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「SIerから“企業や社会の変革パートナー”へ」——NTTデータ・鈴木社長が描く、AI時代の新たな勝算と「枠をはみ出す」組織論
ビジョナリー編集部 2026/03/19
2023年、持ち株会社体制への移行に伴い、国内事業会社としての新たなスタートを切った株式会社NTTデータ。2025年よりその舵取りを任されたのが、金融や公共社会基盤分野で長年実績を積んできた鈴木正範社長だ。就任直後から「3つの役割」と「3つの連携」という明快な指針を打ち出し、急速に進化するAI技術をビジネスの中核に据える同氏。従来のシステムインテグレーター(SIer〔エスアイヤー〕)の枠を超え、「企業や社会の変革パートナー」となると宣言する鈴木氏に、経営トップとしての視点、そしてAI時代における企業変革の要諦を伺った。
部分最適から全体最適へ。「3つの役割」と「3つの連携」で描く国内事業の設計図
社長に就任されてから、経営者として視座が大きく変わった瞬間はありましたか。
やはり、社長就任を知らされてから実際に就任するまでの期間、視座を大きく変えざるを得ませんでした。それまでは副社長として金融や公共社会基盤分野を預かっていましたので、分野を見渡すトップとしての視点にとどまっていました。社長に就任してから、NTTデータという会社をどう牽引していくのか。私が整理したのは、 「3つの役割」と「3つの連携」 という考え方です。
まず、私たちNTTデータ(国内事業会社)には3つの役割があります。
1つ目は、NTTデータグループの「稼ぎ頭」であること。 現在、海外売上が6割を占めていますが、収益性ではまだ日本が高い。グローバル全体が成長軌道に乗るまで、日本がしっかりと収益をリードする必要があります。
2つ目は、日本のお客様に 「グローバル水準のバリュープロポジション」を実現すること。国内5万人だけでなく、海外を含めたグループ20万人の知見を結集し、世界レベルの価値を届けることです。
そして3つ目が、 「デジタルの力で日本を元気にする」こと 。
私たちは国内IT市場でシェアNo.1となっていますが、日本の国際競争力や社会課題は山積しています。日本のリーディングカンパニーとして、課題解決の先頭に立つ覚悟です。
これらを最大限に発揮するために必要なのが「3つの連携」です。すなわち、「NTTグループとの連携」、「海外事業会社(NTT DATA Inc.)との連携」、そして「国内の事業分野を超えた連携」です。特に国内連携は重要で、今の社会課題は特定の事業分野だけでは解決できません。組織の壁を越えて連携することで、新たな解決策が見えてくる のです。
「金融×公共」の経験が確信に。組織の壁を越えた先に生まれるイノベーション
そのような経営視点を持たれるに至った、きっかけや原体験はあったのでしょうか。
金融や公共社会基盤分野を担当していた頃の経験がベースになっています。例えばコロナ禍直後、金融機関は低金利で収益確保に苦しんでいました。そこで私は「Beyond Finance」というメッセージを出し、銀行が持つ決済機能を事業会社に提供するBaaS(Banking as a Service)などの可能性を模索しました。
また、コロナ給付金の際、金融機関と公共機関の連携不足が課題になりましたが、ここをつなぐことで社会サービスは劇的に向上すると痛感しました。
最近の事例では、地方銀行協会様のプラットフォームと、マイナンバーを活用して当社が提供する「引越し手続きワンストップサービス」を連携させた事例があります。地銀の窓口で住所変更から電気・ガス・水道の手続きまで完了できる仕組みです。 自分の担当領域という「枠」をはみ出して連携すれば、社会はもっと良くなるし、ビジネスも広がる。 この確信が、現在の経営方針の根幹にあります。
チャット型からタスク型へ。りそなグループと挑む「AIネイティブ」なプロセス変革
昨今のAIの進化をどう捉え、ビジネスにどう組み込んでいこうとお考えですか。
AIは間違いなくゲームチェンジャーですが、現在は技術の「進化」に「活用」が追いついていない状況です。このままでは、AIバブルが弾けかねない。だからこそ、私たちNTTデータは 「AIの活用」を推進し、実利を提供する役割 を担わなければなりません。
鍵となるのは、「チャット型からタスク型へ」の転換 です。
現在は従業員が個別にAIを使う「チャット型」が主流ですが、それでは部分最適にとどまります。目指すべきは、AIが業務プロセスの主役となる「タスク型」です。これまでの「人が行うことを前提としたプロセス」をAIで補完するのではなく、「AIが遂行することを前提としたビジネスプロセス」を一から作り直す 必要があります。私はこれを 「AIネイティブなビジネスプロセス構築」 と呼んでいます。
その象徴的な取り組みが、りそなグループ様との取り組みです。
りそなグループ様は「AI CoE」という全社横断組織を立ち上げ、トップダウンでAI活用を推進されています。「Resona GenAI Academy」でAIネイティブな発想ができる人材を育成し、事務作業の自動化から営業活動への活用まで、抜本的な変革を進めています。
既存の業務プロセスを変えることは、現場の仕事を奪うことにもなりかねず、現場任せでは進みません。だからこそ、経営トップの強い意志と決断が不可欠 なのです。
SIerから「企業や社会の変革パートナー」へ。5年後、10年後の未来図
今後の経営戦略や、目指す会社の姿についてお聞かせください。
来年度に向けて、全社横断的に「AIネイティブなビジネスプロセス」を提案・構築できる体制づくりを進めています。2025年12月にシリコンバレーに設立した「NTT DATA AIVista」とも連携し、世界最先端の技術を取り入れていきます。
5年後、10年後を見据えると、私たちの役割は大きく変わるでしょう。これまでは「コンピューターシステムと人」で課題解決をしてきましたが、これからは「データベース+AI+人」の時代になります。極端に言えば、従来のコンピューターシステムが不要になる領域も出てくるかもしれません。
その時、私たちは単なるシステムインテグレーター(SIer)ではなく、AIを駆使して顧客のビジネスそのものを提言・実装する「企業や社会の変革パートナー」と認知される存在へと進化しているはず です。
技術は手段、目的は「人の幸せ」。次世代リーダーに伝えたいこと
最後に、これからの時代を担うビジネスパーソンへメッセージをお願いします。
AI時代だからこそ、「人と人との接点」を大切にしてほしい と強く思います。
私たちがAIやデジタルを駆使するのは、最終的に人間が生活する社会を良くするためです。つまり「ヒューマンファースト」です。
私が長く担当した金融機関の方々は「お金の力で社会を豊かにする」というミッションを持っておられました。私たちは「デジタルの力で社会を豊かにする」。道具は違っても、目指す頂は同じです。
お客様と膝を突き合わせ、人間同士で「どうすれば世の中が良くなるか」を語り合う。そこから真のイノベーションは生まれます。AIは答えを教えてくれません。リアルな人間関係の中でこそ、成し遂げたいビジョンが見つかる のです。そうした泥臭い接点を、若い世代にはぜひ大切にしてもらいたいですね。


