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なぜ藤井聡太は勝ち続けるのか?AI時代の頂点に立つ若き天才の思考と姿勢
ビジョナリー編集部 2025/11/26
「将棋界で最も強い人は誰か?」
そんな問いに、藤井聡太の名前を挙げる方も多いのではないでしょうか。2025年11月、23歳という若さで史上最年少となる永世三冠(永世竜王・永世王位・永世棋聖)の偉業を達成しました。
なぜ藤井聡太は圧倒的な強さを誇るのか。その秘密を、棋士としての技術面から人間性まで、多面的にひも解いてみたいと思います。
「永世三冠」達成の凄み
将棋界には8つの主要タイトルがありますが、それぞれに定められた厳しい条件(例えば連続5期または通算7期獲得など)を満たした者だけが「永世」の称号を名乗ることが許されています。これは一度タイトルを獲っただけでは到達できず、長きにわたりトップ戦線で勝ち続けなければなりません。名実ともに“殿堂入り”の証であり、藤井聡太は、3つのタイトルでの永世称号獲得を史上最年少で成し遂げたのです。
竜王戦後の会見で、藤井竜王が披露した揮毫(きごう)は「不抜」という文字でした。「心の揺れを減らし、よりしっかり集中して盤上に向かっていきたい」と込めた想いを説明し、快挙達成の中でも、決しておごらず、次なる高みを目指す姿勢がにじみ出ていました。
終盤で輝く“逆転力”と詰将棋で鍛えた「読み」の深さ
藤井聡太の将棋はなぜこれほど強いのか。その最大の武器は「終盤力」にあります。将棋は最後の詰めの部分が難解で、どれだけ中盤でリードされていても、僅かな隙を突いて逆転できるのが醍醐味です。藤井はこの終盤で他の棋士を圧倒します。小学生時代から詰将棋解答選手権を6連覇し、頭の中で駒を自在に動かす力を極限まで鍛えてきました。
勝負どころで一目で詰み・詰まないを見抜く正確さ、複雑な局面でも膨大な手を一瞬で読み切る思考のスピードが、他を寄せつけません。
AI時代の申し子——独自の序盤研究と「知識のアップデート」
現代将棋において、AIを活用した序盤研究は必須となっています。かつては経験と勘がものをいう世界でしたが、いまやAIが膨大な定跡(最善とされる手順)を生み出し、棋士たちはそれらを記憶し、日々アップデートし続ける必要があります。プロの間でも「AI研究をしない棋士は生き残れない」というのが当たり前になりました。
藤井はこのAI研究の最先端を走っています。彼はAIが示す最善手をただ記憶するだけでなく、「なぜこの手が最善なのか」「自分ならどう指すか」を常に問い直しながら研究を深めています。AIの指し手を無批判に受け入れるのではなく、自らの思考力と直感を融合させる姿勢が特徴的です。
結論が出ている局面でも、藤井は「本当にこれが正しいのか」「もっと良い手があるのでは」と現場で再検証することを怠りません。彼は以下のようにも言っています。
「いくら事前に研究していても、絶対にどこかで未知の局面になります。一番重要なのはその局面でどう考え、どう対応するか。その力をつけるためにAIを使うということを意識しています」
AIの“最適解”に頼り切るのではなく、AIと自分の知見を掛け合わせて直感を磨く。この姿勢こそ、藤井を唯一無二の存在たらしめています。
記憶力・吸収力・取捨選択力——知識を「武器」に変える才能
序盤戦での強さには、藤井が持つ圧倒的な記憶力が大きく関わっています。将棋の定跡は年々枝分かれが増え続け、膨大な知識を瞬時に呼び出せなければ現代トップ棋士は務まりません。藤井はAIで得た最新の定跡や変化手順を自分のものとし、それを必要な時に自在に引き出す力に優れています。
さらに、ただ覚えるだけでなく、限られた時間で「何を調べ、何を切り捨てるか」という取捨選択の判断力も群を抜いています。やみくもに全ての局面を調べていては時間がいくらあっても足りません。藤井は、どこに研究のリソースを注ぐべきかを的確に見極め、成果につなげているのです。
中盤の「未知」への対応力と直感の研ぎ澄まし
