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2026

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    「変えないこと、変わること、変えること」――アイリスオーヤマ・大山社長が語る、普遍の理念と時代に合わせた組織変革のメカニズム(前編)

    「変えないこと、変わること、変えること」――アイリスオーヤマ・大山社長が語る、普遍の理念と時代に合わせた組織変革のメカニズム(前編)

     東日本大震災での支援やお米の精米事業への参入、コロナ禍におけるマスクの増産、そして昨今の人手不足に対するロボットソリューションの提供など、日本の社会課題へ真正面から向き合い、それを成長エンジンへと変えてきたアイリスオーヤマ。2018年にバトンを引き継いだ大山晃弘社長は、実質的な創業者である大山健太郎会長のDNAをどのように受け継ぎ、進化させているのか。毎週月曜日に開催される「新商品開発会議」の裏側から、全社員がジャーナリストとなる独自の仕組みまで、同社が誇る「変化対応」の深層に迫る。

    経営の原点にある5つの企業理念。「ユーザーイン」と「ジャパン・ソリューション」を守り抜く

    2018年に社長を引き継がれてから、まもなく8年を迎えます。大山会長から継承し、これだけは絶対に譲れないと守り抜いている「アイリスオーヤマの経営の核」とは何でしょうか。

     私が社長に就任した際、社内外に向けて「変えないこと、変わること、そして変えること」という3つの軸をお話ししました。この中の「変えないこと」こそが、私たちの経営の核であり、会社のアイデンティティそのものです。

     具体的には、私たちが掲げる5つの企業理念 に集約されています。

    • 第1条: 会社の目的は永遠に存続すること。いかなる時代環境においても利益の出せる仕組みを確立すること。
    • 第2条: 健全な成長を続けることにより社会貢献し、利益の還元と循環を図る。(地域社会への貢献)
    • 第3条: 働く社員にとって良い会社を目指し、会社が良くなると社員が良くなり、社員が良くなると会社が良くなる仕組みづくり。
    • 第4条: 顧客の創造なくして企業の発展はない。生活提案型企業として市場を創造する。
    • 第5条: 常に高い志を持ち、常に未完成であることを認識し、革新成長する生命力に満ちた組織体を作る(現状に満足しない上昇志向)。

     
     この5条の中には、私たちの代名詞である「ユーザーイン(消費者目線)」、変化に対応する 「変化対応」、そして社会課題を解決する 「ジャパン・ソリューション」というすべての要素が含まれています。これらは、崩れてしまえばすべてが駄目になってしまう、絶対に守るべき普遍の哲学です。

     とりわけ「ジャパン・ソリューション」に関しては、東日本大震災の時に大変な経験をし、多くのご支援をいただいたことへの「恩返し」が原点にあります。原発が止まった際のLED増産、被災した農家の方々を支援するための精米事業への参入、技術者の海外流出に対し、日本の家電メーカーのエンジニアを積極的に雇用し活躍の場を創出した家電事業参入、さらにはコロナ禍での日本国内におけるマスク生産、労働力不足に対するロボティクス事業の展開と、私たちは常に社会的な課題へ真正面から取り組んできました。

     社会貢献を事業化し、しっかりと収益化させることで、結果として企業としての成長にも繋がる。この「社会貢献と事業成長の好循環」こそが、公共財としての企業の在り方だと実感しています。

    危機の時ほど、企業の底力や継続する力が試されますね。

     私たちは、基本を徹底して繰り返し行うことを大切にしています。非常に愚直で、一見すると旧態依然とした進め方に見えるかもしれませんが、この「繰り返す力(継続は力なり)」は、いざ危機や大きな変化に直面した時に絶大な強みを発揮します。順調な時はどの企業もうまくいきますが、逆風が吹いた瞬間にこそ企業の底力の差が出るのです。

