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2026

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    「建物を健やかに」――日本管財株式会社が推進するDXと、社会の“当たり前”を守り抜く不易流行の哲学

    「建物を健やかに」――日本管財株式会社が推進するDXと、社会の“当たり前”を守り抜く不易流行の哲学

     労働人口の減少やインフレによるコスト増など、大きな転換点を迎えている建物総合管理業界。その中で、独立系企業としての強みと先進的なIT活用を武器に、業界を牽引し続けているのが日本管財株式会社だ。半世紀以上の歴史を持ちながら、システムを自社開発して徹底した標準化とガバナンス強化を実現。さらに公共施設の包括管理業務でトップシェアを誇るなど、その事業領域は建物単体から街、そして社会全体へと広がりを見せている。「社会の当たり前を守り続ける」と語る森本和彦取締役上級執行役員(現在:日本管財ホールディングス株式会社 執行役員)に、これからの10年を見据えた成長戦略と、変化の時代を生き抜くための経営哲学を伺った。

    独立系ならではの中立的な提案と、先進的なIT投資が支える「ストック型ビジネス」

    人手不足やインフレなど環境が激変する中、独立系の上場企業として他社と一線を画している強みはどこにあるのでしょうか。

     現在、我々の業界は人材確保の困難さや人件費の高騰、さらにはインフレによるコスト増といった厳しい課題に直面しています。また、業界全体としてDXやIT活用がやや遅れている側面もあり、そこへの対応も急務です。

     そうした環境下における当社の最大の強みは、特定の資本関係に縛られない「独立系」であること です。ゼネコン系や金融機関系、メーカー系など特定の系列に属していないため、多様な企業の機能を融合するオーガナイザーとして、中立的な視点からお客様に最適な提案を行える のが大きなアドバンテージです。

     また、我々の事業は強固なストック型ビジネスです。近年は長期契約や複数年契約を積み上げることで、景気変動に左右されにくい安定した経営基盤を構築しています。

     さらに、差別化の源泉となっているのが自社開発のシステムです。契約や売上、原価などを一元管理する基幹システム「POSSibility」に加え、ここ10年ほどで施設管理専用システム「NK Connect」を導入しました。当社ではIT化の波が本格化する17年以上前から「1人1台のパソコン配布」を行うなど、IT投資を積極的に進めてきた土壌があります。自社開発だからこそ、営業サイドがすくい上げたお客様のニーズを迅速にシステムに反映し、業務の標準化とガバナンス強化を両立できているのです。

    コスト削減から「資産価値の最大化」へ。ライフサイクルを見据えたワンストップ提案

    単なる管理業務にとどまらず、顧客の期待はどのように変化しているとお考えですか。

     従来、お客様からのご要望は「単年度のコスト削減」が主流でした。しかし近年は、建物の老朽化に伴う更新投資への関心が高まり、中長期での建物運用の最適化、つまり「建物寿命の延命」と「資産価値の維持向上」へとニーズが移行 してきています。

     その中で当社は「衣食住の住を支えるサービス」という方針のもと、単年度ではなく建物のライフサイクルコスト(LCC:Life Cycle Cost)の最適化 をご提案しています。具体的には、デューデリジェンス(建物の診断・調査)を実施し、長期修繕計画の立案から省エネ提案までをワンストップで提供することで、建物の健康を維持し、収益性の向上と資産価値の最大化を実現しています。

     この高度な提案を支えているのが、先ほど触れた「NK Connect」です。このシステムを通じて、お客様と当社、そして協力会社がリアルタイムで情報を共有できます。点検結果のアップロードから修繕の見積もり、承認、決済までをシステム上で完結させることで、紙や電話ベースの属人的な業務を排除しました。DXを単なる現場の省人化にとどめず、サービスの品質を標準化し、提案の質を上げるためのツールとして活用 しているのです。

     今後は、清掃ロボットやAIカメラ、そして日本管財独自のサービス「WAFMシステム」(遠隔地にあるお客様の建物と当社WAFMセンターをオンラインで結び、365日・24時間フルタイム監視を実施するサービス )などを組み合わせ、夜間の省人化を図りながら継続的な品質を担保する仕組みをさらに強化していく方針です。

