましょう。
- 生活費(食費・住居費・光熱費・医療費など)
- レジャーや趣味
- 介護やリフォームなどの一時的支出
ポイント
- 年金定期便やねんきんネットで自分の将来の年金額を確認
- 退職金について会社の人事部に問い合わせる
- 家計簿アプリなどで現在の支出を把握する
資産運用で「お金に働いてもらう」
インフレ対策には、積立投資や資産運用も有効です。
- NISA(新NISAは生涯1,800万円まで非課税で運用可能)
- iDeCo(個人型確定拠出年金。掛金が全額所得控除)
たとえば、毎月3万円を年利4%で30年間運用すれば、2,000万円以上の資産を作ることも可能です。
「投資は怖い」と思う方も多いですが、少額から始めて長期でコツコツ積み立てることでリスクを抑えられます。
働き続けるという選択肢
65歳以降も働くことで、年金受給開始を繰り下げれば、年金額が増える仕組みになっています。「まだ健康だし、もう少し働く」という選択も、立派な老後対策です。
まとめ
「老後2,000万円問題」という言葉に振り回される必要はありません。大切なのは「自分自身の場合いくら必要か」を見極めて、早めに準備を始めることです。
- 自分の老後資金をざっくり試算してみる
- NISAやiDeCoなどの資産運用制度について調べてみる
- “働き続ける”ことも含めたライフプランを考える
自分にとっての豊かな老後を描く第一歩として、今日から一つでも行動を始めてみてはいかがでしょうか。


