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ビジネスマンが陥りやすい「確証バイアス」とは?認知バイアスの正体から、回避のための実践的思考法まで徹底解説
ビジョナリー編集部 2025/07/24
ミーティングで議論しているとき、ふと「自分の考えが正しいはずだ」と思い込んでしまった経験はありませんか? あるいは、新しいプロジェクトのアイデアを後押しする都合のよいデータばかり集め、リスクや反対意見にはなぜか目を向けなくなってしまう——そんな瞬間が思い当たる方も多いでしょう。
実は、これらの現象の背景には「確証バイアス」と呼ばれる心理的な落とし穴が潜んでいます。
本記事では、ビジネスパーソンが知っておくべき、認知バイアスの1つである「確証バイアス」の正体、そしてこのバイアスに振り回されず、冷静で客観的な意思決定を下すための実践的な方法を徹底解説します。
そもそも「認知バイアス」とは何か?
まず、「認知バイアス」とは何かをご存じでしょうか。
認知バイアスとは、私たち人間の脳が情報を効率的に処理する一方で、現実を正しく認識できない思い込みや錯覚に陥る現象のことです。膨大な情報を瞬時に取捨選択するための便利なショートカットである反面、時に合理性を欠いた結論や誤った判断を招く原因にもなります。
- 「みんながやっているから正しいはずだ」
- 「自分だけは大丈夫」
- 「過去の経験から、今回も同じだろう」
このような思考も、知らず知らずのうちに認知バイアスによって生じています。
確証バイアス——自分が信じたいものだけを集める心理
認知バイアスの数ある種類の中でも、ビジネスパーソンが特に注意すべきなのが「確証バイアス」です。
確証バイアスの定義
確証バイアスとは、自分の仮説や信念を支持する情報ばかりを集め、都合の悪い情報は無視・軽視してしまう心理的傾向を指します。
一言で言えば、「自分が信じたいものだけを信じる」——これが確証バイアスの本質です。
ビジネスシーンで理解する確証バイアス
- 新規事業の立案時
あるビジネスプランが「絶対に成功する」と思い込むと、成功を裏付けるデータや事例ばかり収集し、リスクや失敗事例には目を向けなくなってしまう。 - 人事評価・採用面接
「この人は優秀だ」と最初に感じたら、その印象を強化するエピソードばかり注視し、逆に弱点や懸念点は見過ごしてしまう。 - 投資判断
ある企業の株が上昇すると信じていると、その企業に有利なニュースやアナリストレポートばかり読み、逆の情報は無意識に排除する。
なぜ確証バイアスに陥りやすいのか?
では、なぜビジネスの現場でこのバイアスに陥りやすいのでしょうか?
1. 「レッテル貼り」による素早い判断
ビジネスの世界では、時間との戦いが日常です。限られた時間の中で効率よく意思決定を求められるため、人は「ラベリング(レッテル貼り)」によって事象や人を早く分類しようとします。この効率化が、確証バイアスへの入口となるのです。
2. 一貫性の原理
人は一度表明した意見や立場を、できるだけ貫こうとする傾向があります。この「一貫性の原理」が、初期判断を固持し、都合のいい情報だけを集める確証バイアスを強化します。
つまり、ビジネスシーン特有の「スピード」や「一貫性」が、確証バイアスを助長する土壌となっているのです。
確証バイアスがもたらす危険な落とし穴
確証バイアスが強く働くと、どのようなリスクがあるのでしょうか?
誤った意思決定
- 市場分析の失敗
ポジティブなデータだけで判断し、市場のリスクや変化を見落とす。 - 人事ミス
部下や新入社員の“良い面”ばかり評価し、客観的な実力を見極められない。
組織の硬直化・イノベーションの停滞
- 多様な意見の排除
「反対意見は敵」とみなしてしまい、新しいアイデアやブレイクスルーが生まれにくくなる。
個人の成長機会の喪失
- 自己評価の歪み
都合のいい評価やフィードバックだけを信じ、改善すべき点に向き合えなくなる。
確証バイアスを回避するための3つの実践法
では、どうすればこの「見たいものだけを見る」バイアスを回避できるのでしょうか? ここからは、今日から実践できる対策を紹介します。
1. 自分のバイアスを「自覚する」習慣を持つ
- 「本当に自分は客観的か?」と定期的に自問する
- 日記やメモで自分の意思決定プロセスを振り返る
- 他者と意見交換し、自分とは異なる視点を積極的に取り入れる
「自分の考えが偏っていないか?」と問い直すことが、バイアスを弱める第一歩です。
2. クリティカルシンキング(批判的思考)の導入
- 「本当にこれで正しいのか?」と自分の結論を疑ってみる
- あえて反対意見やリスク情報を集めてみる
- 仮説検証の際は「自分の仮説を否定する証拠がないか」も探す
「なぜ」「本当に?」と問い続ける力が、思い込みを回避します。
3. 多様な意見を受け入れる「心理的安全性」の確保
- チーム内で自由に意見交換できる環境をつくる
- 「異なる意見は、より良い意思決定へのチャンス」と捉える
- メンターや第三者のフィードバックを積極的に取り入れる
自分とは異なる視点や反論によって、バイアスを抜け出すことができます。
確証バイアスを乗り越えた事例
インテルは元々、半導体メモリのトップ企業でしたが、日本企業が品質と価格競争で台頭し、業績が悪化してきました。創業からの事業であり、成功を収めていたメモリ事業から離れることは簡単ではありません。このような場合にも、確証バイアスによって、メモリ事業を続けた方が良いという情報だけを集めてしまいがちになります。
しかし、1979年からCEOを務めていたアンディ・グローブは、創業者であるゴードン・ムーアに次のような問いかけをしました。
「我々が追い出され、取締役会が新しいCEOを任命したとしたら、何をすると思う?」
この問いかけが確証バイアスを抜け出すきっかけとなりました。
「新しいCEOはメモリ事業から撤退するだろう。それなら我々でそれをやろうじゃないか」
インテルは事業をメモリからCPGに切り替えることで、業績を大きく伸ばしました。
確証バイアスのメリット
ここまで、確証バイアスのリスクと回避策を中心に述べてきました。しかし、確証バイアスにはメリットも存在します。
ポジティブな側面:意思決定のスピードと自信
- 限られた情報で素早く動く「決断力」
- 自分の信念を貫き、困難に立ち向かう「強いメンタル」
たとえば、起業家やスポーツ選手が「自分は絶対に成功する」と信じることで、行動力や挑戦心を高めるケースです。
つまり、「バイアスを自覚し、必要な場面では冷静にコントロールする」ことが、ビジネスパーソンの成長には不可欠です。
まとめ
ビジネスの現場では、スピード感から、どうしても自分に都合のいい情報だけを集めがちです。しかし、その思い込みが大きなリスクや成長の壁になることもあります。
- 意思決定の前に「自分は確証バイアスに陥っていないか?」と一呼吸おく習慣をつける
- あえて自分と異なる立場の人と意見交換してみる
- 「異なる意見=脅威」ではなく、「発見や成長のヒント」として歓迎する
「見たいものだけを見る」習慣から抜け出し、より強く、しなやかな意思決定力を身につけていきましょう。

