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「世界標準」を日本へどう最適化するか。セールスフォース・ジャパンの「リージョナルPM」が担う、本社を動かす交渉術と「勇者」の役割
ビジョナリー編集部 2026/08/21
世界の製品に日本の声を織り込む「Regional PM」の輪郭
セールスフォース・ジャパンには、外資系テクノロジー企業では稀な職種が存在する。それが「Regional PM(Product Manager)」だ。
世界標準のプロダクトと日本市場の間の橋渡しを担うこの役割について、同社の真野知子・製品事業統括本部プロダクトマネジメントディレクターは、 この仕事を3つに整理する 。
第1に、本社が開発したプロダクトの特徴を、日本のお客様や社内へ正確に伝える「認知と理解の促進」。第2に、日本語環境特有の不具合を検証し、快適な利用を可能にする「ローカライズ」。そして第3に、日本市場の要望を収集し、本社の開発チームへフィードバックして製品に還流させる役割である。
「1つ目は本社のPMと同じだが、2つ目と3つ目は地域独自のミッション」と真野氏は指摘する。その特異性から、この職種は「Regional PM」と呼ばれている。
また、顧客側から見た価値は2つ。 「海外プロダクトを採用する際の不安に対し、日本側に受け皿があるという安心感」と、「現場の声を本社の開発チームに届ける橋渡し役」だ。「日々、現場からの要望を開発側の共通言語であるプロトコルに変換し続けることで、『この人が言うなら精査された話だ』と本社に受け止めてもらえる」と真野氏はその重要性を語る。
▲真野知子氏 Tomoko Mano
株式会社セールスフォース・ジャパン
製品事業統括本部プロダクトマネジメント ディレクター
セールスフォース・ジャパンにて、日本・韓国・台湾を対象とするリージョナルのプロダクトマネジメントチームを統括。早稲田大学卒業後、日系メーカーにてソフトウェア・サービスの企画開発や新規事業開発に従事。2021年にセールスフォース・ジャパンに移籍後、カスタマーサービス向け製品および「Agentforce Service」のプロダクトマネージャーを経て、現職に至る。
本社との交渉に効く、「3つの悩み」と「3つの実践」
Regional PMの中心的なミッションは、世界中から集まる膨大な要望の中で、いかに日本の優先順位を上げるかにある。
真野氏によれば、まずは本社のPMが抱える「3つの悩み」を理解することが起点になるという。それらは、世界中から届く「自分の国が一番」という主張に対し優先順位を付けざるを得ない苦悩、現場から遠いために「Nice to have(あればよい)」と「Must have(必須)」の区別がつきにくいこと、そして独自の要望を調査する工数の重さである。
この3つを踏まえたうえで、実践は3つに集約される。
- ①データで語る: お客様の声(VOC)を商談情報に紐づけ、「この機能を求める顧客が何社あり、影響する商談金額はいくらか」を具体的な数字で示す。
- ②文脈を翻訳する: 「Jobs to be done」の思考に基づき、「この機能が欲しい」という表面的な要求ではなく「何が課題で、何を解決したいか」という本質を伝え、機能はあくまで一案として添える。
- ③コミュニティ・仲間をつくる: 本社の担当PMとそのマネージャーまでを巻き込み、国内では製品営業もSEも味方につける。「PMひとりではなくONE TEAMで叶えるVOC」という陣形を構築する。
この設計は、外資テック業界に限らず、グローバル本社と現地法人の板挟みに悩むあらゆるビジネスパーソンにとって、極めて示唆に富む方法論といえるだろう。
7年越しのLINE連携と、「PMは勇者」という仕事観
真野氏が「印象深い」と振り返るエピソードの一つに、LINE連携の実現がある。日本のコンタクトセンターに深く根付くこのチャネルも、米国本社からすれば当初は「LINEとは何か」というレベルの認識であり、なかなか交渉のテーブルに載らなかった。
日本側から要望を上げ続けてから実現まで7年、真野氏自身による直接交渉も3年に及んだ。「日本にはこれだけのビジネスインパクトがあり、連携すればこれだけの価値を生む」と粘り強く訴え続けた結果、本社のプラットフォーム刷新のタイミングと合致し、2025年にようやく一般提供へとこぎ着けたのだ。
また、あるAI製品の日本語対応をめぐる出来事も忘れられない。「Agentforce World Tour Tokyo」の基調講演で発表を予定していた当日、会場へ向かう電車の中で本社から「日本語のローンチが難しい」という一報が入った。講演開始のわずか2時間前のことである。
この危機に対し、表記の一部見直しで当座を切り抜け、その後は社内のカスタマーサクセスやパートナーまでを巻き込んで検証を急ピッチで進めた。結果、約2か月半で一般提供までやり遂げた。
こうした困難を乗り越える仕事を、真野氏は「PMは勇者」と表現する。ドラゴンクエストに例えるなら、攻撃や守備、呪文の専門特化型ではないが、チームをまとめ上げることに長けた勇者のような存在。国内外の多彩な専門家を束ね、世界最新のプロダクトを日本のお客様に届ける「束ね役」こそがPMである、というメッセージだ。
元記事ではこのほか、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)との違いや、Regional PMに求められるスキル、そしてこのポジションから広がるキャリアパスまで詳細に語られている。世界標準のグローバル製品を扱う経営者や、本社と現地の橋渡しに苦心する事業責任者は、必読の内容だ。
▶続きはこちら: 日本のお客様を大切にする職種、Salesforceの「Product Manager(PM)」を知る8つの質問(Salesforce公式ブログ)