    信念は変えずに手法を変える。BtoB領域への拡大とタイムスケールの変革

    生活者向けのBtoCビジネスで圧倒的な成功を収めてきた貴社ですが、近年はBtoBやグローバル領域、さらにはロボットなどの先端分野へ急速に拡大しています。この領域拡大に伴い、創業以来の哲学をどのようにアップデートされているのでしょうか。

     基本となる「ジャパン・ソリューション」の哲学はBtoB領域でも完全に一貫しています。ただ、「信念は変えないけれど、それを実現するための手法は柔軟に変える」というスタンスを徹底しています。

     従来のBtoCは、作ったものを小売店様に販売して使っていただく「物販ビジネス」であり、ビジネスマネジメントのサイクルが非常に短い世界でした。一方で、BtoBやロボット事業となると、お客様との付き合いは非常に長期にわたります。そのため、ロボットを売って終わりではなく「サブスクリプション(定額課金)」で提供し、長期的な関係性の中でアフターフォローを行うビジネスモデルへと転換しました。

     当然、ビジネスモデルが違えば、組織体制、KPI、会計経理の手法や表現方法も過去のBtoCのコピーでは通用しません。私自身、取締役時代からBtoBの立ち上げに関わってきましたが、当初はBtoCのハイスピードな評価軸をそのまま適用しようとして、すぐに結果が出ないことに非常に苦しみました。

     法人対法人のビジネスは、参入のハードルこそ高いですが、すべての取引において質を高め、中長期的な信頼関係を築くことができれば、継続性は極めて高くなります。つまり、評価のタイムスケールを短期間から「中長期」へと変更すること 。これが、BtoB領域への進出にあたって私たちがアップデートした重要な視点です。

     今では食品事業や家電のサブスクリプションサービスなど、さらに異なるサイクルを持つ事業も展開していますが、「過去の成功体験を無理に別の事業へ適用(アプライ)しない」という教訓が生きています。これは、私がかつてのアメリカや中国での駐在経験を通じて、国や文化が違えば人の考え方も多様であり、こちらのやり方を押し付けるのではなく現実に合わせて柔軟に対応すべきだと学んだことにも通じています。

    否定NGの「アイ ラブ アイデア会議(ILI会議)」。時代に合わせて進化する開発プロセス

    アイリスオーヤマの代名詞といえば、毎週月曜日に社長をはじめ経営陣が自ら出席する「新商品開発会議」です。即断即決を貫くこの会議において、GOやNOを出す判断基準は何でしょうか。

     判断基準を端的に言えば、「見たときに直感的に分かるかどうか」です。私自身が一消費者として見たときに、一瞬で良さが伝わらない商品は、店頭に並んだ時にお客様に選ばれるはずがありません。プレゼンテーションの限られた時間の中で、グッと引き込まれる魅力があるかどうかが一つの大きな基準です。

     ただ、世間の皆様がイメージされている「即断即決でYESかNOかを下す場」という実態とは、少しニュアンスが異なります。実は、会議に提出されるのは最終成果物ではなく、 「GO(OK)」か「修正してブラッシュアップ」というケースがほとんど で、完全なNG(お蔵入り)になることは月に数件あるかないかです。

     例えばほうじ茶の提案があった際、ただ「市場がないからダメだ」と却下するのではなく、「やりたい意図は分かった。では競合他社に対してどういう立ち位置を狙うのか、ターゲットは誰なのか、視点を修正してもう一度持ってきなさい」と促します。アイデアは面白いけれど価格帯や販売チャネルが合わなければ、「自社製造ではなくOEMにしてみてはどうか」というように、修正の提案を重ねて商品と人間を同時に育てていく場所なのです。

    時代に合わせて、その新商品開発会議の進め方自体も変えられているそうですね。

     はい、現在は新商品開発会議のプロセスを大きく変革しています。今の時代、組織が巨大化し、働くメンバーが増える中で、比較的「引っ込み思案」な若い世代が増えていると感じています。決裁会議のように「あなたのアイデアはここがダメです」と明確にNOや修正を突きつけられる環境ばかりだと、どうしても萎縮してしまい、今の時代性にもそぐわなくなってしまいます。