将棋の中盤は、研究では到達できない未知の領域です。序盤の定跡が通用しなくなったとき、棋士は自らの「読み」と「形勢判断」を頼りに最善手を探します。藤井はこの中盤でも抜群の精度を誇ります。与えられた時間内でより多くの手を読み、しかもその先の局面の有利・不利を正確に見極める力が、他棋士と一線を画しています。
彼自身、高校生の頃から「AIを自分の中に取り込む」と語っていました。AIは評価値の“理由”までは教えてくれませんが、藤井は膨大な局面の評価を経験値として自分の直感に落とし込んでいます。それにより、前例のない未知の局面でも「局面の急所」を瞬時につかむことができるのです。
「罠」を仕掛ける巧みさと、逆境を跳ね返す勝負強さ
どれだけ序中盤で優勢を築いても、将棋は最後まで油断できません。藤井聡太の強さは、劣勢からの逆転劇にもあります。相手にとって最善の手を指され続ければ敗北は必至ですが、藤井は巧妙な「罠」を仕掛け、相手のミスを誘い出すことに長けています。
過去の名局でも、絶体絶命のピンチから流れを変え、相手に悪手を指させて見事に逆転勝ちを収める場面が幾度もありました。この技術は、一朝一夕に身につくものではなく、膨大な実戦経験と深い読みの積み重ねが生み出すものです。
負けず嫌いという原動力と、飽くなき向上心
藤井聡太の強さを語るうえで欠かせないのが、彼の「負けず嫌い」と「向上心」です。幼い頃は負けると盤にしがみついて泣きじゃくるほどだったと言われていますが、その闘争心は大人になった今も変わりません。大舞台で敗れたときの悔しさは、画面越しにも伝わるほどです。しかし、ただ感情的になるだけでなく、負けた将棋を徹底的に分析し、次に生かす執念も持っています。
さらに、早くしてタイトルを獲得しながらも、「もっと強くなりたい」という純粋な好奇心と上昇志向を失いません。本人は「強くなれば違う景色が見られるかもしれない」と語りますが、“現状に満足しない”その姿勢が、常に進化し続ける原動力となっています。
めぐりあわせの「運」と、人を引き寄せる力
将棋人生の節目節目で、藤井は常に素晴らしい出会いに恵まれてきました。幼い頃に将棋を教えてくれた祖母や、個性を理解し伸ばしてくれた先生、AI研究のきっかけを与えてくれた先輩棋士。研究パートナーとして最新の序盤理論をぶつけ合える同世代の強豪。こうした“運”を最大限に生かし、人を惹きつける魅力もまた、彼の強さの一部となっています。
体力と精神力——集中力を切らさない身体と頭脳
過密なタイトル戦、長時間におよぶ対局、遠征と移動の連続。
将棋のトップを走り続けるには、強靭な体力と精神力が不可欠です。藤井は、体調管理や睡眠、食生活に気を配り、1年を通じて安定したパフォーマンスを維持しています。
また、どれだけ考え続けても集中力を切らさない「考える体力」も抜群です。対局で長時間にわたり頭脳をフル回転させても、その精度は落ちません。まさに「丈夫な体と頭」が彼の活躍を根幹から支えています。
AI時代を生き抜くヒント——藤井聡太から私たちが学べること
ここまでご紹介してきた藤井聡太の強さには、現代社会で働く私たちにも通じるヒントが詰まっています。たとえば、AIやデータがあふれる今のビジネス現場で「自分の頭で考え、AIの知見をどう生かすか」は大きなテーマです。藤井は、AIの最適解を盲信するのではなく、「AI+自分」で新しい価値を生み出すことの重要性を体現しています。
また、「失敗を恐れず、そこから学ぶ」「現状に満足せず、常に進化し続ける」「困難な状況でも柔軟に対応する」といった姿勢は、どんな分野であっても成果を生み出すための普遍的な条件ではないでしょうか。
まとめ
最年少での永世三冠——この偉業の裏には、天賦の才能だけでなく、たゆまぬ努力と自己革新、そして人との出会いを大切にする謙虚な心があります。これからも将棋界の歴史を塗り替えていくであろう藤井聡太。その姿は、私たちに「学び続けること」の大切さを教えてくれます。
困難に直面しても前向きに進みたいと感じているなら、藤井竜王の歩みからヒントを得てみてはいかがでしょうか。きっと、あなた自身の“逆転の一手”につながるはずです。
※ 記事内の情報は2025年11月時点のものです。


