
「なんだか凄そう」に潜む魔法──ジンクピリチオン...
7/26(土)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/07/25
たとえば、オフィスで自分の仕事ぶりを上司や同僚が見ていると妙に集中できたり、スポーツの試合で観客が多いほどパフォーマンスが上がったり…。こうした現象の背景には、心理学でいう「ホーソン効果」が隠れています。
本記事では、ホーソン効果の基本から実際のビジネス現場での具体的な活用方法まで、ビジネスパーソンなら知っておきたいポイントを分かりやすく解説します。
ホーソン効果とは、「他者から注目されている」と感じるだけで、その期待に応えようと行動や成果が向上する心理現象です。もともとはアメリカのホーソン工場で行われた実験が由来で、従業員の作業環境を変化させることで生産性がどう変わるかを調べるものでした。
当時の研究者たちは「照明を明るくすれば生産性が上がる」と予想していました。しかし、実験をしたところ、照明の明るさに関係なく、いつもより作業効率が向上するという結果が出たのです。
その理由は、従業員が「自分たちが注目されている」「実験の対象になっている」と意識したことで、普段以上に努力しようとしたからでした。つまり、環境の変化そのものよりも、「注目されている」という心理が行動を変えたのです。
こうした場面は、あなたの職場でも見覚えがあるのではないでしょうか?
「人は見られることで頑張れる」
この性質をビジネスに活かさない手はありません。ここからは、実際に多くの企業が取り入れているホーソン効果の活用法と、その効果を最大化するためのポイントを紹介します。
具体例として、東京ディズニーリゾートでは、キャスト同士が日々の素晴らしい行動に対してお互いにメッセージを送り称え合っています。また、投票で「マジカルディズニーキャスト」を選出し、マジカルディズニーキャストピンを授与しています。
「今月は新規顧客10件獲得します!」と会議で宣言した営業担当者は、目標達成のための行動が自然と積極的になります。周囲の目があることで“やらなければ”という気持ちが強まるのです。
たとえば月1回の成果発表会。普段は目立たない業務でも、「自分の仕事に注目してもらえる」と実感できれば、日々の工夫や努力が一気に加速します。
ホーソン効果は誰にでも等しく発動するわけではありません。特に、モチベーションが高く、適度なプレッシャーを前向きに捉えられる人材ほど効果が出やすいのです。
一方で、過度な注目やプレッシャーが逆効果となり、ストレスや反発を生むケースもあります。社員一人ひとりの性格や状況を見極め、慎重に対象を選ぶことが肝要です。
表彰や注目が特定の人に偏ると、他の社員が「自分は見てもらえていない」と感じ、やる気の低下につながりかねません。
注目や評価の基準を明確にし、できるだけ多くの社員にスポットライトが当たる仕組みづくりが大切です。
注目されることがプレッシャーとなり、かえってパフォーマンスが落ちる場合もあります。特に、上司が過度な期待や注目を与えすぎると、社員の心理的負担が増してしまいます。
日常的な声かけや、努力の過程を認めるフィードバックが大切です。数字や成果だけでなく、プロセスにも目を向け、適度な距離感で注目を与えましょう。
「ホーソン効果」と混同されやすい心理現象に「ピグマリオン効果」があります。
ホーソン効果は「注目」そのものが原動力になるのに対し、ピグマリオン効果は「期待されている」という感覚が行動を後押しします。ビジネスでは両者をうまく組み合わせることで、個人・組織のパフォーマンスを最大化できるでしょう。
ホーソン効果は、特別な制度や大がかりな仕組みがなくても、ちょっとした「注目」や「関心」をプラスするだけで、社員のやる気や成果を大きく引き出せる強力な心理メカニズムです。
一方で、注目の偏りや過度なプレッシャーには注意が必要です。社員一人ひとりの個性や状況に合わせて、適切なバランスで活用することが成功のカギとなります。
ちょっとした注目を意識してみてはいかがでしょうか。きっと、思いがけない変化が生まれるはずです。