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2025

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    孤独と逆境が生んだ“世界を変える男”──イーロン・マスクの軌跡と未来

    孤独と逆境が生んだ“世界を変える男”──イーロン・マスクの軌跡と未来

    テスラ、スペースX、ペイパル──私たちが日常で耳にするこれらの企業の背後には、一人の男がいます。その名はイーロン・マスク。

    「2035年までに人類を火星に移住可能にする」
    「人類を救うために、インターネット、エネルギー、宇宙産業で大きな企業をつくる」

    彼の発言は突拍子もなく聞こえるかもしれません。しかし、彼は本気でその実現を目指し、前人未到なことを実際にやってのけてきました。
    彼はどのような少年時代を過ごし、何を原動力にして世界を変え続けているのでしょうか?そして、これからどこへ向かうのでしょうか?
    今回は、イーロン・マスクの生い立ちから功績、そして今後の野望までをひもときます。

    壮絶ないじめと“孤独”が生んだ、読書とプログラミングの少年時代

    イーロン・マスクは1971年、南アフリカのプレトリアで生まれました。父はエンジニア、母はカナダ出身のモデル・栄養士。幼少期のマスクは、読書好きで物静かな少年。社交的とは言えず、周囲に溶け込めず孤立しがちでした。そのため、学校では暴力的ないじめを長年受け、顔面骨折で手術を要するほどの大ケガを負ったこともあります。
    しかし、孤独な時間はマスク少年に“2つの宝物”をもたらします。

    1つ目は、読書
    1日10時間も本に没頭し、アイザック・アシモフの『ファウンデーション』や、J・R・R・トールキンの『指輪物語』などのSF・ファンタジーを貪るように読みました。

    2つ目は、プログラミング
    10歳でプログラミングを習得し、12歳にして自作ゲームを売却。幼くして自身の制作したものに500ドルの価値がついたことで、自信が芽生え、実業家精神の土台が形づくられました。

    壮絶ないじめを乗り越えた経験が、後の「どんな絶望的状況でも諦めない」不屈の精神を育てたのです。

    アメリカ移住と起業家への第一歩

    南アフリカでのいじめ体験と、読書・プログラミングで培った知力。マスクは「自分の人生をやり直したい」と、18歳でカナダに単身渡ります。
    クイーンズ大学を経て、ペンシルベニア大学で物理学と経済学を学び、スタンフォード大学大学院に進学。しかし、わずか2日で中退。理由は、「インターネットこそ人類の未来を変える」と確信したからです。

    • 「人類にとって最も重要な課題は何か?」
    • 「自分は、どうすれば最大のインパクトを与えられるのか?」
       

    この問いに対し、「インターネット」「持続可能エネルギー」「多惑星居住」の3つの分野で事業を興すと決意しました。

    ペイパル創業──“貧しさ”も「幸せの条件」に変える力

    最初の挑戦は、弟キンバルとともに設立したオンラインコンテンツ会社「Zip2」。オフィスに寝泊まりし、YMCAでシャワーを浴びる極貧生活にも、マスクは「貧しくても幸せでいられることがリスクを取る最大の助けだった」と回想します。
    その後、オンライン決済サービス「X.com(後のPayPal)」を創業。
    2002年、PayPalはeBayに売却され、マスクは1億8,000万ドルの資産を手にします。

    テスラとスペースX──“常識外れ”の挑戦

    PayPal売却後、マスクは次なるビジョンを求めます。

    「人類の未来に最も大きく影響する課題は何か?」

    その答えが、持続可能エネルギー(テスラ)と宇宙移住(スペースX)でした。 テスラは、電気自動車のイメージを「遅い・ダサい」から「速くてカッコいい」へと転換させました。最初の量産車「ロードスター」開発には4年半、1億4,000万ドルの資金が必要でした。失敗が続き、資金は底をつきかけます。

    また、「火星に人類を送る」ことを本気で考え、ロケット開発に着手。しかし知識も経験もゼロからの挑戦。ロシアでICBMの購入を交渉するも断念。
    「誰も作らないなら、自分で作る」──これがスペースX誕生のきっかけです。

