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2025

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    産婦人科・小児科「異業種コラボ」の最前線──子どもと家族に“安心と特別”をもたらす新潮流

    産婦人科・小児科「異業種コラボ」の最前線──子どもと家族に“安心と特別”をもたらす新潮流

    少子化がもたらした、産婦人科・小児科の「差別化競争」

    2024年、先進国の出生率が軒並み2を下回った。日本を含む多くの国で少子化が社会構造を大きく揺るがしており、これが医療や子育て関連サービスのあり方にも波及している。

    子どもの数が大きく減少する中、「産婦人科」や「小児科」、さらには「産前産後ケア施設」では、単なる医療だけでなく、衣食住や施設環境といった“周辺サービス”の質で差別化を図る動きが目立つようになった。競争が激化するにつれ、施設ごとの特色づくりが不可欠になり、“選ばれる”ための医療と異業種の協業が加速している。

    タイ・バンコク発、最先端モデルに見る「子どもファースト」な病院づくり

    こうした潮流を象徴するのが、タイ・バンコクで誕生した総合病院「RAM2 Hospital」(グループCEO:Rukkagee Kanjanapitak)の取り組みである。

    2025年6月。グランドオープンを飾った「RAM2 Hospital」には、200名を超える著名人や現地報道陣が集まった。その注目度の高さも、“ある異色の協業”が理由のひとつである。

    記事内画像 <RAM2 Hospital>

    記事内画像
    <グランドオープンセレモニーの様子>(左)小児呼吸器科 Dr. Supakanya Kungsuwan/(中)エグゼクティブ・ディレクター Siripong Luengvarinkul/(右)三起商行株式会社 グローバル事業部 部長 齊藤雅人

    記事内画像 <タイ現地のメディアが多く駆け付けた>

    「病院が怖い場所でなくなる」仕掛け

    RAM2 Hospitalが打ち出したのは、日本発の子供服ブランド「ミキハウス」(本社:大阪府八尾市、代表:木村皓一)との協業。子どもの安心・安全、快適性を徹底追求した病院づくりの一環として、産婦人科と小児科でそのノウハウを生かすことにしたのだ。

    産婦人科(8階全フロア)では、生まれたばかりの赤ちゃんが安心して快適に過ごせるよう、ミキハウスの新生児帽子・ミトン、そして病院の要望に合わせたオリジナル肌着が導入されている。生地や縫製、着心地へのこだわりが随所に見られるという。

    記事内画像 記事内画像 <RAM2ホスピタル 産婦人科>

    また、小児科外来(1階全フロア)と小児科病室(11階全フロア)には、ミキハウスのキャラクターが随所に描かれたスペースが広がる。
    「子どもたちに“探検してみたい!”と思ってもらえる空間を」と掲げ、通院・入院される子どもが安心して明るく過ごせるよう、院内の至る所が楽しい雰囲気で演出されている。

    記事内画像 <小児科 病室(全個室)>

    記事内画像 <小児科 外来スペース>

    “ミキハウス”をパートナーに選んだ理由

    なぜ日本の子供服ブランドが選ばれたのか。
    協業の経緯について、病院のエグゼクティブ・ディレクターSiripong Luengvarinkul氏は、こう語る。

    「私たちは、お子様への特別な想いがあります。病院で生まれたお子様には最高のものを着てほしい。お子様にとって病院は“怖い”場所ではなく、“元気に明るく帰れる場所”にしたい。その想いに応えられるのは日本の子供服ブランド『ミキハウス』しかないと思い、依頼しました」

    「RAM2Hospital」とミキハウスの取り組みは、タイ国内の病院と子供関連ブランドの連携としても初の試みだという。看護師からは「こんなにも柔らかい肌着を使うのははじめて!」という声も上がり、製品の品質を含め、取り組みについて現場でも好評である。
    当院で出産した方は「(ミキハウスを以前から知っていた。)どの病院で出産するのか悩んでいた時、RAM2 Hospitalがミキハウスとコラボレーションしていることを知って、ここなら安心できると思った」と、院を選んだ理由を語った。
    子どもへの安心・安全な高品質への信頼が、「選ばれる病院」の大きな決め手となっていることがわかる。

