「元を取る」から「エンタメ」へ。なぜ今、異業種の...
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モノから「物語」へ——Z世代が熱狂する「イミ消費」と、プロセスを重視する時代の到来
ビジョナリー編集部 2026/08/03
今の時代、私たちの財布の紐をゆるませるのは、「とびきりの機能」や「びっくりするような安さ」だけではありません。お店の棚の前に立つとき、私たちは無意識のうちにこんな問いを投げかけています。
「この商品を買うと、私の毎日はどんなふうに変わるだろう?」
物があふれ、ちょっとした非日常の体験ですらすぐに消費されてしまう現代。人びとは今、ただ買い物をするだけの「消費者」であることをやめ、自分の価値観やスタンスを表現することを重視する傾向へと変わりつつあります。
この記事では、いまやビジネスにおいて欠かせないキーワードとなった「イミ消費」について解説します。かつて言われていた社会貢献的な意味合いから、なぜ今「イミパ」や「プロパ(=プロセス・パフォーマンス)」という新しい言葉へと進化しているのか。そして、企業はこれからどのように取り組んでいくべきなのか。より複雑になった消費者のホンネを、分かりやすく紐解いていきます。
「モノ・コト・トキ・エモ」の果てにたどり着いた場所
今のトレンドを知るためには、まずこれまでの買い物の歴史を振り返ってみる必要があります。
かつて世の中を席巻したのは、所有すること自体がステータスだった 「モノ消費」 でした。その後、モノが十分に満たされると、旅行やイベントといった思い出づくりを重視する 「コト消費」 へと移り変わります。
さらにSNSが当たり前になると、その場・その瞬間の熱狂をみんなでシェアする「トキ消費」(音楽フェスなど)や、心の動きそのものにお金を払う「エモ消費」(推し活やレトロ商品の購入など)が生まれました。
しかし、情報もモノも多すぎる今、こうした消費すらも「疲れ」を引き起こしています。機能が良いのも、体験が楽しいのも当たり前。そんな世界で人びとがたどり着いた基準、それこそが「その買い物が、自分や社会にとってどんな意味を持つのか」を大切にする 「イミ消費」 なのです。
「社会貢献」から「プロセスの共感」へ——進化するイミ消費
「イミ消費」という言葉はもともと、ホットペッパーグルメ外食総研の竹田クニ氏によって提唱されたものです。最初は、環境保全や地域貢献、フェアトレードといった「社会に良いこと(=意味)」に共感して商品を選ぶ行動を指していました。エコバッグを持ち歩いたり、環境に優しい素材の服を選んだりするのがその代表です。
しかし現在、この言葉はZ世代を中心に独自の進化を遂げています。単なる社会貢献という枠組みを飛び越え、「その商品が自分のライフスタイルにどんな意味(イミ)をもたらすのか」という、もっとパーソナルな価値基準に変わってきているのです。
ここで登場するのが、「イミパ(意味パフォーマンス)」と「プロパ(プロセスパフォーマンス)」というキーワードです。
これまでは、使ったお金や時間に対してどれだけ見返りがあるかという「コスパ」や「タイパ」が重視されてきました。でも、効率ばかりを追い求めた結果、若者たちは「意味のない効率化」にどこか物足りなさを感じるようになってきています。
彼らが惹かれるのは、最初から完璧に用意された商品ではありません。企画が立ち上がり、ときには失敗しながらも形になっていく「プロセス(過程)」そのものを楽しみ、一緒に物語をつくっていくことにワクワクしているのです。
なぜ「過程」にお金を払うのか?
では、なぜ今「プロパ」や「イミパ」がこれほどまでに支持されているのでしょうか。その裏にあるのは、「飾らないリアルが見たい」という気持ちと、「自分らしさを表現したい」という思いです。
SNSを開けば、AIが作ったような綺麗すぎる広告が溢れています。でも、裏側が見えない完璧さは、かえって不自然に感じてしまうもの。だからこそ、泥臭い開発の裏側や、作り手の悩む姿といった「体温を感じるリアルな情報」が、まっすぐに心に響くのです。
また、自分の買い物が「誰かの挑戦を応援している」という実感は、大きな喜びになります。応援という形で参加することで、自分もそのプロジェクトの一部になる。今の時代のイミ消費とは、「商品を買う」ことを通じた自己表現 だと言えます。
ストーリーを分かち合う——イミ消費が生み出した6つの成功事例
この「プロセスへの共感」や「意味の提供」を見事に形にし、熱狂的なファンを生み出している事例を6つご紹介します。
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クラウドファンディングを通じた伝統工芸の再生: ある廃業寸前の町工場は、完成した商品を売るのではなく、「なぜこの技術を残したいのか」「今どんな壁にぶつかっているのか」をSNSで赤裸々に発信しました。すると「完成を待ち望むプロセス」自体がエンタメとなり、目標を大きく超える応援が集まりました。
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透明性を極めたD2Cアパレルブランド: 原価率や工場の環境を公開し、デザイン案の段階からSNSのアンケートでフォロワーと一緒に服を作るブランドがあります。お客さんは「自分の意見が反映された服」ができる過程を見守るため、発売日には飛ぶように売れていきます。「服」ではなく「一緒にブランドを育てる体験」が買われている のです。
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規格外野菜を活用した「意味」の可視化: 形が悪くて捨てられるはずだった野菜を、あえて「個性」としておしゃれなスープに生まれ変わらせたプロジェクト。「フードロスに貢献している自分」を実感できるため、SNSでシェアしたくなる気持ちをくすぐります。
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天候リスクも共有する「農作物のオーナー制度」: りんごの木や田んぼの「オーナー」になり、収穫までの1年間を見守るサービスが人気です。台風が来れば一緒にハラハラし、無事に育てば心から喜ぶ。ただスーパーで買うのとは違う「育てるプロセス」の共有 が、唯一無二の味わいを生んでいます。
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ユーザーと共に進化する「アーリーアクセス型」のゲーム開発: あえて未完成の段階でゲームをリリースし、プレイヤーからの意見をもらいながら完成へと近づけていく手法です。ユーザーは「自分たちがこのゲームを面白くした」という実感(イミパ・プロパ)を得られるため、開発陣とプレイヤーが強固なチームのような絆で結ばれます。
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ゴミを宝物に変える「アップサイクル」のストーリー: 使い古されたトラックの幌(ほろ)や、海に落ちていたプラスチックのゴミ。これらを回収し、おしゃれな一点モノのバッグやアクセサリーとして蘇らせるブランドが支持を集めています。「かつて別の役割を持っていた素材が、自分の手元にやってきた」という背景にある物語が、他にはない価値を持つのです。
まとめ——「完成品」を売る時代の終わりと、共に紡ぐ新しい価値
時代は「できあがったモノを提供するビジネス」から、「未完成なプロセスを共有し、一緒につくりあげるビジネス」へと大きくシフトしています。
企業が密室で完璧な商品を作り、大々的に宣伝して売るだけの手法は、もはや通用しなくなってきました。自分たちのサービスが社会にとってどんな「意味」を持ち、お客さんの人生にどんな「物語」を描けるのか。ときには自らの弱さや未熟さもオープンにして、お客さんを巻き込んでいく姿勢が求められています。
モノ、コト、トキ、エモを経てたどり着いた「イミ消費」の時代。それは、企業とお客さんの間の壁がなくなり、まるで同志のように新しい価値を作っていく、とても人間らしくて温かい変化の始まりです。
「なぜこれを作ったのか」「どんな未来を目指しているのか」。その問いにまっすぐに向き合い、対話を重ねること。それこそが、これからの時代に愛され続けるブランドの条件になっていくはずです。


