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韓国で「スローランニング」が人気な理由と意外な落とし穴とは
ビジョナリー編集部 2026/09/11
韓国でトレンドとなっているのが、ゆっくりとしたペースで走る「スローランニング(スロージョギング)」です。SNSを開けば「#오운완(今日運動完了)」のハッシュタグとともに、笑顔で会話をしながら走る若者たちの姿が溢れています。
本記事では、人気の背景や、急拡大に伴って現地で浮き彫りになっている社会的課題までを分かりやすく解説します。
歩くスピードで走る?スローランニングの基本
「隣の人と笑っておしゃべりできる低強度」を保ちながら行う走法のことを、スローランニングと呼びます。速度の目安は時速4〜6km程度で、人によっては「早歩き」とほとんど変わりません。タイムを縮めることや長距離を走破することを目的とせず、心拍数を上げすぎない状態で有酸素運動を続ける点に特徴があります。
一般的なランニングは、着地時に体重の3〜4倍もの衝撃が膝や腰にかかると言われています。しかしこの方法では、歩幅を小さくして足裏全体または前足部で着地するため、関節への負担が軽減されます。「ゼーゼーと息が上がる苦しさ」や「怪我のリスク」を減らした、新しい運動スタイルと言えます。
なぜ韓国で大ブームに?若者の心を掴んだ要因
なぜ今、韓国で「速さを求めないランニング」が定着しているのでしょうか。背景には、意識変化とSNS文化の融合があります。
熾烈な競争社会からの解放と「ゆるさ」の追求
過酷な受験や就職活動、職場での成果主義など、常に比較と評価にさらされる韓国のZ世代にとって、スポーツまで「タイムや順位」を競うことは大きなストレスでした。誰かと競う必要がなく、「頑張りすぎなくていい」スローランニングは、疲弊した若者たちの自己肯定感を優しく満たす癒やしの手段となったのです。
SNS(Instagram・TikTok)での「映え」と自己投資
韓国では、日々のトレーニング成果をSNSに投稿するヘルシーなライフスタイルがステータスとなっています。ゆるやかな速度で息が上がらないため、走行中も綺麗な表情で動画や写真を撮影できます。おしゃれなスポーツウエアを着こなし、楽しく走る姿を投稿する流れが定着しました。
「ランニングクルー(サークル)」文化の加熱
個人で走るだけでなく、「ランニングクルー」と呼ばれるコミュニティに所属して楽しむ傾向があります。同じペースでゆっくりと走り、終了後にカフェでおしゃべりを楽しむイベント感覚が、新しいサードプレイスとして機能しています。
スローランニングの主な効果
科学的にも以下のようなメリットが存在します。
- 高い脂肪燃焼効果: 心拍数を低く抑えた有酸素運動は、脂肪を優先的にエネルギーとして消費します。ハードな運動よりも無理なく脂肪燃焼ゾーンを維持できるため、ダイエットに向いています。
- 膝や関節への負担が少ない: 着地衝撃が弱いため、運動経験が少ない人や体重が気になる人、シニア層でも安全に取り組むことができます。
- 挫折しにくく継続できる: 「つらくない」からこそ毎日続けられます。運動の定着において重要な「継続性」を自然と獲得できます。
- 脳の活性化とメンタル改善: 低強度の運動は脳の血流を適度に促進し、ストレスホルモンを低減させます。運動後の爽快感も得られるのが強みです。
光と影:急拡大に伴う「マナー悪化」と社会的課題
爆発的なブームの裏側で、韓国内では深刻な摩擦も発生しています。
最も問題視されているのが、「公道の占有」です。数十名規模の集団が横に並んでゆっくり走ることで、歩道や公園のコースを塞いでしまい、一般の歩行者が通り抜けられないという苦情が相次いでいます。
さらに、夜間の住宅街で集団で大声を出しながら走ったり、スピーカーで音楽を流したり、フラッシュを焚いてグループ写真を撮影したりするマナー違反も報告されています。
これを受けてソウル市をはじめとする一部の自治体では、公園内での「大規模集団走行の制限」や「並列走行の禁止」といったガイドラインの策定に乗り出しており、「カルチャーとしての成熟」が試される局面を迎えています。
終わりに:時代が求める新しい健康習慣
韓国で巻き起こっているブームは、「心地よいペースで自分の心身を大切にする」という新しいライフスタイルへのシフトを象徴しています。
マナー改善などの課題は残されているものの、運動のハードルを下げ、多くの人が健康的な生活を踏み出すきっかけを作った面は、評価されるのではないでしょうか。


