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飲食店2万軒が危機に 全東信倒産の衝撃とクレカ決済依存のリスクとは
ビジョナリー編集部 2026/07/10
長年にわたり飲食業界を支えてきたクレジットカード決済代行の大手、株式会社全東信が自己破産を申請しました。負債総額は約1,259億円にのぼり、今年最大級の大型倒産として大きな衝撃が走りました。
「売上金が入らない」「端末が反応しない」。
日々の資金繰りを同社の早期決済に頼っていた店舗が、想定外の危機に直面しています。
全東信が破産の衝撃――業界最大規模の倒産劇
2026年7月6日、大阪地方裁判所で破産手続きの開始決定が下されました。同じ日のうちに、提供していた決済サービスは全面的に停止。「カード利用不可」の貼り紙が貼られる光景が各地で見られています。
破産管財人によれば、未入金のまま売上が消えてしまった店舗は2万を超えるといいます。この数字が示すのは、単なる一社の倒産ではなく、日本の飲食業界のキャッシュフローを直撃する「連鎖危機」です。負債総額1,259億円という事実は、多くの関係者に衝撃を与えています。都内の飲食店オーナーからは「売上の6割をカード決済で受けていたのに、7月分の売上金が戻ってこない」と、諦めにも似た嘆きの声が上がっています。
全東信の“特別な立ち位置”――なぜ多くの店舗が利用していたか
数ある決済代行会社の中で、なぜ全東信はこれほどまでに飲食業界に深く根付いていたのでしょうか。その原点は、1987年の「大阪南飲食事業協同組合」にさかのぼります。当初はごく限られた飲食店のために作られた組織でしたが、時代の流れとともに株式会社化し、加盟店数は20万店を超える規模へと成長しました。
最大の特徴は、カード売上金をわずか数日で現金化できる「早期決済」サービスでした。通常、飲食店がカード決済の売上を現金で受け取るまでには1ヶ月以上かかります。特にキャッシュフローの安定が命綱となる夜の歓楽街やスナック・キャバクラなどの店舗にとって、この「スピード入金」は救いでした。
同社は、他の決済代行会社が敬遠しがちな実績が少ない店舗でも審査を柔軟に運用。「日払い」文化に寄り添った資金供給体制を構築したことで、多くの店舗に拡大してきたのです。
崩壊までのカウントダウン――4つの致命的な要因
まず、同社は加盟店が増えるごとに「立て替え原資」を拡大し、自己資金を超える規模で金融機関からの借り入れに依存していました。これは順調なときは利益を押し上げますが、ひとたび加盟店の売上が減少すると資金繰りの歪みが一気に噴出します。
さらに、2020年以降のコロナ禍は飲食店に甚大な打撃を与え、売上高はピーク時の約80億円から約50億円へと激減。新規店舗の開拓も難航し、2期連続で巨額の赤字に沈みました。
さらに追い打ちをかけたのが、2024年1月に発覚したコンプライアンス違反です。本来であれば審査を通らないはずの店に、他人名義で決済端末を設置していた事実が明るみになりました。東京支店の幹部らが書類送検され、企業の信用は一気に失墜しました。
最終的には、金融機関からの新規の資金調達が事実上ストップし、資金繰りの命綱が断たれました。
飲食店に吹き荒れる“二次被害”――現場への影響
破綻によって、最も大きな打撃を受けたのは全国の飲食店です。「未入金分は破産債権として扱う」と通知され、これは数十万から数百万円の売上が回収不能になることを意味します。日々の資金繰りがぎりぎりの飲食店にとって、これは黒字倒産の引き金になります。
また、事態は店舗だけにとどまりません。全東信の端末が一切使えなくなり、クレジットカード決済の再導入には別の会社との契約が必要となりますが、中小規模や夜間営業の店舗にとって高いハードルです。しかし「現金のみ」に戻せば、客の足も遠のきかねません。
破綻が投げかける“教訓”――これからの店舗経営に必要なこと
この一件が投げかける教訓は、他社に依存しすぎるリスクの大きさです。決済代行システムが便利である反面、万が一そのサービスが止まったときの備えがなければ、店舗経営は極めて脆弱になります。
今後、飲食店が生き残るためには、マルチ決済の導入など、自衛策が必要になるでしょう。
「資金回収の手段を1本化しない」「信頼できる業者を見極める」
こうした意識の転換が必要です。
さらに、資金繰りが厳しくなった段階で早めに公的支援窓口に相談することも重要です。中小企業活性化協議会や日本政策金融公庫のセーフティネット貸付、事業承継・M&A補助金など、選択肢は多く用意されています。早い段階で行動に移すことで、倒産のリスクを減らすことができるでしょう。
終わりに
「便利さ」と「リスク」は表裏一体です。その現実から目をそらさず、今できる備えを積み重ねていくことが、これからの経営に欠かせない時代になりました。
「自分の店は大丈夫」と思った瞬間から危機は始まります。今こそ、経営の足元を見直し、持続可能な店舗づくりが重要になるでしょう。


