「検討はやめて、まずやってみろ」——開業25周年...
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ご挨拶~執筆にあたって~
日覺 昭廣 2026/06/01
私は、1973年に東レに入社して以来、素材メーカーとしてのモノ作りの現場にこだわってきました。
何か解決すべき問題が発生したとき、モニター越しにデータを確認したり、何かの文献や資料だけに頼ったりすることでは決して解決はできません。まずは、その現場に赴き、現状を徹底的に分析することが重要です。
現状を分析し、原因を徹底的に究明する、そうすれば自ずと解決策が見えてきます。現状分析をせず、とにかく対策を立てようとする「対策先行」になりがちですが、それでは真の解決はできません。まずは現場に行くこと、答えはすべて現場にあります。
そして、常に基本に忠実であることです。基本に忠実に、あるべき姿を目指して、やるべきことをやる。自らの夢や理想を実現するためには、基本をおろそかにしてはダメで、常に基本とは何かを問うことが必要です。その上で、目の前にあるできそうなこと、できることをやるのではなく、やるべきことをやる、その姿勢で私はこれまで会社人生を過ごしてきました。
この考え方は、組織運営でも同じことが言えます。
「これまでこうしてきたから」「あの人がこう言っているから」と言って押しつけても人は動きません。まずは、なぜこうなっているのか、なぜそういうことをしているのかを知ることが必要です。人は誰でも、言葉や行動には理由があります。普通は、会社で働いている以上、良かれと思って行動しているはずです。人は皆、自分の信じる正しいことをやっているのです。だから、その理由を徹底的に知らなければなりません。そして、「では、こうしてはどうだろう」と提案する。こちらも、現状と理由をすべて分かった上での提案なのでお互いに納得して進むことができます。これは、日本人に限らず世界中共通のことだと思います。東レという会社は早くから海外に事業を展開していますが、現地のスタッフの声をよく聞いて、優秀な人材は積極的に登用するという考えで運営してきたので、今では世界中に優秀な現地人の幹部たちが育っています。
また、東レは素材メーカーですが、素材には社会を本質的に変える力があります。薄くても暖かい服、燃費の良い飛行機、電気で動く自動車、薄型のテレビ、今や生活に欠かせないスマートフォンなど、世の中を快適に、便利にしてきた背景には素材の進化があります。
素材メーカーは、加工度の高い最終製品メーカーと比べると相対的に売上高は小さくなります。しかし、社会に与えるインパクトは桁違いです。その意味で私は、素材メーカーであることの誇りを持つようにと、常に社内に言ってきました。そして、本当に価値のあるものに対しては相応の対価が支払われること、それによってさらなる新しい研究開発投資が生まれ、新しい先端素材の開発につながる、それが、東レなど素材メーカーにとってあるべき姿だと信じています。
この度は、ダイヤモンド・ビジョナリーでの連載という機会をいただき、とてもありがたく思います。私もあらためて、自分のこれまでを振り返り、新たな発見が得られることを期待しています。


