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現実に潜む「地面師」――巧妙な不動産詐欺の実態とあなたが守るべき資産防衛術
ビジョナリー編集部 2025/11/10
Netflixのドラマ「地面師たち」が大きな話題となり、SNSやニュースでもたびたび取り上げられました。一見、ドラマの中だけの非現実的な犯罪集団のようにも思えますが、日本社会を震撼させる巨額詐欺事件が現実に起きています。
本稿では、社会を騒がせた地面師事件の実態と、騙されないために知っておきたいポイントを解説します。
※ この記事は2025年11月時点での情報を元に書いています。
地面師とは?
「地面師」とは、一言でいえば「他人の不動産を自分のものと偽り、第三者に売却して代金をだまし取る」詐欺グループです。
- 本物そっくりの偽造身分証明書や印鑑証明書
- 登記簿や住民票など公的書類の偽装
- 綿密な役割分担による組織的な犯行
これらを駆使し、億単位の取引を成立させてしまうのです。しかも、取引が完了するや否や姿をくらまし、被害者が気づいたときにはすでに資金が海外口座などに移されていることもあります。
実例で見る地面師事件――積水ハウスが被害に遭った55億円詐欺
地面師事件として有名なのが、2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」です。被害総額はなんと約55億5,900万円。誰もが知る大手住宅メーカーが、わずか数か月のうちに巨額の資金を詐欺グループに奪われてしまいました。
事件の流れ:一等地を巡る「なりすまし」と偽造の連携プレー
- ターゲット選び
狙われたのは、東京都品川区の高級旅館跡地。所有者は遠方に住む高齢の女性で、「直接会うのが難しい」「売却の意思がない」とされており、“地面師の標的”となりやすい物件でした。 - 精巧な偽造と役割分担
グループには、なりすまし役、偽造書類の専門家、仲介役、法律手続きを担う司法書士や弁護士までが登場。それぞれが自分の役割を遂行しました。 - 取引の急かす心理操作
「この土地は他にも買い手がいる」「すぐに決断しないと機会を逃す」など、積水ハウス側に「今しかない」と思わせ、短期間で数十億円の契約をまとめさせました。 - 決済と消失
決済日、偽造パスポートや印鑑証明書を用いて、司法書士や公証人も欺き、所有権移転の登記申請がなされました。しかし、後日法務局から「健康保険証が偽造」と指摘が入り、詐欺が発覚。詐取された資金の大半は回収不能となりました。
事件の教訓
積水ハウスほどの大企業ですら防げませんでした。
このことは、不動産取引における「本人確認」や「書類確認」の難しさ、そして取引を急がされたことによる冷静な判断の欠如が、被害を拡大させた典型例と言えるでしょう。
なぜプロも騙されるのか?
「土地のプロ」である不動産業者や大手ディベロッパーでさえなぜ地面師に騙されるのでしょうか?
不動産ブローカーを装う
地面師の多くは、土地情報に精通したブローカーとして活動しています。
- 普段から土地取引に関わっている
- 弁護士や司法書士ともつながりがある
- 業界の人脈を活用してターゲットに近づく
そのため判別が難しく、被害者側も疑念を抱きにくいのです。
綿密な役割分担
地面師グループは、以下のような役割分担で動きます。
- ボス(指示役)
- なりすまし役(所有者役)
- 書類偽造の専門家
- 仲介役(不動産会社を装う)
- 法律担当(弁護士・司法書士)
事件ごとにメンバーが入れ替わり、「何か分からないけど頼まれたからやった」と主張することで、罪を軽くする構造にもなっています。
地面師が狙う物件の特徴
地面師が狙いやすい物件
- 長期間放置されている空き地・空き家
- 登記情報が何年も更新されていない物件
- 抵当権が設定されていない(金融機関のチェックが入らない)物件
- 高齢者や遠方居住者が所有している土地
- 相続や共有名義で所有関係が複雑な物件
「土地の管理が十分でない」「所有者と連絡が取りづらい」
こうした状況が、地面師の格好のターゲットになるのです。
騙されないためのポイント
信頼できる専門家へ必ず相談する
不動産取引は、信頼できる不動産会社や弁護士・司法書士などの専門家に必ず相談しましょう。
本人確認・登記簿の徹底確認を怠らない
- 運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど「顔写真付きの身分証明書」を複数チェック
- 法務局で最新の登記簿謄本を取得し、所有者情報を直接確認
少しでも不審を感じたら取引を止める勇気を持つ
「他にも買い手がいる」「すぐ決断しないと機会を逃す」と急かされたら黄色信号です。一歩立ち止まり、冷静に状況を整理しましょう。
地域住民や周囲の人にも相談・確認する
近隣住民に売主の写真を確認したことで、偽物だと見抜けたケースがありました。地元の人々に意見を求めることで、詐欺を防げる場合があります。
日常的な土地・不動産の管理を怠らない
- 相続や名義変更があった場合は速やかに登記簿を更新
- 空き家や遠方の土地も定期的に現地を確認
- 共有名義の場合は、定期的に共有者同士で連絡を取り合う
地面師は「管理が行き届いていない土地」を見逃しません。日頃からの管理が最大の防御策です。
万が一騙されたら…
地面師に騙し取られた資金や土地は、ほとんどの場合取り戻すことができません。
- 資金はすぐに海外などに流出
- 所有権が善意の第三者(事情を知らずに購入した人)に移転すると、元の所有者は権利を主張できない
被害に気づいたら、すぐに警察や弁護士へ相談しましょう。対応が早ければ、資金や権利の一部でも回収できる可能性があります。
まとめ
地面師事件はドラマや小説の中だけの出来事ではありません。「土地のプロ」すら騙される巧妙な手口は、誰にでも起こり得る現実の脅威です。
- 土地や不動産の管理状況を見直す
- 取引時には専門家に必ず相談
- 本人確認・登記簿チェックを徹底
- 少しでもおかしいと感じたら立ち止まる
これらの意識と行動が、あなたの大切な資産を守る最良の方法です。
「地面師たち」の事件を他人事にしないことが、これからの不動産取引に求められる新しい常識といえるのではないでしょうか。


