
「注目されるだけで人は変わる?」ビジネスマンが知...
7/26(土)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/07/24
ミーティングで議論しているとき、ふと「自分の考えが正しいはずだ」と思い込んでしまった経験はありませんか? あるいは、新しいプロジェクトのアイデアを後押しする都合のよいデータばかり集め、リスクや反対意見にはなぜか目を向けなくなってしまう——そんな瞬間が思い当たる方も多いでしょう。
実は、これらの現象の背景には「確証バイアス」と呼ばれる心理的な落とし穴が潜んでいます。
本記事では、ビジネスパーソンが知っておくべき、認知バイアスの1つである「確証バイアス」の正体、そしてこのバイアスに振り回されず、冷静で客観的な意思決定を下すための実践的な方法を徹底解説します。
まず、「認知バイアス」とは何かをご存じでしょうか。
認知バイアスとは、私たち人間の脳が情報を効率的に処理する一方で、現実を正しく認識できない思い込みや錯覚に陥る現象のことです。膨大な情報を瞬時に取捨選択するための便利なショートカットである反面、時に合理性を欠いた結論や誤った判断を招く原因にもなります。
このような思考も、知らず知らずのうちに認知バイアスによって生じています。
認知バイアスの数ある種類の中でも、ビジネスパーソンが特に注意すべきなのが「確証バイアス」です。
確証バイアスとは、自分の仮説や信念を支持する情報ばかりを集め、都合の悪い情報は無視・軽視してしまう心理的傾向を指します。
一言で言えば、「自分が信じたいものだけを信じる」——これが確証バイアスの本質です。
では、なぜビジネスの現場でこのバイアスに陥りやすいのでしょうか?
ビジネスの世界では、時間との戦いが日常です。限られた時間の中で効率よく意思決定を求められるため、人は「ラベリング(レッテル貼り)」によって事象や人を早く分類しようとします。この効率化が、確証バイアスへの入口となるのです。
人は一度表明した意見や立場を、できるだけ貫こうとする傾向があります。この「一貫性の原理」が、初期判断を固持し、都合のいい情報だけを集める確証バイアスを強化します。
つまり、ビジネスシーン特有の「スピード」や「一貫性」が、確証バイアスを助長する土壌となっているのです。
確証バイアスが強く働くと、どのようなリスクがあるのでしょうか?
では、どうすればこの「見たいものだけを見る」バイアスを回避できるのでしょうか? ここからは、今日から実践できる対策を紹介します。
「自分の考えが偏っていないか?」と問い直すことが、バイアスを弱める第一歩です。
「なぜ」「本当に?」と問い続ける力が、思い込みを回避します。
自分とは異なる視点や反論によって、バイアスを抜け出すことができます。
インテルは元々、半導体メモリのトップ企業でしたが、日本企業が品質と価格競争で台頭し、業績が悪化してきました。創業からの事業であり、成功を収めていたメモリ事業から離れることは簡単ではありません。このような場合にも、確証バイアスによって、メモリ事業を続けた方が良いという情報だけを集めてしまいがちになります。
しかし、1979年からCEOを務めていたアンディ・グローブは、創業者であるゴードン・ムーアに次のような問いかけをしました。
「我々が追い出され、取締役会が新しいCEOを任命したとしたら、何をすると思う?」
この問いかけが確証バイアスを抜け出すきっかけとなりました。
「新しいCEOはメモリ事業から撤退するだろう。それなら我々でそれをやろうじゃないか」
インテルは事業をメモリからCPGに切り替えることで、業績を大きく伸ばしました。
ここまで、確証バイアスのリスクと回避策を中心に述べてきました。しかし、確証バイアスにはメリットも存在します。
たとえば、起業家やスポーツ選手が「自分は絶対に成功する」と信じることで、行動力や挑戦心を高めるケースです。
つまり、「バイアスを自覚し、必要な場面では冷静にコントロールする」ことが、ビジネスパーソンの成長には不可欠です。
ビジネスの現場では、スピード感から、どうしても自分に都合のいい情報だけを集めがちです。しかし、その思い込みが大きなリスクや成長の壁になることもあります。
「見たいものだけを見る」習慣から抜け出し、より強く、しなやかな意思決定力を身につけていきましょう。