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2025年「新語・流行語大賞」完全解説──選ばれた言葉と選考の舞台裏
ビジョナリー編集部 2025/12/08
2025年、心を動かされた言葉はありますか?
SNSで何度も目にしたフレーズ、ニュースで聞いて印象に残った一言、思わず口にした流行り言葉──。
言葉は、時代の空気をもっとも鋭く映し出す“手がかり”です。だからこそ、「新語・流行語大賞」は毎年大きな注目を集めます。
選ばれる言葉は、単なるブームではなく、その年の日本が抱えた課題や話題、そして人々の価値観の揺れまで映し出しています。
2025年の受賞語にも、政治からSNS、エンタメ、社会問題まで、今の日本を象徴するキーワードが並びました。
本記事では、それぞれの言葉が“なぜ選ばれたのか”、その背景や選考の仕組みまで、分かりやすく解説していきます。
2025年の流行語
2025年の年間大賞に輝いたのは、 「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」 というフレーズでした。日本初の女性首相となった高市早苗氏が掲げた言葉であり、連日の激務ぶりや、「ワークライフバランスを捨てる」とまで言い切った決意表明が、大きな話題を呼びました。
この言葉のインパクトは、昭和世代や現代の若者までを巻き込んだ“働き方”論争の象徴となりました。昭和的な根性論へのノスタルジーと、多様性や自己実現を重視する令和の価値観がせめぎ合う――そんな現代日本の縮図が、この一言に凝縮されています。
その他にも、2025年を象徴する言葉がトップ10に選ばれました。
たとえば「エッホエッホ」は、オランダの写真家が撮影したメンフクロウのヒナの写真に、SNSユーザーが「エッホエッホ」という擬音をつけて拡散したことがきっかけです。子どもから大人までが、思わず口にしたくなる語感の良さ。SNS時代ならではの“共感”と“広がり”が生まれた好例です。
「オールドメディア」は、新聞やテレビといった伝統的なメディアに対する揶揄や批判を込めて使われるようになりました。SNSや動画プラットフォームが世論形成に大きな影響を与える中で、メディアリテラシーの重要性や情報の真偽を見極める力が、社会全体で問われています。
さらに、「緊急銃猟/クマ被害」も今年ならではのワードです。都市部へのクマの出没や人身被害の急増を受け、法制度や社会の安全意識にも変化が起きました。
他にも、「国宝(観た)」は、歌舞伎を題材とした映画が邦画実写の興行収入1位となった現象を背景に、文化やエンタメの力を感じさせました。
「古古古米」や「戦後80年/昭和100年」など、社会や歴史の節目を反映する語も選出されており、多様な価値観が混在する時代を感じさせます。
新語・流行語大賞の選び方?
新語・流行語大賞がどのように選ばれているのか、ご存知でしょうか?
簡潔に言うと、選考は①ノミネート②30語選出③選考委員で審議 の3段階です。まず、ノミネートは前年12月から当年11月までに「世相を巧みに捉え、多くの人々の目・口・耳を賑わせた言葉」が対象となります。編集部が100語ほどをピックアップし、選考委員とともに議論しながら30語に絞り込みます。その後、受賞語(トップ10および年間大賞)を決める選考会が行われます。
選考委員は、エンタメ、メディア、文化などさまざまな分野で活躍する著名人が担当。2025年は、漫画家、コラムニスト、お笑い芸人、俳優、そして『現代用語の基礎知識』編集長など、多様な視点が持ち寄られました。世代や専門分野が異なるため、意見がぶつかることもしばしばありますが、最後の最後で「やっぱりこれを入れたい」となることも多いそうです。
過去には、社会的な事件やセンシティブな問題に関する言葉をあえて選ばない決断もされてきました。選考は単なる流行の反映だけでなく、誰を顕彰するのか、その意義や社会的責任まで熟慮されています。
定着する流行語、変わる“言葉の発信源”
かつてはテレビや新聞が流行語の主な発信源でした。しかし、近年はSNSやネットコミュニティで生まれた言葉が急速に拡散し、世代や地域を超えて広がる傾向が強まっています。2025年の受賞語にも、その象徴的な例が散見されます。
「ミャクミャク」は2025年大阪・関西万博の公式キャラクター。2022年の登場当初は賛否両論ありましたが、万博開催を機に国民的キャラクターとなりました。関連グッズが飛ぶように売れ、SNSでの人気も急上昇しました。
また、「二季」は、地球温暖化の影響で春と秋が短くなり、夏と冬の二つの季節だけになったように感じる現象を指します。ファッション業界や食品業界にも影響が及び、“四季の国”日本の変化を身近に感じる言葉となりました。
近年、「流行語が国民的に広がらなくなった」と言われることも増えました。たしかに、多様化・細分化する現代において、全世代が同じ言葉を使う機会は減ったかもしれません。しかし、各世代やコミュニティで生まれた言葉が、SNSを通じて一気に全国区になるケースも目立っています。
2025年のノミネート語にも、Z世代に人気の「ビジュイイじゃん」や「チョコミントよりもあ・な・た」など、SNSを舞台にした新語が並びました。一方で、「戦後80年/昭和100年」や「古古古米」など、歴史や社会の節目を反映する言葉も根強い存在感を示しています。
言葉と人の賞
新語・流行語大賞の特徴は、「言葉」だけでなく「それを象徴する人や団体」を顕彰する点です。たとえば、流行語の発信源が明確な場合にその人が受賞することは多いですが、社会問題や事件に関する言葉の場合、被害者やその問題を告発した人、あるいはユーモアや風刺を込めた人物が受賞することも珍しくありません。
また、2025年の特別賞には、長嶋茂雄氏の「ミスタープロ野球」が選ばれました。国民的な存在として長年親しまれてきた長嶋氏への敬意が表れています。こうした人選は、単なる流行の反映にとどまらず、日本社会の価値観や記憶を未来に伝える役割も担っています。
まとめ
新語・流行語大賞は、単なる“流行語のランキング”ではありません。その年の世相、社会の課題、希望や悩み、時に皮肉や批評までを映し出す“時代の鏡”です。
2025年も、政治、社会、文化、気候、ネット、エンタメなど、多様な分野から、今の日本が抱える課題や希望、そして次の時代へのヒントが言葉として浮かび上がりました。
AIやデジタル技術が進化しても、人間は言葉で考え、言葉でつながり、言葉で社会を動かします。新語・流行語大賞が毎年話題になるのは、「言葉の力」を信じている人が多いからこそ。流行語は話題作りだけでなく、「今、私たちがどんな社会に生き、何を感じているのか」を見つめ直すきっかけになるかもしれません。


