「カリスマ経営からの脱却と、2030年へのゼロ次...
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常識破りの「スカート販売」から台湾進出へ。ワークマン 大内康二新社長が語る、現場主義と「エッセンシャルストア」の未来
ビジョナリー編集部 2026/06/17
プロの職人向け作業服店から、アウトドアやカジュアルウェア市場へと鮮やかな転身を遂げ、人々の生活に欠かせないインフラになりつつあるワークマン。同社を牽引する大内康二代表取締役社長は、新卒入社後、スーパーバイザーとして15年間全国の店舗を駆け回った、現場を知り尽くす叩き上げの社長だ。
「ワークマンプラス」や「ワークマン女子」といった数々のヒットを生み出してきた商品開発の裏側から、失敗を個人の責任にせず「仕組み」の改善に繋げる独自の組織風土、そして初の海外出店となる台湾進出の狙いまで。次なるステージへと向かうワークマンの挑戦と、地域社会になくてはならない存在を目指す「エッセンシャルストア」構想について話を伺った。
全国を飛び回ったスーパーバイザー時代。認知度ゼロからの泥臭い挑戦
新卒からワークマン一筋とのことですが、これまでのご経歴や、現場で苦労されたエピソードについて教えていただけますか。
新卒でワークマンに入社し、約15年間はスーパーバイザーとして全国の店舗を回りました。家族で8回ほど引っ越しを重ねながら、新規地区の立ち上げなどを数多く担当してきました。その後、店舗を開発する部署を3年経験し、商品本部へと移りました。商品本部時代には「ワークマンプラス」の立ち上げ期を迎え、自社で企画・製造するプライベートブランド(PB)をいかに一般のお客様へ広げていくかという最前線に立ってきました。
振り返ってみると、歴代の社長の中でも、私が最も長く店舗運営に関わってきた のではないかと思います。スーパーバイザー時代は新規出店エリアを担当することが多かったのですが、当時はまだワークマンの認知度が低く、「ワークマンって何?」と言われる時代でした。コンビニと間違えて入ってくる方がいるほどで、日中は駐車場に車が1台も止まっていないことも珍しくありませんでした。九州などの新規エリアでは、電話帳で建設業者のリストを調べてダイレクトメールを送ったり、飛び込み営業をしたりと、泥臭い営業活動も経験しました。苦労も多かったですが、現場で汗を流した経験があるからこそ、既存の店舗に対する強い思い入れを持っています 。
常識を覆した「スカート」の発売。予期せぬ使われ方がヒットの原点に
ワークマンといえばプロの職人向けという印象でしたが、一般向けの商品へと展開を広げられたきっかけは何だったのでしょうか。
私が商品本部長を務めていた際、一般のお客様に向けたタウンウェアや女性衣料の展開を推し進めました。当時のワークマンでスカートやキャミソールを売るというのは非常に衝撃的で、社内でも「お前、ワークマンなんだから……」とあっけにとられるほどでした。
しかし、他社と差別化できる機能性を付加して販売を続けるうちに、あっという間に大きな売上のボリュームを占めるようになったのです。また、SNSなどの普及によって、我々が意図して作ったものとは全く違う使い方をお客様が発見してくださるようになった ことにも気づきました。
たとえば、厨房用の滑りにくいシューズを妊婦さんが転倒防止のために履いたり、溶接作業用の火に強い綿のヤッケをキャンパーが焚き火用に購入したりといった現象です。こうした意外な使われ方を強みとして打ち出していこうという発想の転換が、「ワークマンプラス」誕生の大きなきっかけとなりました。
プロ向けと一般向けを分ける「専売化」と、マス市場への挑戦
既存のプロ向け商品と、一般向けのカジュアルウェアは、今後どのように展開していくお考えですか。
一時期、一般向けの製品に注力しすぎたことで「ワークマンはプロの職人を見捨てたのか」と言われたこともありました。我々にそのつもりは一切ありませんでしたが、職人さんに寄り添うという原点回帰として、徹底的な低価格と高機能を維持する「ワークの強靭化」を進めています。
一方で、一般向けのカジュアルウェアを中心に扱う「ワークマンカラーズ」の店舗も増えています。以前は同じバイヤーが両方を担当していましたが、現在はプロ向けと一般向けでバイヤーを完全に分け、それぞれのテイストに合わせた 「専売化」 を進めています。将来的には、同じ敷地内にプロ向けと一般向けの2店舗が別々に並んで成り立つような商売にしていきたい と考えています。
また、現在力を入れているのが、リカバリーウェア(疲労回復を促すウェア)のようなマス市場向けの製品です。発売当初は、洗い替えや家族の分までまとめ買いされるお客様が多く、想定をはるかに超えるスピードで完売してしまいました。こうした大規模な商品の生産と在庫のコントロール、つまり「アクセルとブレーキの踏み分け」は、経営を大きく左右します。社長として、このマス化製品政策を必ず成功させたいと考えています。
「仕組みが悪い」と考える組織風土と、自ら資料を作るトップの姿勢
社内が非常に開放的で風通しが良い印象を受けます。マネジメントにおいて意識されていることはありますか。
もちろん会社として目標となる数字やノルマはありますが、未達成だった時に個人や特定の部署を責めるようなことはしません。 「売上がいかないのは仕組みが悪いからだ」 と考え、どうすればその仕組みを良くできるのかを全員で考える風土が浸透しています。
また、社内では役職にかかわらず、フロアのあちこちで立ち話をしてコミュニケーションを取っています。私自身、人に何かを伝えるための資料は、社長になった今でも自ら作成しています。より正確に、短時間で相手に意図を伝えるためには、人に頼むよりも自分で作るのが一番だからです。
社員には「自分のやりたいようにデータを管理していい」と伝えています。無理にフォーマットを統一させると、二度手間が発生して無駄が生まれてしまうからです。管理する側がそれぞれの個性を読み解くのは大変ですが、上に立つ人間が気を配りながらリーダーシップを発揮することで、社員一人ひとりが自分で考えて行動できる組織になる と考えています。
初の海外進出、そして地域になくてはならない「エッセンシャルストア」へ
今後の展望として、海外進出や、ワークマンが目指す店舗のあり方について教えてください。
マス化製品政策を成功させたその先には、海外出店を見据えています。第一弾の出店先は台湾に決定しました。台湾は温暖でスコールが多く、冬にはダウンジャケットも売れる気候です。
さらに、社会インフラとしてバイクが普及しており、アウトドアブームも起きているため、我々の高機能ウェアと非常に親和性が高いと確信しています。そしてもう一つ、私が今後の目標として強く掲げているのが 「エッセンシャルストア」 という構想です。これは単に生活必需品を売る店という意味ではありません。アパレル企業の多くが首都圏に出店を集中させる中、我々は地方の過疎化が進むようなローカルエリアにも積極的に出店しています。その地域で生きていくために「なくては困る」と感じていただける機能的な商品を提供し続けることで、店舗そのものの存在価値が地域社会にとってエッセンシャル(必要不可欠)なものになる と信じています。
今後も、地域の皆様に愛され、生活インフラとして根付く店舗づくりに挑戦し続けていきます。


