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#04商売の極意は「三方良し」 100年先を見据える長期視点の経営
野本弘文 2026/05/04
お客さまはなぜ、わざわざ店に足を運んでくださるのでしょうか。それは価格の安さだけではなく、そのお店に来て良かったと感じる「価値」を認めてくださるからです。商売のベースにあるべきものは、至極単純なことですが、「お客さまに損をさせてはいけない」という一点に尽きます。
これもまた、私が小さい頃から両親に繰り返し言われてきた教えでした。「他人に損をさせて自分が儲けたと思ったら、翌日からお客さまは来なくなるよ」と。商売を継続させるためには、自分が若干損をしたかなと思うくらいに相手に尽くさなければ、信頼は得られないのです。いわゆる「三方良し」の精神ですが、これこそが商売の極意であると、私は今でも信じております。
日本には100年を超える老舗企業が数多く存在します。世界でも100年以上続く企業のおよそ4割は日本企業だと言われるほどです。なぜこれほどまでに永続できるのか。それは、かつての日本には「家制度」という文化があり、自分の孫やその先の代まで家を繁栄させていくために、今何をなすべきかという「長期的な思考」が根付いていたからだと思います。
最近の経営を見渡すと、短期的な利益を追求する風潮があると感じております。短期的な数字を優先すると、本来未来のために行うべき設備や人への投資が疎かになりかねません。
近頃ではコーポレートガバナンスなどの名のもとに、利益の多くを配当として還元という向きもあります。しかし、今ある会社の価値や利益の源泉は、先代たちが100年かけて積み上げてきたものです。配当ももちろん重要なことですが、分配することだけを重視することが果たして正しい姿でしょうか。創業者は皆、自分が退いた後も成長し継続することを願うものですが、創業家以外のトップが長く続くと、こうした長期の視点は薄れがちです。2022年、東急グループは100周年を迎えましたが、これから次の50年、100年先も成長し続けるためには、長期的な視点が必要です。それが「三方良し」につながると考えています。
私たちは、100年を受け継いできた重みを自覚し、さらに100年先を見据えた経営を実践していかなければなりません。幼い頃に両親の背中を見て学んだ「相手に尽くし、継続を尊ぶ」という商いの真理は、今でも、私の心の中で、確固たる指針となっております。


