
「注目バイアス」が武器になる理由──情報を“引き...
8/2(土)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/07/28
「自分はきっとうまくいくだろう」「このプロジェクトも難なく乗り切れる」。ビジネスの現場で、そんな“根拠のない自信”に満ちあふれた同僚や上司に出会ったことはありませんか? あるいは、自分自身も新たな業務や役割に挑戦したとき、「自分ならできるだろう」と感じた経験があるかもしれません。
しかし、その「自信」、本当に正しい自己評価でしょうか?
実は、誰もが知らぬ間に陥りやすい“認知のワナ”が存在します。それが今回ご紹介する「ダニング=クルーガー効果」です。
ダニング=クルーガー効果とは、能力や知識が十分でない人ほど、自分を実際以上に高く評価してしまう心理現象です。これは、アメリカの心理学者デヴィッド・ダニング氏とジャスティン・クルーガー氏の研究から名付けられました。
「スキルが足りない人ほど、自分の実力や他者の実力を正しく認識できない」という仮説のもと実験を行い、以下の状態を辿っていくことを示しました。
例えば、入社して数ヶ月の新入社員が、業務マニュアルを一通り学び終えた後、「仕事って意外と簡単だな」と過信してしまう場面があります。しかし、実際に現場配属され、経験豊富な先輩たちのパフォーマンスを目の当たりにしたとき、「こんなにもできないなんて」と気づき、最初の自信が無くなってしまう。
この流れこそが、ダニング=クルーガー効果の典型です。
また、運転免許を取得して数年が経ったばかりのドライバーが、「自分はもうプロ並みだ」と根拠なく自信満々で運転し、油断から事故につながるケースも。慣れが自信につながる一方、本当の危険や自分の力量不足に気づかない──これもまた、ダニング=クルーガー効果の表れです。
一方で、「周囲は高く評価しているのに、自分は全く自信が持てない」というインポスター症候群も存在します。能力の高い人ほど「自分は運が良かっただけ」「周りの人や環境のおかげ」と自分を過小評価して、周りを騙していると感じてしまいます。インポスターは「詐欺師」という意味です。
この現象の根底にあるのは、「自分が何を知っていて、何を知らないか」を客観的に把握する力が不足していることです。スキルや知識が未熟な段階では、そもそも自分が知らないことを認識すること自体が困難なのです
また、他者からのフィードバックを受け入れない、失敗の原因を自分以外に求める(他責思考)といった態度も、自己評価の歪みを助長します。「自分は間違っていない」と思い込むことで、現実と自己評価のギャップがますます広がるのです。
根拠のない自信は、
といった深刻な問題を引き起こします。
自信過剰な態度は、周囲に「高圧的」「上から目線」と受け止められ、
など、コミュニケーション面での摩擦や孤立を招く危険性もあります。
「自分だけは大丈夫」「失敗しない」という思い込みは、投資や経営判断でも致命的です。
といった被害者になってしまうことさえあります。
ここまでマイナス面が目立つダニング=クルーガー効果ですが、実は「根拠のない自信」が、時にはビジネスの推進力になることも事実です。
たとえば、新規事業や未知の領域へのチャレンジには、多少の楽観や「自分ならできる」という思い込みが必要な場面もあります。
大切なのは「自信」と「現実」のバランスを見極めることです。
ダニング=クルーガー効果は、誰もが少なからず陥る認知バイアスです。
「自信満々な人ほど、実は危ない」
この事実を知っているかどうかで、キャリアやビジネスの成否が分かれる場面もあるでしょう。
根拠なき自信は時に推進力になりますが、過信は成長や成功を阻害しかねません。だからこそ、「自分はまだ分かっていないかもしれない」「他者の意見にも耳を傾けよう」という謙虚さを忘れず、客観的な自己評価と学びの姿勢を持ち続けることが重要です。
ぜひ、今日から「自信」に頼りすぎず、「実力」を磨き続ける自分を目指してみてください。きっと、あなたの仕事や人生が一段階アップするはずです。