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万博パビリオンの再利用──“その後”が生む地域と社会の新たな物語
ビジョナリー編集部 2026/03/30
2025年の大阪・関西万博で見られた煌びやかな展示や最先端の技術、世界各地の文化が織りなす特別な空間。その祭典が幕を下ろした後、建築物は、一体どのように活用されるのでしょうか。実は、そこには多くの工夫と物語があります。
新たな価値を生む再活用
多くの来場者を惹きつける万博ですが、その壮大な建物や展示物は、これまでは一時的な利用のために設計されてきました。しかし、近年では「サステナブル」や「循環型社会」といった考えのもと、施設や展示品の再活用が盛んになっています。2025年の大阪・関西万博でも、閉会後の活用が発表されており、地域や教育、文化振興の“遺産”として期待が高まっています。
実際に、84のパビリオンのうち既に26が新しい用途に生まれ変わることが決定し、当初の目標を上回る成果が出ています。これらの取り組みは、未来への財産として社会に根付こうとしています。
全国へ広がる“第二の舞台”――地域で息づく新しい役割
例えば兵庫県淡路島では、球体が印象的だったオランダ館や、先端医療技術を紹介したパソナ館が、観光や交流の拠点として新たな一歩を踏み出そうとしています。詳細は未定ながら、地元では地域活性の象徴として大きな期待が寄せられています。
また大阪府交野市では、ルクセンブルクの展示スペースが廃校となった中学校の跡地に移り、子育て支援の拠点として生まれ変わることが決まりました。すでに建材の搬入も進み、地域の未来を担う場として準備が進められています。
広島県福山市へと移設される「いのちの遊び場 クラゲ館」は、公共施設として次の役割を担う予定です。また、映画監督・河瀨直美氏が手掛けた会場も大阪府泉佐野市に移り、常設のシアターとして文化の発信地になる計画が進んでいます。
グローバルに広がる資産
再活用は国内にとどまりません。たとえばウズベキスタンのブースは、日本産の杉材とともに母国へ運ばれ、教育施設として再構築されます。さらにセルビアの施設は、2027年ベオグラードで開催される次回の万博で再登場する予定です。
最先端のカーボンファイバー製ドーム「BLUE OCEAN DOME」は、モルディブのリゾート地で新しい役割を担うことになります。イギリスの会場も、建材や家具、厨房設備などを日本各地の公共空間やコミュニティへ寄贈し、その思い出を多くの人々と分かち合っています。能登半島の復興住宅や関西エアポートグループの施設など、場所を変えてあらたな“意味”を持ち始めているのです。
解体資材にも新しい命を
備品や資材も新たな場で活用されています。象徴的な「大屋根リング」は大阪市の緑地公園で保存されるほか、解体された木材の一部は石川県珠洲市の災害公営住宅として再利用され、被災地復興の力となっています。
関西国際空港のベンチは住友館から移されたもので、空の玄関口に彩りを添えています。アメリカの展示で使われた大型ロケット模型は大阪市立科学館へ、ウクライナの展示物は神戸学院大学へと寄贈されています。カナダのモニュメントは東日本大震災の被災地・名取市に届けられ、支援と記憶の両立を実現しています。
日常に溶け込む“万博の記憶”
展示物や備品もまた、全国各地で新たな役割を担っています。イタリア館の「平和の鐘」は大阪市内の教会へ、石黒浩プロデュースのアンドロイドは京都のイノベーションセンターで活躍中です。
群馬県下仁田町には吉本興業館の巨大ネギアートがやってきて名物になっています。大阪ヘルスケア館で話題となった「ミライ人間洗濯機」は、ホテルや温浴施設への導入が進み、将来的には一般家庭や高齢者施設への普及も視野に入れられています。ヨルダンの赤砂は鳥取県で国際交流エリアのシンボルとなり、ネットワークが広がっています。
また、ミャクミャクのデザインが目を引くマンホール蓋は、吹田市の万博記念公園や大阪市内のあちこちで人々の記憶を呼び起こします。
味わいと体験の継承
会場で人気を博した各国のレストランやカフェも、閉幕後には新しいかたちで地域に根付き始めています。ドイツのレストランは2026年に大阪・難波でのオープンを予定し、中東各国のカフェも大阪で事業展開を進めています。異国の味や万博の雰囲気を、日常の中で楽しむ機会がますます広がりそうです。
真のレガシーとは何か
多くの施設は短期間の運用を前提に作られており、そのままの状態で長く使い続けることは簡単ではありません。1970年の大阪万博でも、今なお現存する館はごくわずかです。しかし、役割が変わっても、人々の心や地域の文化として生き続けることこそが、真の価値なのではないでしょうか。
万博協会会長は「レガシーはこれからつくられる」と語ります。どのようにその後を活かし、地域や人々の生活の中に根付かせるかは、私たち一人ひとりの手に委ねられているのです。
まとめ
パビリオンの再利用から見えてくるのは、「使い捨て」ではなく「受け継ぐ」発想です。建築物や物品、そして体験や記憶までもが循環し、次世代へと伝わっていく。その過程で地域経済や文化が豊かになり、社会課題の解決にもつながる。「サーキュラーエコノミー」や「持続可能な社会」の理念は、すでに動き始めているのです。
次代にどんな未来を手渡すのか、そして私たち自身がこの循環の輪の中でどんな役割を担うのか。万博パビリオンの“その後”は、今も私たちに問いかけ続けています。