    実際のエピソード

    • 2006~2008年、ロケット打ち上げ3連続失敗
    • テスラもスペースXも資金ショート寸前
    • マスクは自宅や愛車マクラーレン等、私財をなげうち、友人に借金までして両社を支え続けました

    “不屈”と“執念”が導いた逆転劇

    4度目のロケット打ち上げで初成功(2008年)、NASAとの1,600億円超の契約を勝ち取ることで、スペースXもテスラも破産の危機を脱します。
    テスラの「ロードスター」は、レオナルド・ディカプリオやGoogle創業者ら著名人の支持を集め、「電気自動車=ダサい」という常識を塗り替えるインパクトを与えました。

    さらに

    • テスラは「モデルS」「モデル3」など次々にヒット車種を生み出し、電気自動車の普及を加速
    • スペースXはロケットの再利用・低コスト化で民間宇宙産業の常識を変革
    • 2020年には日本人宇宙飛行士野口聡一さん搭乗の「クルードラゴン」打ち上げも成功

    「週100時間労働」──社員と“痛み”を分かち合う経営者

    テスラ「モデル3」量産時には工場に寝泊まりし、自ら床で寝ることを選びました。
    「社員が苦痛を感じているなら、その何倍もの苦痛を感じたい」──この姿勢が、部下の心を動かしています。

    イーロン・マスクの“野望”──これからどこへ向かうのか?

    1. テスラ──自動車業界の“絶対王者”へ

    テスラは「自動運転」「低価格EV」など、次世代モビリティのリーダーとして進化し続けています。
    「3年以内に2.5万ドル(約350万円)の完全自動運転EVを実現する」と公言。
    今やトヨタ自動車の時価総額を上回る企業価値を誇り、世界の自動車産業そのものを塗り替えつつあります。

    2. スペースX──「火星に人類を」現実のものへ

    スペースXは「宇宙のサウスウエスト航空」を目指し、商業用ロケットの低価格・高頻度打ち上げを実現。
    「2035年までに人類を火星へ」と本気で宣言し、Starshipによる火星移住計画が動き始めています。

    3. 新たな分野へ──AI、ニューラリンク、ソーラーシティ

    • AI(人工知能):人類とAIの共存やリスクへの警鐘、AI企業への投資・開発
    • ニューラリンク:脳とコンピュータを接続する技術で、医療や人類の能力拡張を目指す
    • ソーラーシティ:太陽光発電と蓄電池で、クリーンエネルギー社会の実現へ

    イーロン・マスクから学べること

    1. 逆境を“チャンス”に変える力

    少年時代のいじめや孤独、起業時代の極貧、幾度もの失敗──
    どんな時も「諦めない」「必ず道はある」と信じ抜く姿勢が、常識を打ち破る原動力となっています。

    2. ビジョンの明確さ

    「人類の未来に最も貢献できることは何か?」という問いを持ち続けていることが、事業の選択や意思決定の軸になっています。

    3. 小さな実験から始める

    「まずは現物の試作品を作ることが大切」と語り、理論だけでなく“行動”で結果を出すことを重視しています。

    おわりに

    イーロン・マスクは「火星で死にたい」と語ります。
    これは単なる夢想ではなく、彼にとって「人類が絶滅しない未来」を本気で考え抜いた結果の“覚悟”です。
    「クレイジー」と揶揄されても、彼は前例も常識も恐れずに挑戦を続けています。 そのエネルギーの源は、幼少期の“孤独”と“読書”、そして“世界を救いたい”という真っ直ぐな思い。
    あなたも、もし今いる場所で「自分には何もできない」と感じていたとしても、孤独や失敗、逆境を“チャンス”に変え、世界を変える原動力にできるかもしれません。
    イーロン・マスクの生き方は、それを私たちに強烈に教えてくれています。

    #イーロンマスク#Tesla#SpaceX#自動運転#宇宙開発#スタートアップ#イノベーション#逆境を乗り越える#ビジョン#EV#未来予測

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