    世界で存在感を増す「ミキハウス」ブランド

    タイの病院から国と業界を超えたオファーがあったミキハウス。その魅力はどこにあるのでしょうか。

    「子どもと家族の毎日を笑顔でいっぱいに」 との理念のもと1971年に設立したミキハウスは、子供服にとどまらず、出版や教育・子育て支援、スポーツ支援など、子どもに関する広い領域で事業を展開してきた。

    「子どものことを第一に考えた」ものづくりを原点に、創業以来、安心・安全と「メイド・イン・ジャパン」のクオリティを追求し、今やその品質と価値は日本国内外から高い評価を集めている。

    近年は、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズや、100年以上の歴史を持つニューヨークのザ・プラザホテルなど世界的なランドマークからもオファーを受け旗艦店が誕生。2025年7月現在で、ロンドン、パリ、上海、バンコクなど、世界17の国・地域で107店舗を展開し、世界中の子どもと家族に高品質な商品とサービスを届けている。

    加速する“子ども視点”協業――ホテル・リゾートにも広がる波

    出生数が減っている中、「子どもにより良いものを与えたい」というニーズは日本国内でも高まっている。

    たとえば、日本最大級の産後ケアホテル「マームガーデンリゾート葉山」では、「赤ちゃんの体とママの心がゆっくりと成長していく時期に、ホテル滞在中の赤ちゃんに良いものを着させてあげたい」という想いからミキハウスと協業。赤ちゃんの院内着としてオリジナル肌着を開発し、産後セミナーを共催するなど、新たな価値創造に取り組んでいる。
    他にもコラボルームや赤ちゃんの退院ギフトの用意など、利用者のニーズに合わせて、赤ちゃん・家族双方にとって満足度の高い体験を提供するための協業の動きが日本中の産院、産前産後ケア施設で広がりつつある。 記事内画像 <ミキハウス×マ―ムガーデンリゾート葉山 オリジナル肌着>

    一方、ホテル業界でも、このような“子ども目線”のサービス強化が急速に進んでいる。
    代表的なラグジュアリーホテル、ザ・リッツ・カールトン大阪は、「お子さまにいつまでも心に残るご滞在をご提供したい」と考え、ミキハウスとコラボした「ミキハウス エクスペリエンスルーム」宿泊プランを、2025年8月1日(金)から10月31日(金)まで期間限定で提供する。一流ホテルならではの優雅な雰囲気の中で、キャラクターのデザインやプレイスペース、お子さま向けのプレゼントなど、非日常の空間で「子どもにとっての楽しさ」と「家族にとっての安心・快適さ」の両立を図っている。 記事内画像 記事内画像 <ザ・リッツカールトン大阪 ミキハウス コラボレーションプラン>

    別府温泉 杉乃井ホテルでも、空間全体をミキハウスとのオリジナルデザインで飾るコラボルームやプレイウォールを導入。温泉リゾートホテルでの家族連れの宿泊体験の中にも、大人の心地よさと共に、子どもの「安心・安全」「楽しさ」を追求した新たなホテル体験を目指し、子供服ブランドとのB to Bの取り組みを拡大している。 記事内画像 <別府温泉 杉乃井ホテル ミキハウス コラボルーム>

    “少子化”が生み出す新たなビジネスチャンスと価値観の変化

    子供関連の各業界では、人口減少という逆風に直面しながらも、同時に新たなチャンスも生まれている。少子化が進む一方で、「一人の子どもをより大切に育てたい」という親の想いは強まり、子ども一人当たりにかけるお金も年々増加する傾向にある。産婦人科や小児科、産前産後ケアなどの子供関連業界や、ホテルなどでの子供関連サービス全体が“質”で勝負する時代が到来したといえる。

    子供服ブランドと医療機関、宿泊施設が連携する動きは、まさに現代の子育てニーズに対応した新たなサービス創出の象徴だ。今後も業界の垣根を越えた協業によって、家族の安心や子どもの成長を支える付加価値型サービスはさらに広がっていくだろう。

    #少子化#産婦人科#小児科#BtoB#協業#子供服#アパレル#グローバル#タイ
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