     そこで、従来の「商品決裁の会議」とは別に、 アイデアを出すための前段階の会議として「アイ ラブ アイデア会議(通称:ILI会議)」を新設 しました。

     この会議のルールは「否定をしないこと、NGを出さないこと」です。生煮えのアイデアで構わないから、まずは忌憚のない意見を出してみなさいと。新卒や若手を含め、営業や海外部門など多様なバリエーションのメンバーからスライド1~3枚程度の手軽さで提案を募っています。

     YESかNOかの決裁会議だけをやっていると、人間はどうしてもリスク回避に走り、「他社でこれが売れているから」というような実績のある商品の踏襲(横展開)ばかりになってしまいます。それでは本当に面白い商品は生まれません。「否定をしない場」を作ったことで、これまでの商品会議では絶対に出会えなかったような、独創的なアイデアの種がゴロゴロと集まるようになり、商品開発の絶対量をさらに増やすことに成功しています。

    全社員が「ジャーナリスト」となる電子日報のような「ICジャーナル」が、世界基準のスピードを生む

    「変化対応」を能動的に起こし、世界基準のスピードを手にするために、組織としてどのような仕掛けをされているのでしょうか。

     根底にあるのは、先ほども申し上げた週次・月次のサイクルでPDCAを愚直に回し続ける基礎力です。その上で、社内ではよく「クイック&スモールスタート」という言葉を使っています。新しいアイデアがあれば、まずは小さく、とにかくすぐにやってみる。いわゆる「POC(概念実証、トライアル)」を繰り返し、うまくいけば大きく育て、だめならすぐに捨てる。このサイクルを高速で回すことが、スピード経営の条件です。

     そして、このスピードを支える最大の情報インフラが、私たちが30年近く前から伝統的に続けている「ICジャーナル」という制度です。

     もともとは手書きの業務日報を社長室で集約し、経営者に伝える仕組みでしたが、それを完全にウェブ化し、全社員に毎日書かせています。特徴的なのは、経営層だけでなく、管理者層や一般社員も含めて「部署を超えて全社で閲覧できる」という点です。他の部署が今何をやっているのか、先輩がどういう動きをしているのかがリアルタイムで共有されます。

    単なる「今日やったことの事実の羅列」ではなく、独自の工夫があると伺いました。

     そこが重要です。単なる「デイリーレポート(報告書)」ではなく、あえて「ジャーナル(日誌)」と呼んでいるのには意味があります。レポートは事実の羅列ですが、ジャーナルには書く本人の「見解」や「気づき」が含まれなければなりません。

     社員には「あなた方は一人ひとりがジャーナリストなのだ」と伝えています。例えば営業に行って「商談がダメでした」と事実だけを書くのは禁止です。なぜダメだったのか、バイヤーの反応はどうだったのか、強力な競合がいたのか、いたとすれば何が評価されていたのか。小売店様やお客様が今何を求めているのかを深く汲み取り、自分の見解をコンパクトにまとめるよう文字数制限を設けて記述させています。

     正直、私自身も入社当初はこのジャーナルを書くのが非常に辛く、パソコンの前で30分以上固まることもありました(笑)。しかし、事実と見解を整理してアウトプットする習慣は、ビジネスパーソンとして圧倒的な成長の訓練になります。

     現在では、この蓄積された膨大なジャーナルのデータをAIの力も借りながらブラッシュアップし、ノイズを排除して必要な情報を瞬時に経営判断へ生かせる仕組みを構築しています。「特定の商品」や「特定の企業名」で検索すれば、過去の商談履歴やクレーム、お客様のニーズの傾向がずらりと浮き彫りになる。この全社的な知の共有こそが、私たちの「変化対応」と「スピード」の源泉なのです。

    #アイリスオーヤマ#大山晃弘#経営哲学#リーダーシップ#企業理念#社会課題解決

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