    脱炭素経営への貢献と、社会インフラとしての使命を果たす公共施設マネジメント

    環境負荷の低減や、自治体が抱える公共施設の老朽化といった社会課題には、どのようにアプローチされていますか。

     脱炭素社会への移行は、当社にとっても重要課題(マテリアリティ)の一つです。LCCの最適化や省エネ提案を通じてお客様のESG経営を支えるほか、医療施設の駐車場を活用したソーラーカーポートの提案、自社におけるEV車の導入、カーボンオフセットの実施などに取り組んでいます。さらに、森林保全や海洋保全活動を通じて、地域の継続性にも貢献していきたいと考えています。

     また、地方自治体においては、財政的な制約や建物の老朽化、専門技術者の不足が深刻化しており、民間への外部委託ニーズが全国的に高まっています。当社は自治体が保有する複数の公共施設を一括で管理する「包括管理業務」において、市場トップクラスのシェア(約46%) を誇っています。

     単一施設の維持管理から、複数施設のマネジメントへと移行する中で、自社システムや自治体向けの資産管理システムを活用したライフサイクル・シミュレーションを行い、行政負担の軽減と住民サービスの向上に努めています。今後は少子化に伴う学校の統廃合も進むため、廃校や未利用地の効果的な活用方法をご提案していくことも、我々の重要な役割だと認識しています。

    「管理は人なり」。次世代のリーダー育成と、多様な人材が活躍できる組織づくり

    技術とホスピタリティを支える人材の育成や、組織づくりについてお聞かせください。

     「管理は人なり」という言葉の通り、現場を支えるのは「人」です。当社は近年、新橋に人材育成拠点「Growth スクエア」を本格稼働 させました。この施設内には、実践的な技能向上を図るための研修施設「Greenスクエア」と、当社の歴史を学べる企業ミュージアム「Blue スクエア」を併設しています。

     これまで外部の施設を借りて行っていた模擬設備での研修や清掃の訓練を自前で行えるようにしたことで、従業員のスキルアップを加速させています。同時に、ミュージアムを通じて自社への帰属意識を高めてもらい、外部のお客様にも当社のファンになっていただけるような場を目指しました。

     また、女性職員も増加する中、育児休業の取得推進や時差勤務、在宅勤務制度の拡充など、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりを進めています。ワークライフバランスとウェルビーイングを重視し、柔軟で強靭な組織風土を醸成していく考えです。

    「建物を健やかに」。社会の“当たり前”を守り抜く、不易流行の哲学

    最後に、これからの10年を見据えた成長戦略と、経営者として大切にされている哲学を教えてください。

     今後もストック型ビジネスを軸に安定成長を継続します。公共分野での包括管理やPFI事業の拡大、独立系の強みを生かした有力企業とのM&Aやパートナーシップの構築を進めます。また、ハワイ、カリフォルニア、ミュンヘン、シドニーなどで展開している住宅管理会社のM&Aを通じて海外展開も推進し、生成AIなどを活用した一層の労働生産性向上に挑んでいきます。

     会社経営において当社が常に大切にしているのは、「次へ進むために何を変え、何を変えないのか」を問い続ける「不易流行」の姿勢 です。技術や価値観が急速に変化する現代において、現状に安住することは後退を意味します。変化を前提とし、常に次を見据えることが持続的成長には不可欠です。

     そして、当社の最も核となる矜持は 「目立たない領域であっても、社会を根底から支えているという自覚」です。 「建物を健やかに」という使命のもと、建物が健やかであるからこそ、人の営みがあり、街が動き、社会が回る。この「当たり前」を守り続けることこそが、我々の存在価値だと信じています。

     当社は建物単体から街、そして社会全体へと事業領域が広がり、常に「未来」を見据えています。その思いを「To the NEXT」というテーマに込め、これからも社会の持続可能性に貢献できる企業であり続けたいと思います。

    #不動産管理#ビルメンテナンス#日本管財#経営戦略#人的資本#生産性向上

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