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2026

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    PTAの新しい形「コア型PTA」とは――保護者と学校が直面する課題と突破口

    PTAの新しい形「コア型PTA」とは――保護者と学校が直面する課題と突破口

    「PTAの役員決め、今年はどうしよう…」「また断れなかった…」そんなため息が、春先の学校で聞こえてきませんか。長年続いてきたPTAの活動ですが、時代とともにそのあり方に疑問を持つ声が高まっています。特に最近は「任意加入」という流れが広がる一方で「運営が成り立たない」という根本的な課題も表面化しtきました。果たして、PTAは「解散」か「従来型維持」か、その二択しかないのでしょうか。いま注目を集める「コア型PTA」という新しい選択肢に迫ります。

    「PTA疲れ」が限界に近づいている

    PTA(Parent-Teacher Association)は、戦後の教育民主化を背景に、親と教師が協力して子どもの成長を支えるための組織として誕生しました。当初は「理解ある数人が集まり、準備から始める」ことが推奨されていましたが、現実には「子どもが入学したら自動的に全員が会員」という形が全国に広がりました。具体的には、運動会や学芸会といった学校行事の運営補助、登下校の見守り活動、広報誌の作成、学校環境の整備、バザーや地域行事への協力など、学校運営を支えるさまざまな活動を担ってきました。

    しかし、現代の社会環境は大きく変化しています。共働き世帯が70%を超え、ひとり親家庭も増加。保護者の働き方や生活スタイルが多様化し、「みんなで負担を分け合う」ことが難しくなっています。女性の就業率も大きく上昇し、子育て世代の8割近くが仕事を持つ時代です。そんな中で一律に「役割を担ってください」と言われても、現実的に対応できない保護者が増えるのは当然の流れでした。

    加えて人口減少の波も大きく影響しています。子どもも保護者も減少する中で、従来通りの組織運営やイベント規模を維持すること自体が難しくなってきました。「PTAは任意加入である」という認識が広まり、加入率が下がると、担い手不足が表面化。「誰もやりたがらない」「なぜやるのか分からない」という戸惑いが広がり、なかには「任意化にしたら運営できなくなったので、元の強制加入に戻そう」といった議論まで出てきています。

    PTAは何のためにあるのか?原点回帰の必要性

    立ち止まって考えたいのは「PTAは何のために存在するのか」という原点です。戦前の学校では寄付や行事への協力は親の義務とされ、親は学校を支える立場に置かれていました。戦後のPTAはそうした考えを反省し、親と教師が対等に協力する民主的な組織として生まれたはずでした。しかし現実には「作れと言われたから作った」「みんながやっているから続けている」という空気が残り、PTAの目的そのものが見えにくくなっているケースも少なくありません。

    近年は、学校・教師が担うべき業務と、保護者や地域が関わる活動の役割分担を見直す動きも進んでいます。中央教育審議会(日本の教育政策について、文部科学大臣に助言・提言を行う国の審議機関)でも、学校が何でも抱え込まない体制づくりが重要だと繰り返し指摘されてきました。例えば登下校の見守りや地域との連絡調整などは、学校以外が担うべき業務として整理されています。

    こうした流れは、PTAの存在意義を改めて問い直す背景にもなっています。

    「コア型PTA」という新たな選択肢

    こうした流れの中で注目されているのが「コア型PTA」という運営モデルです。一言でいえば、「会費も会員も設けない」「やりたい人だけが無理なく関わる」仕組みです。従来の「全員参加」「役割分担」といった前提を一度リセットし、有志の保護者や教職員がコアメンバーとなって必要な活動だけを担います。イベントや活動ごとに、協力できる人をその都度募るため、参加のハードルが大きく下がります。

    このモデルは、「規模縮小のPTA」とは異なり、「会員制」という概念そのものを手放す大胆な発想転換です。コアメンバーが少人数でも、やりたいことがあれば必要な人を集めて実施し、無理に組織を維持しようとしません。「義務感」ではなく「自主的な関与」を前提にしているため、運営負担が大幅に軽減されるのが大きな特徴です。

    実際にどう運営しているのか?――南町小PTAのケース

    東京都練馬区立南町小学校のPTAは、まさにこの「コア型PTA」への転換を果たした事例です。コロナ禍で各種集会をはじめとする活動がほぼ停止したことをきっかけに、「今のやり方を続ける必要が本当にあるのか?」という問題意識が高まり、2024年度からは会員制度と会費徴収を完全に廃止しました。

    現在は、数人のコアメンバーが本部機能を担い、行事や活動ごとにボランティアを募集しています。たとえば運動会の受付や地域行事のサポートなどは、やりたい人・協力できる人が参加する仕組みです。会費を廃止したことで、保護者間の「私は払っているのに…」といった分断もなくなり、必要経費はAmazonの「ほしい物リスト」などを活用した寄付でまかなっています。寄付は、在校生の保護者を中心に、卒業生の保護者や地域の関係者など、活動に共感した人が任意で行っています。

    また、情報発信も重視し、noteやLINEオープンチャットを活用して活動内容や学校の状況をオープンに伝えています。保護者だけでなく、OB・OGや地域の方も参加できるようにし、多様な関わりを促進。こうした運営のなかで、保護者同士が得意分野を生かして協力し合う姿勢が、子どもたちにも良い影響を与えているのです。

    コア型PTAのメリットと課題――何が変わるのか?

    コア型PTAの最大のメリットは、活動負担の軽減です。従来の「一人一役」や「役員決め」のストレスから解放され、「やりたい人が、できる時に、できることだけ」を原則とします。一般の保護者にとっては、望まない参加や重い負担から自由になり、PTA本来の「子どものため」の活動に集中しやすくなります。

    また、コアメンバーも「やらされ感」ではなく、主体的な意思で運営に関わるため、意思決定が速く、組織の風通しも良くなります。必要な時だけサポーターを募ることで、多様な専門性やノウハウも蓄積しやすくなり、「PTAだからできない」ではなく「これならできる」という前向きな空気が生まれます。

    一方で課題も残ります。少人数のコアメンバーに負担が集中しやすく、全員が一斉に卒業するなどで組織が消滅するリスクや、活動資金の安定確保といった問題は避けて通れません。また、参加の機会が減ることでPTA活動や学校運営への関心が薄れる、情報格差や分断が生じるといった懸念も指摘されています。

    「解散」か「変革」か――選択肢は1つではない

    担い手不足を理由にPTAの解散を選ぶ学校も全国で増えています。もちろん、それも一つの選択です。しかし、南町小PTAの事例が示すように、「コア型PTA」という新しい形を模索することで、「解散」でも「従来型」でもない第三の道が開けます。

    大事なのは、「なぜ続けるのか」「どんな関わり方なら続けられるのか」を保護者自身が考え、納得できる形を選ぶことです。PTAは何でも自分たちで動いて抱え込む「実働部隊」ではなく、学校・保護者・地域等の必要な人と、情報・協力を「つなぐ役割」に徹する存在であるべきでしょう。必要な時に、必要な人が、無理なく関われる運営。それこそが、現代の保護者・学校・地域にとって「持続可能なPTA」の姿なのかもしれません。

    PTAは70年を超える歴史の中で、何度も変革の必要性が問われてきました。いま求められているのは「現場からの自発的な見直し」です。社会全体の意識も大きく変わりつつある今こそ、PTAのあり方を根本から問い直す絶好のタイミングです。

    #PTA#PTA問題#PTA改革#PTA役員#PTA疲れ#PTA任意加入#保護者#共働き

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