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9/24(水)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/09/22
日本の近代化に大きく貢献し、数々の失敗と挫折を乗り越えながら突き進んだ政治家・大隈重信。
「失敗はわが師なり」
この言葉を地で行くような生き方を貫いた大隈重信の人生から、私たちは何を学べるのでしょうか。
大隈重信は1838年、佐賀藩の上士の家に生まれました。幼い頃から頭脳明晰で、藩校「弘道館」で抜群の成績を残します。しかし、そこでは古い朱子学や武士道が中心で、現実離れした教育方針に納得がいきませんでした。
その違和感から、18歳のとき、同じ寮生たちと学校改革を巡って大論争を巻き起こします。ついには喧嘩騒ぎとなり、退学に。普通なら「失敗」と受け止めて落ち込むところですが、大隈はこれを転機と捉えます。
「今までのやり方にしがみつくのではなく、新しい学びの場を探そう」と次のステップへ。彼は蘭学寮で西洋の学問に触れ、やがて長崎でオランダ人宣教師フルベッキから英語や欧米の思想を学ぶことになるのです。
若き日の大隈は、長崎で外国人商人や坂本龍馬、岩崎弥太郎らと交流を深め、実践的なビジネス力も磨きました。特に、英語力を生かして海外との交渉や貿易をリードし、佐賀藩の財政を劇的に改善します。
この時代の長崎は、海外の最新情報が集まる日本の「窓口」。大隈は、既存の常識やルールにとらわれず、「どうすれば世界と渡り合えるか」を常に考えて行動していました。
その結果、佐賀藩は洋式の武器や部隊を整え、明治維新の四大藩の一角として新政府で大きな役割を果たすことができたのです。
明治維新後、大隈は新政府の中枢で様々な改革を主導します。その代表例が、鉄道建設や郵便制度、富岡製糸場の設立、太陽暦の導入など、日本の近代化を象徴する事業の数々です。
特に鉄道建設では、各地の反対や資金難など難題が山積みでした。しかし、大隈は「なぜできないか」ではなく「どうすれば実現できるか」を徹底的に考え抜きます。用地買収が進まないなら、海上に石垣を築いて線路を通すという前代未聞のアイデアで突破し、日本初の新橋―横浜間鉄道開業を実現しました。
この合理主義と創意工夫こそ、大隈重信の真骨頂です。
大隈重信が生涯貫いた政治信条は、「民意の尊重」と「議会政治の確立」、そして「学問や個人の自由・独立」です。
当時の日本政府は、薩摩・長州など特定藩出身者による権力独占(藩閥政治)が続いていました。大隈はこれに真っ向から反発し、「国民の声を政治に反映させる議会制民主主義」を主張します。
イギリス型の議員内閣制を理想に掲げ、議会開設と憲法制定を強く求めました。その信念は、1882年の立憲改進党結成、1898年の日本初の政党内閣(隈板内閣)誕生という形で結実します。
大隈は「学問の独立」も極めて重視しました。官僚養成を目的とした国立大学に対し、自由に学び、多様な人材を育てる私学――これが1882年に創設した早稲田大学(当時は東京専門学校)の原点です。
彼は「早稲田は学問を独立させようという主義の下に成立した」と語り、教育と政治を切り離す姿勢を徹底しました。その在野精神は、今も早稲田大学の校風として息づいています。
大隈の哲学の根底にあるのは、「失敗を恐れず、何度でも立ち上がる」こと。実際、彼は政争に敗れ、政府を追放されたり、暗殺未遂で片足を失ったりと、数々の挫折を経験しています。
しかし、大隈は「失敗はわが師なり」と公言し、自らの痛みや失敗から学び、さらに大きな挑戦へと進みました。
大隈重信は「民衆政治家」と呼ばれ、晩年には国民葬で30万人が参列するほどの人気を誇りました。
彼は全国行脚の際、駅ごとに即興の短い演説を行い、直接国民とコミュニケーションを取ることに努めました。現代でいえばインフルエンサーのような存在だったとも言えるでしょう。
政敵であっても、個人としては深い親交を保ったのも大隈の特徴です。例えば、慶應義塾の福澤諭吉や三菱の岩崎弥太郎、実業家の渋沢栄一とも親しく交流し、互いに助け合う関係を築いていました。
また、自身を政府から追放した伊藤博文を早稲田大学に招いたり、暗殺未遂を起こした活動家の供養を続けたりと、感情と立場を切り分ける度量の大きさがありました。
大隈が創設した早稲田大学には、今も「自由」「独立」「在野」といったキーワードが根付いています。大隈自身、学生たちに「自己が怠けては権利を得ることはできない」「失敗を恐れずに挑戦し続けよ」と語りかけていました。
これは、現代の私たちにもそのまま通じるメッセージです。
大隈重信の生涯は、まさに「失敗を恐れず、挑戦し続けること」の大切さを物語っています。
こうした大隈の生き方は、変化の激しい現代社会を生きる私たちにこそ、ヒントと勇気を与えてくれます。
「失敗はわが師なり」。チャレンジと失敗を恐れず、あなたも新しい一歩を踏み出してみませんか?「失敗は