創造的破壊が未来を拓く――ノーベル経済学賞が示し...
SHARE
「終活」を始める理由とメリット――家族のため、自分のためにできること
ビジョナリー編集部 2025/12/03
近年、「終活」は私たちの生活に浸透しはじめ、書店には専用コーナーが設けられ、テレビや雑誌でも特集が組まれています。
本記事では、終活の起源や背景、そして基本的な考え方まで、わかりやすく解説いたします。
「終活」が生まれた背景
2009年、一つの特集記事からはじまった
「終活」という言葉が最初に社会に登場したと言われているのは、2009年のことです。『週刊朝日』の特集記事タイトルとして初めて使われました。人生の終わりに向けた準備を、「就活」をもじった「終活」という言葉で表現したことが、世間の注目を集めるきっかけとなったのです。
2012年には「終活」が流行語大賞のトップ10に選ばれ、瞬く間に日本中に広がっていきます。
なぜ「終活」が社会現象になったのか?
この言葉が広がった背景には、いくつかの重要な社会変化があったと考えられます。
- 超高齢社会の到来
日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進行し、人生100年時代とも言われる時代に突入しました。65歳以上の高齢者が増え、「おひとりさま」や「老老介護」といった新たな課題も顕在化しています。 - 家族・地域のつながりの希薄化
昔は三世代同居や地域社会による助け合いが当たり前でしたが、核家族化や都市化が進み、死後の準備で周りの力を借りることが難しくなりました。 - 価値観の多様化
「自分らしい最期を迎えたい」「家族に迷惑をかけたくない」という思いが広まり、葬儀やお墓なども従来の形式にとらわれない選択肢が増えています。
終活の基本
そもそも「終活」とは何か?
「終活」とは、人生の終わりに向けた準備を自ら行う活動のことです。具体的には、以下のような内容を含みます。
- エンディングノートや遺言書の作成
- 財産や相続の整理
- 身辺整理(断捨離)
- 医療や介護に関する希望の明文化
- 葬儀やお墓の準備
- デジタルデータ(SNSやネット口座)の整理
「終活」を始めることで得られる主なメリット
- 家族の負担を大幅に減らせる
あるご家庭では、突然の不幸で遺族が財産の所在や手続き方法に悩み、数ヶ月間も混乱を極めたというケースがありました。逆に、事前にエンディングノートや財産リストが整備されていたために、葬儀や相続手続きがスムーズに進んだという事例もあります。 - 家族間のトラブル防止
遺産相続を巡る争いは決して他人事ではありません。「遺言書がなくて親族でもめてしまった」「家族の絆が壊れてしまった」などの話は後を絶ちません。終活の過程で自分の意思を明確に残すことで、こうしたトラブルを未然に防ぐことができます。 - 自分らしい最期を実現できる
医療・介護の方針や葬儀の形式、お墓の種類など、自分の希望をしっかり伝えることで、納得のいく最期を迎えやすくなります。人生の最期を自分でデザインできるという意味で、終活は「死の準備」ではなく「より良く生きるための準備」とも言えるのです。
「終活」はいつから、どのように始めるべきか?
「まだ早い」と思っていませんか?
「終活はリタイアしてから」と考える方は多いかもしれません。しかし、実際には20代や30代から身の回りの整理や資産管理を意識する人も増えています。早めに取り組むことで、将来のライフイベントや資金計画も立てやすくなります。
年代別・終活で考えるべきこと
- 20代・30代
普段から物を増やしすぎない、デジタルデータの整理(パスワードやSNS情報の管理)など小さな終活を意識しましょう。 - 40代
自分の健康や親の終活について話し合いのきっかけを作り、保有資産の見直しや老後資金の準備も始めてみましょう。 - 50代・60代
判断能力や体力が十分なうちに、エンディングノートや遺言書の準備、断捨離など本格的な終活を進めるのがおすすめです。
終活の基本ステップ
ステップ1:身の回りの整理(断捨離)
長年暮らしていると、不要なものがどんどん溜まりがちです。生前から必要なもの・不要なものを仕分けし、遺品整理の負担を減らしましょう。実際に、ある方は「家の整理を始めたことで、気持ちがすっきりし、普段の生活も快適になった」と語っています。
ステップ2:エンディングノートに想いをまとめる
エンディングノートには、家族へのメッセージなどを自由に書き留めることができます。
最近では、自治体が無料で配布するノートや、企業が独自に作成したテンプレートもあり、使いやすいものを選べます。
ステップ3:医療・介護の意思表示
突然の病気や事故で意思疎通が困難になった場合に備え、延命治療の希望や介護方針などを家族と共有しておきましょう。ご本人が自分の希望を明確にしたおかげで、家族も安心して介護の判断ができたと話すケースも増えています。
ステップ4:財産・相続の整理と準備
預貯金、不動産、株式、保険などの財産をリスト化し、必要に応じて遺言書の作成も検討しましょう。また、インターネットバンキングやサブスクリプションサービスのアカウント情報など、デジタル資産の整理も忘れずに行いましょう。
「エンディングノート」と「遺言書」の違い
両者は混同されがちですが、エンディングノートは自由度が高く、法的効力はありません。一方、遺言書は法律に則って作成しなければならず、主に財産分与など相続に関する意思を明確に伝えるものです。
「家族が相続でもめるのは避けたい」と感じたら、早めに遺言書の作成もおすすめします。
デジタル時代の「新しい終活」
近年、「デジタル終活」という言葉も注目されています。
パソコンやスマートフォン、SNS、ネット銀行や証券口座など、デジタル資産が増える中、「パスワードが分からず手続きが進まない」といったトラブルも発生しています。
エンディングノートにIDやパスワードの一覧を記録しておく、重要なデータはUSBメモリ等でバックアップしておくことがポイントです。
終活は「自分のため」と「大切な人のため」
「終活」とは単なる「死の準備」ではありません。
「今後の人生をどう生きたいか」「家族や友人への感謝をどう伝えるか」——そうした前向きな計画でもあります。
ある方は、「終活を始めてから、毎日を大切に生きようと思えるようになった」と話していました。
また、終活をきっかけに親子でじっくり話し合うことで、家族の絆が深まったという声もよく聞かれます。
まとめ
- 「まだ元気だから」と先送りにしたくなりますが、終活は早く始めるほどメリットが大きくなります。
- いざという時に家族を困らせないためにも、まずは身の回りの整理やエンディングノート作成から始めてみましょう。
- 終活は「自分らしい人生の総仕上げ」であり、「大切な人への思いやりを形にする活動」です。
これからの人生を、より豊かで納得のいくものにするために、「終活」をポジティブな第一歩として始めてみてはいかがでしょうか。


