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2026

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    「役職が上がれば景色も変わる」の誤解——入社1年目から貫いた「経営者目線」とフォア・ザ・カンパニーの原点

    「役職が上がれば景色も変わる」の誤解——入社1年目から貫いた「経営者目線」とフォア・ザ・カンパニーの原点

     世間ではよく、「平社員から管理職へ、そして取締役や経営者へと立場が上がるにつれて、責任の度合いが変わり、見える景色が変わる」と言われます。しかし、私に限っていえば、社長になろうが会長になろうが、見える景色は入社1年目の頃から何一つ変わっていません。立場によって困難への向き合い方を変えるなどという器用な真似は、私にはできないし、その必要もなかったのです。

     なぜなら私は入社以来、常に「自分がこの会社のオーナー(経営主)だったらどう考えるか、どう行動するか」という視点でものを見てきたからです。

     私のこの思考の原点は、生まれ育った兵庫県三木市という町の風土にあります。三木は古くから金物の中小企業や個人商店がひしめき合う町でした。私の実家も卸業の個人商店でしたし、周りにいわゆる大企業の「サラリーマン」など一人もいませんでした。目に入ってくるのは、家族や従業員を食べさせるために命懸けで商売をし、自ら全責任を背負って生きている「中小企業のおやっさん」たちばかり。彼らにとって、会社のためにどう動くかを主体的に考えるのは、呼吸をするのと同じくらい当たり前のことでした。

     そうした環境で育ったものですから、東レという大企業に入社した時、私は周囲のサラリーマン的な振る舞いに強い違和感を覚えました。同期の仲間からは「お前は新入社員のくせに、まるで社長みたいな偉そうなことばかり言っている」とよく呆れられたものです。しかし、私からすれば、会社の利益を無視して目先の自分の仕事だけをこなそうとする彼らの姿勢の方が、不自然に映ったのです。

     大企業という組織にいる人間を観察していると、誰もが「組織のため、部門のため、課のため」という言葉を口にします。しかし、その主張の裏側を突き詰めていくと、往々にして会社全体の利益ではなく、組織のメンツや、自分が傷つかないための「保身」が行き着く先になっていることが少なくありません。

     「自分の部署の立場が悪くなるから言えない」「無理な目標を立てて失敗したら責任を取らされる」。そのような個人の保身を「組織のため」という綺麗な言葉で包んでしまう傾向が組織にはあります。会社が大きくなると、こうした部門間のメンツや縦割りの壁によって、組織の活力は確実に失われていきます。

     そうした保身を一切排して「会社全体にとって、真にあるべき姿は何か」を考えれば、どんな複雑に見える問題でも、導き出される答えは常に一つしかありません。それこそが、私が入社以来一貫して大切にし、全社に徹底させてきた「フォア・ザ・カンパニー(For the Company)」の思想です。

     かつてエンジニアリング部門長時代、私が「設備費を30パーセント削減する」と掲げた時、当時の前田会長をはじめとする経営陣は大変驚かれました。当時の東レのエンジニアリング部門は非常に発言力が強く、経営トップでさえなかなか口を出せない「聖域」のようになっていたからです。彼らは「自分たちが設備を作って会社を回しているのだ」という強い自負があり、外部からの指摘を受け入れにくい空気が漂っていました。

     しかし、私はそうしたエンジニアリング部門のメンツを重視するつもりは一切ありませんでした。全社的なコスト競争力を高めるという経営者視点に立てば、無駄な設備仕様を削ぎ落とすのは当然の義務です。私は自身で徹底的に計算して削減のロジックを証明し、実行計画書を作成して営業も製造も巻き込んだ全社チームを作りました。部門の殻に閉じこもるのではなく、会社のために何ができるか。その一念で動いたからこそ、聖域を崩し、30パーセント削減という大改革を成し遂げることができたのです。

     経営者になって突然「経営者目線」を持とうとしても、一朝一夕でそのようなものが身につくはずがありません。若い時から個人の保身を離れ、自身が会社を背負っているという当事者意識を持って修羅場を踏むこと。時流や社内の空気に迎合せず、本質を射抜く経営判断を下すための強靭な背骨は、サラリーマン意識を捨て去った「経営者目線」の連続の中にしか存在しないのです。

    #東レ#東レ会長#現場主義#答えはすべて現場にある#企業共創#素材で社会を変える#日覺塾

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