黒柳徹子の軌跡:個性を信じ、時代を切り拓く“素直...
SHARE
なぜ私たちは毎年、同じ日に同じ飾りをし、同じ料理を食べるのか――クリスマスの起源と「食べ物・飾りつけ」に隠された歴史
ビジョナリー編集部 2025/12/22
「クリスマス」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。イルミネーションに輝く街、クリスマスツリー、ケーキやチキン、そしてサンタクロース――。
毎年当たり前のように繰り返しているこの光景ですが、「なぜ12月25日なのか」「なぜツリーを飾るのか」「なぜ特定の料理を食べるのか」
そう問われて、即答できる人は意外と多くありません。
実はクリスマスは、「キリスト教の宗教行事」と「古代ヨーロッパの季節行事」と「近代の商業文化」が幾重にも重なって成立した、非常に“ハイブリッド”なイベントなのです。
本記事では、「クリスマスの起源」から「食べ物」、「飾りつけ」までを一気に紐解き、「なぜ今もこの行事が世界中で続いているのか」を考えていきます。
そもそもクリスマスとは何の日なのか
「キリストの誕生日」だが、実は日付は後付けだった
クリスマスは一般に、「イエス・キリストの降誕(誕生)を祝う日」と説明されます。
しかし、重要な事実があります。聖書には、キリストが12月25日に生まれたという記述は存在しないのです。
ブリタニカ百科事典などの歴史研究によれば、12月25日が「キリストの誕生日」として定着したのは、4世紀頃のローマ帝国時代です。
当時のローマでは、冬至前後に行われる「太陽神の祝祭」や、サトゥルナリアと呼ばれる年末の祝宴といった、「異教的な冬の祭り」が広く行われていました。
キリスト教が国教化される過程で、こうした既存の祝祭文化と競合・融合する形で、「12月25日=キリスト降誕の日」という設定が採用されたと考えられています。
つまりクリスマスは、宗教的な意味と、季節を祝う文化が重なって生まれた日なのです。
冬至とクリスマス――「光が戻る日」を祝う意味
暗闇の終わりを祝う人類共通の感覚
冬至は、一年で最も夜が長い日です。古代の人々にとって、これは命に関わる重要な節目でした。
「日照時間の減少 」「作物が育たない季節」「寒さと飢えへの不安」
こうした状況の中で、「これ以上、暗くならない」「ここから再び光が戻ってくる」という冬至は、希望の象徴だったのです。
キリスト教においても、イエス・キリストは「世を照らす光」と表現されます。
冬至と重なる12月下旬に、「光の誕生」を祝う行事が定着したことは、宗教的にも文化的にも極めて自然な流れだったと言えるでしょう。
なぜクリスマスには「ごちそう」を食べるのか
冬を越えるための知恵としての祝宴
クリスマスに豪華な料理を囲む習慣は、中世ヨーロッパの生活と深く結びついています。
農業社会において、冬は収穫がなく、保存食でしのぐ季節でした。そのため、「年末に家畜を屠り、肉を分かち合う」 という慣習が生まれます。
イギリスでは中世から近代にかけて、
- ローストグース
- 牛や羊のロースト
- プディング
といった料理が、クリスマスの定番でした。
これらは単なる贅沢ではなく、「共同体で冬を乗り切るための儀式的な食事」でもあったのです。
クリスマスケーキと甘い菓子の意味
甘さは「特別な日」の象徴だった
砂糖は、長い間、非常に貴重な食材でした。だからこそ、年に一度の祝祭にこそ使われたのです。
- ドライフルーツ入りのケーキ
- ジンジャーブレッド
- ナッツや蜂蜜を使った菓子
これらは、「豊かさ」「繁栄」「来年への願い」を象徴する食べ物でした。
現代のクリスマスケーキも、単なるデザートではなく、「祝祭の名残を引き継ぐ存在」だといえるでしょう。
なぜクリスマスツリーを飾るのか
モミの木は「命が続く」象徴だった
クリスマスツリーの起源は、ドイツを中心とする北ヨーロッパの文化にあります。
冬でも葉を落とさない常緑樹は、「死の季節にあっても命は続く」という象徴でした。
当初は、
- 枝にリンゴや木の実を飾る
- パンやお菓子を吊るす
といった素朴な形でした。
これが次第に、キリスト教の「楽園」や「永遠の命」の象徴と結びつき、家庭に飾る文化として定着していきます。
オーナメントの一つひとつに意味がある
星・ボール・キャンドルの由来
クリスマスツリーの飾りには、それぞれ意味があります。
- 星
ベツレヘムの星。キリスト誕生を知らせた導きの象徴。 - 丸いボール
かつてはリンゴを模したもの。楽園と知恵の象徴。 - キャンドルやライト
闇を照らす光。希望と救済を表す。
これらは装飾であると同時に、「物語を可視化したメディア」でもあったのです。
サンタクロースはどこから来たのか
聖人ニコラウスから生まれたキャラクター
サンタクロースの原型は、4世紀の小アジアに実在した「聖ニコラウス」とされています。
彼は、貧しい人々に匿名で施しをし、子どもを守る聖人として崇敬された人物でした。
この伝説がヨーロッパ各地に広まり、やがてアメリカで現在の赤い服の姿へと進化します。
近代の広告史やメディア研究では、20世紀の広告やメディアの影響によって、「贈り物を届ける存在」として世界的に定着したと言われています。
クリスマスが今も愛され続ける理由
ここまで見てきたように、クリスマスは、
- 宗教
- 季節
- 食文化
- 家族
- 商業
が重なり合って成立した、極めて柔軟な行事です。
だからこそ、信仰の有無を超えて、国や文化を超えて、多くの人に受け入れられてきました。
現代の私たちにとってクリスマスは、必ずしも宗教行事ではありません。
それでも、「誰かと食卓を囲む」「空間を飾る」「贈り物を用意する」という行為は、人間が太古から大切にしてきた営みそのものです。
今年のクリスマスを、少し違う視点で
今年のクリスマスに、ツリーを飾るとき、ケーキを切り分けるとき、ふと立ち止まってその背景を思い出してみてください。
それは、何世紀も前の人々が「暗い冬を越えよう」と願った小さな祈りの延長線上にあります。
クリスマスとは、「過去と現在を静かにつなぐ文化の象徴」なのかもしれません。
知ることで、いつもの行事が、少しだけ豊かに見えてくる――
それこそが、私たちが歴史を学ぶ最大の価値なのかもしれません。


